さまざまな 愛のカタチを読み解く、漫画の世界 同性だからわかち合える、 女と女で生きるということ。
Culture 2022.08.19
女の生きざま、夫婦という関係性、ジェンダーの呪い、シスターフッド……。漫画は幅広い社会問題や多様性に切り込み、さまざまな愛のカタチを知ることができる大人の読み物。エッセイスト犬山紙子が、いま読むべき作品を厳選&コメント。
同性だからわかち合える、 女と女で生きるということ。
『かけおちガール』
(全3巻)
ばったん著 講談社刊 各¥825 〜
「学生時代に好きだった女の子と再会したものの、結婚式のドレスの試着や夫との新居に呼ばれる主人公。 好きだった気持ちから逃げられないという事実。同性同士の恋愛で、相手が結婚、妊娠しているという、ある意味いちばんハードルが高い恋愛の局面。障害だらけだけどピュアな恋がいいなと思う」。大学院生のももは、昔の恋人みどりちゃんと再会する。新婚のみどりちゃんだった が、夫はモラハラ気味。ある日、一緒に旅行することになるが……。
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性別の役割ではない、 食を通した理想的な関係。
『作りたい女と食べたい女』
(1、2巻)
ゆざきさかおみ著 KADOKAWA 刊 各¥770
ごはんを作りたい女とたくさん食べる女が出会い、支え合って暮らし始める。「もし作りたい女と食べたい男だと、関係性の素晴らしさがすべて消えてしまう。性別の役割ではなく、お互いの利害がマッチした理想的な関係。また、食べる女は大きく描かれていて、特に美形というわけでもない。漫画で扱うのが難しいルッキズムに、リアルを感じさせるのが素晴らしい。レズビアンの存在を透明化させず、性愛ではない同性愛の描写もとても心地いい」
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岡崎京子が描いた作品が、 いまの時代にこそ響く。
『危険な二人』
岡崎京子著 KADOKAWA 刊 ¥1,029
遊び人だけど実はピュアな女の子と、色っぽくて男に流される女の子。ルームシェアをしているふたりが、恋をしたりバイトしたりして暮らしていく。「岡崎京子さんの作品は、いま読んでも新たな気付きがある。特に最後の描かれ方が好き。片方の女の子が妊娠して男が逃げた後、『別にいいじゃん、パパとママじゃないけど、ママとママでいいじゃん』という台詞がいい。30年前にすでにシスターフッドの可能性に焦点をあてているのはさすが!」
Kamiko Inuyama
1981年、大阪府生まれ。イラストエッセイスト、コラムニスト。ファッション誌の編集者を経て、『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス刊)でデビュー。雑誌、テレビ、ラジオなどで幅広く活躍中。
madameFIGARO.jpでは「犬山紙子がいま思うこと」を連載中。
*「フィガロジャポン」2022年3月号より抜粋