立田敦子のカンヌ映画祭レポート2022 #04 "カンヌ育ち"の早川千絵監督が高評価!

Culture 2022.05.24

世界各国から映画が集まる国際映画祭のなかでも、カンヌは5大陸からまんべんなく作品をセレクトしようと努力しているように思えます。日本では、2018年に是枝裕和監督『万引き家族』が最高賞であるパルムドールを受賞。昨年は濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』が脚本賞、その後、アカデミー賞でも国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)を受賞し、注目を集めました。

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カンヌのレッドカーペットにて。左から、磯村勇斗、早川千絵監督、フィリピン人の女優ステファニー・アリアン。(c) Kazuko Wakayama

ということで、今年も日本関連の作品が気になるところですが、本日は、「ある視点」部門に選出された早川千絵監督『PLAN75』の公式上映がありました。

「ある視点」部門とは、文字通りユニークな視点やテーマのある作品が上映される部門で、比較的若い監督の野心作や大御所でも実験的作品が上映される部門です。最近では、黒澤清監督『岸辺の旅』(15年)が監督賞、深田晃司監督『淵に立つ』(16年)が審査員賞を受賞しています。

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公式上映に登場した早川千絵監督。(c) Kazuko Wakayama

『PLAN75』は、高齢化社会が進み、その対策として75歳以上の希望者の安楽死を受け入れるシステム「PLAN75」を政府が公認したという設定で始まります。78歳で仕事も住むところも失い、この制度の利用を決意する角谷ミチ(倍賞千恵子)を主人公に、申請窓口で働く青年(磯村勇斗)、死を選んだ老人をサポートするスタッフ(可愛優実)などの姿を追うことにより、現代における生の意味を問う社会派のヒューマンドラマです。

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早川千絵監督『PLAN75』

昨年のカンヌでも、自らの意志で選ぶ安楽死をテーマにしたフランソワ・オゾン監督『Everything Went Fine』がコンペで上映されて話題になったように、老いや尊厳のある生き方、死に方は世界共通の関心事。『PLAN75』も上映前から話題になり、現地の専門誌ではよい批評が出ています。

早川監督は、短編『ナイアガラ』が14年のカンヌ映画祭シネフォンダシオン部門に入選し、是枝裕和監督がエグゼクティブプロデューサーを務めたオムニバス映画『十年 Ten Years JAPAN』(18年)の一編である、短編『PLAN75』を監督。類似のテーマながら脚本を再構築し、キャストも一遍させて撮った『PLAN75』で長編デビューを果たしました。長編映画の第1作ということで、カメラドール(新人監督賞)候補にもなっているので、週末の授賞式が楽しみです!

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左から、フィリピン人の女優ステファニー・アリアン、早川千絵監督、磯村勇斗。
(c) Kazuko Wakayama

映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。
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