カナダのベテランニュースキャスター、白髪を理由に解雇⁉

Culture 2022.09.06

カナダのテレビのニュースキャスター、リサ・ラフラムはロックダウンをきっかけにグレイヘアに戻したがその結果、解雇された。

00-220905-grey-hair.jpg

ミュージカル『バット・アウト・オブ・ヘル(地獄のロック・ライダー)』のプレミア上演でのリサ・ラフラム。(トロント、2017年10月25日)photography: Richard Lautens/Toronto Star/Getty Images

カナダのテレビでお馴染みだったパーソナリティの進退が同国を騒がせている。2011年からカナダの民放ネットワーク、CTVのニュース番組でキャスターを務めていたジャーナリストのリサ・ラフラムが突然の降板を明かした。2022年8月15日ツイッターに投稿した動画によれば、降板は自分が望んだことではなく、「むごく」解雇されたとのこと。

この投稿動画はすでに460万回以上再生されている。この中でリサ・ラフラムは、2022年6月に「契約を打ち切る」決定がCTVの親会社のベルメディアの主導で行われたと述べた。解雇の理由についてそれ以上のことは述べていない。

---fadeinpager---

ロックダウンをきっかけに自然なグレイヘアに

投稿の数日後、カナダの新聞「グローブ・アンド・メール」紙が暴露記事を掲載した。それによれば、ベルメディアに35年間も勤めたスターキャスターがクビになった原因の一部は髪の色、というか、ロックダウンをきっかけにカラーリングをやめてナチュラルなグレイヘアに戻したからだそうだ。

 

 

同記事では、解雇の決定がなされた「会議に出席していた上層部の一人」を名乗る匿名の情報筋に取材し、CTVニュースの責任者であるベルメディアのマイケル・メリング副社長が、「リサの髪をグレイヘアに戻す」承認を誰がしたのか問いただしたことが述べられていた。それまでにも現場に来た副社長がリサの髪が「スタジオの照明で紫色になっている」ことに気づいて同じ質問をしたことがあったそうだ......。

なお、ニュースをどう扱うかについての編集方針や政治的見解の点でリサと会社との間で意見の相違があったことに触れている点も見逃せない。

---fadeinpager---

解雇への抗議

この記事をきっかけに、ネットでは彼女への支持が広まった。58歳のベテランジャーナリストは、カナダのベスト・ニュース・アンカーおよびニュースキャストに何度も選ばれており、ファンも多い。一定の年齢を過ぎた女性を雇用主がどのように見ているか、性差別などの要因が働いているのではないかという点も、SNSやメディアで話題になった。「これが最高の人材に対するベルメディアの扱いだ。底辺の人々をどう扱うか、想像してみて」とケベックのフェミニスト活動家、ノラ・ロレトはツイッターに投稿した。「リサ・ラフラムのような素晴らしいジャーナリストをなんとお粗末なやり方で扱うのか。(中略)恥を知れ、ベル・メディア!」と、元カナダ環境・気候変動大臣であるキャサリン・マッケナも憤った。「これは、長年尊敬されてきたキャスターに対する最も不寛容で不毛な降板発表だ」と、フェイクニュース専門記者クレイグ・シルヴァーマもツイートした。

カナダの企業でもリサ・ラフラムへの支持の波は広がった。ファーストフードチェーンのウェンディーズは、おなじみの赤毛の女の子のキャラをSNS上でグレイヘアに変えた。ユニリーバのブランド、ダヴのカナダ法人はハッシュタグ#KeeptheGreyを打ち出し、プロフィール写真をグレイヘアに加工して投稿するよう、女性に呼びかけるキャンペーンを行った。同社はさらに「女性のために性差のない職場を推進する団体に10万ドルを寄付した」ともツイートした。

---fadeinpager---

「そんな単純な話じゃない」

しかしながらこうした動きに疑問を呈する向きもある。ジャーナリストでプレゼンテーターのジャンヌ・ベッカーは、業界で「愛され、尊敬され」ていた同僚のたどった運命に「ショックを受けた」と語り、テレビ業界におけるエイジズム(年齢差別)の現実を否定はしない......が、その一方で事件の政治的な側面に注目し、「彼女がグレイヘアだから狙われたと思うのは素朴すぎると思う。そんな単純な話じゃない」とカナダのニュースサイト、「ザ・スター」の取材に答えている。

 

 

 

 

---fadeinpager---

法的合意

ベルメディアが最初、リサ・ラフラムの降板を8月15日付のプレスリリースで発表した時はその理由を「視聴者の習慣の変化」に基づいて決定したと簡単に説明していた。その後、「グローブ・アンド・メール」の記事が出ると、ベルメディアのCEOミルコ・ビビックはこうした噂を否定する発表を行ったものの、リサ・ラフラムとの法的な合意を理由に本件の詳細については明らかにしなかった。「リサの年齢や性別、グレイヘアが判断材料になったと言われていますが、そうではないと私は確信しており、そのことを直接お伝えしたいと思いました」とミルコ・ビビックはリンクトインのアカウントにメッセージを投稿した。「ベルメディアの決定についてもっと詳しく話したいのですが、私たちはリサと交渉合意した内容に縛られており、それを引き続き尊重するつもりです」とも。

こうした発言も同国の一部の有力者の怒りを鎮められなかったようだ。。カナダのキム・キャンベル元首相は、シンガーソングライターのサラ・マクラクランや歌手のアン・マレーとともに、抗議の声を上げ、この件は「女性がこれだけ活躍するようになった今でも、女性が職場で日々、性差別や年齢差別に直面しているという悲しい事実を確認するものだ」と述べた。

text: Victoria Hidoussi (madame.lefigaro.fr)

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

いいモノ語り
いいモノ語り
パリシティガイド
Business with Attitude
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories