性的な妄想や想像が楽しめない...これって異常なの？

エロチックな妄想で頭がいっぱいの人もいれば、脳波がちっとも乱れない人もいる。この違いはなぜ？ 性生活の充実度にどんな影響があるのだろうか？ フランスのふたりの性科学者に、本国マダム・フィガロが、性的ファンタズム（妄想）の不在についてインタビューした。

ファンタズムの世界にアクセスできない人もいる。photography : Getty Images

「それであなたは？ あなたのファンタズムはどんなもの？」そう聞かれて、あなたはまず笑う。それから「ええと」と時間稼ぎのためのお決まりの一言を挟んで、友人たちを満足させるような答えを探す。困惑するあなたの様子を見て、友人たちは賢明に話題を変えた。実をいえば、あなたは質問のテーマに狼狽したではない。むしろ投げかけられた問いに対する答えを持っていないことに動揺したのだ。

集まった友人たちが自分がどんなシナリオに興奮するか口々に告白し合っている間、自分自身を探ってみる。でも何も見当たらない。カバンの中は空っぽだ。これまで一度も性の戯れに第3のパートナーを招き入れたいと思ったことがない。人に見つかるリスクのある状況でセックスをしたいと思ったこともない。グループからひとり取り残されて、あなたは自問せざるを得ない。性的ファンタズムがないのは普通のこと？ 私の欲望には鍵が掛かっているの？ このことで性生活の満足度に影響が出たりする？ 想像力を自由に働かせてもっと創造的になるように脳のトレーニングをするべき？

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広大なファンタズムの世界

性的想像力があまり活発ではない。少なくとも、あふれんばかりということはない——それは決して異常でもおかしなことでもない。仮にこのテーマで、“普通”という言葉を使うことが適切であればだが。定義上、ファンタズムとは未来に視点を置くことだが、なかには性を「メンタライズ（想像）する」ことが単に嫌いで、むしろいまその瞬間において性を楽しみたい人もいる。

また、性的妄想と戯れるためのツールを持っていない人もいる。脳がセックスや欲望を巡ってとりとめのない妄想をするには、セクシャリティや自分の身体と穏やかな関係を維持していなければならない。教育ポッドキャスト配信プラットフォーム「Le Vestibule（ル・ヴェスティビュル）」共同開設者で性科学者のクレール・アルキエは次のように説明する。「たとえば教育や出会いを通して、性に関する事柄を学習したことがない場合、ファンタズムを抱くのに必要な想像力を構築することが難しくなります」

専門家が言うところの、この「ファンタズムの世界」は、ステレオタイプのイメージには到底収まらない広大な世界なのだ。「服装、ロールプレーイング、場所、性技といったことをはるかに超える」と性科学者はいう。「イメージ、音、匂い…。官能を養い、自分が知らないものを探求したいという欲求をもたらすあらゆるものが仲介となります」

性的欲望が私たちの日常生活や精神状態と密接な関わりを持つように、妄想する力を発揮するには確固たる精神的ゆとりが必要となる。したがってライフステージによっては性的ファンタズムが沈黙することもある。

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想像を構築する

中には無意識に想像力の流れを止めてしまっている人もいる。「失望するのを恐れて、あるいは罪悪感や羞恥心から、想像力をせき止めていることもあります。ファンタズムの中には禁止に関わるものもありますから。そうしたケースでは、夢想する許可を自分に与えることで、自分自身と再接続することが問題になります」と、『性的知性：欲望を解放し、性を発明せよ』（1）の著者でセックスセラピストのマルゴ・フリード＝フィリオザは指摘する。

性の専門家はこの夢という概念を重視する。ポルノや映画の影響で、私たちの想像力は貧困化し、豊かさが失われてしまったと彼女は言う。「いまや私たちは特定の事柄が興奮を掻き立てると考えるように条件付けられています。ファンタズムと言うと、ステレオタイプ、つまりセックスにおいてのTODOリスト的なものを連想する」と彼女は嘆く。ファンタズムには有益な役割がある（マスターベーションをサポートし、想像力を鍛えるのに役立つ）が、絶対にファンタズムを抱かないといけないという考え方に陥らないようフリード＝フィオリザは呼びかける。少し距離をとって、これは果たして自分の欲望なのか、それとも自分がどこかで見たことや聞いたことなのでは？と自問してみてほしいと専門家はアドバイスする。

もしお望みなら、想像力を活性化する方法を学び、ひとりで、あるいはパートナーと一緒に、ファンタズムの世界をより豊かにすることも可能だ。「ファンタズムをセックスという行為に限定するべきではありません」と性科学者のアルキエは言う。「読書、エロティックなポッドキャスト、身近な人たちやパートナーとの会話なども、ファンタズムの世界の養分になります。誰にでも何かしら気持ちをくすぐられる要素はあるものです。一度ポイントが見つかれば、たいていの場合、スムーズに事が運びます」

（1）Margot Fried-Filliozat著『L’intelligence intime - Libérez votre désir et inventez votre sexualité』Robert Laffont出版