さまざまな 愛のカタチを読み解く、漫画の世界 自分ならではの幸せを探す女性の、愛ある人生。

Culture 2022.08.16

女の生きざま、夫婦という関係性、ジェンダーの呪い、シスターフッド……。漫画は幅広い社会問題や多様性に切り込み、さまざまな愛のカタチを知ることができる大人の読み物。エッセイスト犬山紙子が、いま読むべき作品を厳選&コメント。


青春の象徴シゲタが、 45歳になって離婚危機 !?

『後ハッピーマニア』
(1〜3巻)

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安野モヨコ著 祥伝社刊 各¥990〜

『ハッピー・マニア』から約20年、待望の続編スタート。45歳になった主人公シゲタは普通の専業主婦。夫タカハシの不倫によって、突然離婚を切り出されてしまう。「シゲタはアラフォー 世代の青春の象徴 ! 恋愛至上主義の中でもがく姿がリアル。今作もコメディながら、自分の存在理由が見当たらない恐怖や独り身で生きていくことへの不安の描き方が素晴らしい。社長になったフクちゃんとシゲタのコスメ格差など、細やかな女性の描写も最高!」

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40代独身女性のリアル、酸いも酸いも甘いも。

『あした死ぬには、』
(1〜3巻)

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雁須磨子著  太田出版刊 各¥1,320

若い頃にできたことができなくなって落ち込む40代の壁。パートナー、美容の悩み、お金の不安、突然の病気、更年期障害……独身女性のリアルを描く。「映画会社に勤める主人公は、それなりに稼いできたにもかかわらず、貯金が減っていく現実。さまざまなことをわかち合える男性は病気で余命宣告されていて、酸いも酸いも甘いも噛みわけた大人同士の恋愛関係。上司のセクハラや後輩との関係性など、仕事面の悩みも心に響く素敵な作品」

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宇宙人のダルちゃんは、ありのままの私たち。

『ダルちゃん』
(全2巻)

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はるな檸檬著  小学館刊 各¥935

外出時には若い女性の形に擬態する、ダルダル星人のダルちゃん。擬態が必要な社会を宇宙人という設定で描く、「花椿」の連載の単行本化。「家に帰ると床に溶けちゃうダルちゃんに共感してしまう。社会では、誰もが誰かに合わせて擬態していると実感させられる。意中の男性に擬態前を見られてしまうけど受け止めてもらえるという、ありのままの自分でないと恋愛が始まらないのもリアル。そして、恋愛こそが救いであると描かれていないのもいい」

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おひとりさまを描く、切なく温かい作品群。

『おひとり様物語』
(全9巻)

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谷川史子著  講談社刊 各¥880〜

同棲中の恋人と生活時間が合わない会社員、夫に距離を感じている既婚女性、彼氏のいない生活を満喫中の独身女性など、さまざまな形のおひとりさまが描かれた、切なく温かいオムニバスシリーズ。「もちろん誰もが悩むこともあるけれど、ポジティブなおひとりさまの描かれ方で、優しくふわふわと社会の圧から守ってくれるヴェールのような作品群。そして、谷川史子さんのかわいくて親しみやすい絵柄を拝めるというだけで最高!」

犬山紙子
Kamiko Inuyama

1981年、大阪府生まれ。イラストエッセイスト、コラムニスト。ファッション誌の編集者を経て、『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス刊)でデビュー。雑誌、テレビ、ラジオなどで幅広く活躍中。
madameFIGARO.jpでは「犬山紙子がいま思うこと」を連載中。

*「フィガロジャポン」2022年3月号より抜粋

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