義理の姉妹は敵同士? よそ者が家族の絆を脅かす時。

Culture 2022.09.20

冷戦状態? 仲直り? キャサリン皇太子妃メーガン夫人の関係は連日メディアを賑わせる。彼女たちばかりではない。外部からやってきた者にとって、家族というパズルの中で自分の居場所を見つけるのは、頭の痛い難問だ。義理の姉妹について、フランスのマダム・フィガロが、当事者の証言と専門家の解説を紹介する。

220916-02-catharineandmeghan.jpegキャサリン皇太子妃とメーガン夫人の距離と緊張感のある関係。(英国、2022年9月14日) photography : Reuters/Aflo

英王室の威光を広く伝えるために、彼女たちは儀礼上の任務を分担し、鉄壁のチームとなって、歴史に跡を残せたかもしれない。ところが、王侯貴族の中でメディアが最も注目する義理の姉妹、キャサリン皇太子妃とメーガン夫人は、逆に、互いに敵意も露わに冷戦状態に突入してしまった。

ウィリアム皇太子とキャサリン皇太子妃は、フロッグモア・コテージで催されたサセックス公爵夫妻の娘リリベットの誕生日に出席しなかった。メーガン夫人は、エリザベス女王の在位70年を記念する感謝礼拝が執り行われたセント=ポール寺院で、キャサリン妃を無視したという。キャサリン妃は未来の義妹の結婚式の準備中にメーガンを泣かせたことがあるといわれている。一方、大衆誌はこうしたいさかいが起きるたびに、国家に関わる一大事のように取り上げ大騒ぎする。

「これはどうしようもありません。この類いのいさかいは珍しいものではない」。そう解説するのは、心理セラピストのニコル・プリウール(1)だ。「家族が大きくなる時には、避けられないことでもあります。王侯貴族であるかどうかに関わりなく、他人の家に新しいメンバーとして加わる時には、新しい家族の歴史を取り入れ、新たな家族と折り合いをつけなければならないからです。しかも自分らしさを失わず、これまで受けてきた教育や夢や野心を持ったままで。つまり、理性の領域を出て、情動の領域に踏み込まざるを得ないわけです」。ゆえに、場合によってはいざこざや怨恨、フラストレーションの源にもなる。

「義妹という立場はとても複雑」と小児精神科医で作家のマルセル・リュフォ教授(2)は話す。「パートナーの兄弟姉妹にうまく同化しなければならないからです。兄弟姉妹は義務的な愛情関係で結ばれています。愛着に基づく関係の大半がそうであるように、この関係は日常的な交流、共有してきた物事、生活の場所、食事、バカンスなどの上に成り立っています。愛着は長い間の経験と、体験の繰り返しから生まれるのです」

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(非)同化

したがって、義妹はグループのルールに従わなければならない。「私の義理の家族には “ローブ・リージュ”(リージュとは、主君に忠誠を誓う人を表す形容詞)と呼ばれる伝統がありました」と語るのはロールだ。「赤と青のラインが入ったベージュのセーターで、嫁いできた女性はこれをクリスマスに受け取るのが決まり。これは嫁が一族の一員として認められた印でした」

これを授かるには、まずその資格があることを証明する必要があった。「山奥にある、水も暖房も電気もない山小屋で、冬の2週間、にこやかに暮らす能力があることを示すのです。あざらしの毛皮のコートを着て、村までスキーで降りて買い物をし、山小屋まで登る。一族の嫁はみなこの試練を乗り越えてきました」とロールは回想する。「嫌な顔をしたら二度と一族の門をくぐることはできないという、ある種のコンセンサスがありました」

というのも“よそ者”の登場は、兄弟姉妹にとって脅威だからだ。時には(よく?)対立関係も生まれる。最も注目を集め、誰かを魅了して別の誰かを苛立たせたり、一族の間に不和の種を蒔くのは彼女なのだ。パトリック・ベッソンは小説『Belle-Soeur(義妹)』(ファイヤール出版)のなかで次のように書いている。「母とアナベル(弟の未来の妻)との間に同盟が結ばれていく過程を僕は目の当たりにしていた。密かに団結したふたりの強く激しい女性たちの間で、弟は窒息して力尽きて行くのだった」。これはたまらない。

なぜこれほど反感を買うのか? 「義理の姉妹は、すでに出来上がった巣に寄生するカッコウのような存在だからです。家族の巣は、外野がなんと言おうが当事者にとっては良好な状態なのですから」と心理学者のロズリーヌ・レヴィ=バスは説明する。婉曲的に「後から加わった者」と呼ばれる人間は、邪魔者なのだ。「家族の中核の中で確立されたさまざまな関係が再編成されるのです」と、セラピストのプリウールは続ける。

息子の妻には、夫婦の結びつきを強固にするために夫と家族を引き離して夫を操縦し、自立させるか、あるいは義理の家族の習慣に溶け込むか、どちらかしかないのだろうか? 中には反抗する嫁もいる。

「夫の家族との昼食会とか、日曜日の集まりはもうたくさん。会話といっても、一般教養をひけらかすばかり」。そんな家族の習慣にアンヌはうんざりしている。この場合、息子に残された選択肢は、自分の家族に会う権利を説いて妻にこの習慣を課すか、あるいは逆に、自分の家族を「裏切る」ことになっても妻の側につくか、そのどちらかだ。

caroline-et-charlene.jpegモナコのシャルレーヌ公妃の登場でカロリーヌ・ドゥ・モナコ妃は影が薄くなったといわれた。ふたりの関係は複雑だ……。(モナコ、2018年11月19日) photography : REUTERS/Eric Gaillard/Pool (Monaco)/Aflo

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パワーゲーム

兄弟姉妹の団結力を見くびってはいけない。「他の兄弟姉妹より大きな成功を収めながら、兄弟姉妹との連帯を損なわないように、仕事や恋愛の面でわざと失敗しようとする人に出会って、それがわかりました」と、精神分析家のセルジュ・ウフェズ(3)は言う。「“兄弟姉妹が不調を抱えていたら、自分だけ調子よく生きるわけにはいかない”と患者から何度も聞かされました。同じような意味で、“家族のまとまりを作り上げたものを否定することはできない”という人もいます」

アラン・シャバとシャルロット・ゲンズブールが共演した、エリック・ラルティゴ監督作映画『Prête-moi ta main』でも、この問題が取り上げられている。5人の姉妹を持つ男性の新しい恋人が未来の義理の姉妹たちの前に現れるシーンでは、姉妹たちが弟の恋人を入念にチェックし、彼女に次々と質問を浴びせる。仕事のこと、親のこと、出自のこと……。なぜこんなに色々と訊きたがるのか? 精神分析家の答えは「“よそ者”がどういう人物か見極め、しっかり管理するためです。そして万が一の時に、彼女を追い詰めるためです!」

この詰将棋のような駆け引きで、決して義妹の力を見くびってはいけない! なぜなら、自分のテリトリーを拡張したり、確立するために、彼女はグループの団結を阻止するありとあらゆる大量破壊兵器を動員するかもしれないからだ。武器にはこと欠かない。欠席(罪悪感を与える)、無関心(混乱させる)、嫌味。誰かを味方につけ、他のメンバーを傷つける……。

「家族が集まって食事をする時、義妹は夫の仕事上の成功を必ず自慢していました。私の夫が失業中なのを知っているのに」とファビエンヌは回想する。「携帯電話を取り出して、私たちみんなの前で夫に電話を掛けて、“株価が上がってるわ。次の株主総会もうまく行きそうね”とか言うのです」。なぜなら、社会学者のフランソワ・ドゥ・サングリ(4)が言うように、家族の間であろうと「すべては権力争い」だからだ。「兄弟姉妹の間に平等は存在しません。長子は年月を経るにつれ自分を家族のリーダーと考えるようになるからです」

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(非)忠誠心

専門家は続ける。「かつては、こうした関係の階層化は家族構造に完全に埋め込まれていました。家族の変化に伴い、いまはそれが徐々に難しくなっています。自分の場所が本当はどこにあるのか、もはや誰にもわからないのです」

ドゥ・サングリはクリスマスのディナーを例として挙げる。「長い間、家族全員で大きなテーブルを囲む習慣があり、それぞれが自然に自分の席についていました。いまはステップファミリーが増え、家族のメンバーも多く、均一ではないため、ビュッフェ形式が取り入れられるようになっています。これならそれぞれが対話相手を選べるので、メンバー間のいざこざが防げます」

それでも義理の妹が、夫の実家の生活ルールに干渉し、自分の好きなようにルールを変える捕食者と見なされることもある。関係者の声を無差別に挙げてみよう。「私たちに掟を課すのは彼女の役目ではないのに……。毎年夏は家族みんなで一週間過ごすのが習慣だった……。ママはショックから立ち直れないかも」

義理の母親の側にも責任はある。「よく知られているように、息子は母親にとって誰よりも愛しい存在です」とウフェズも言う。

エレーヌは義理の母親のこんな心ない言葉を覚えている。「見て、あなたの結婚式に着る半喪服よ」。その後はすべてがこの調子だった。「結婚する前の息子は母親に対しても家族に対しても、忠誠心に基づいた垂直的な関係を築いています」とプリウールはコメントする。「結婚すると、彼の忠誠心は分散します。妻が夫の手を取って、実家から引き離そうとすることもあります」

義妹は捕食者であるだけでなく、泥棒でもあるということ? 兄弟を盗む泥棒? 「兄弟姉妹間の関係がとても強い場合、闖入者の登場は裏切りに等しく、敗北感を植え付けることもある」と精神分析家たちも同意する。証言者たちの口からは、こんな発言も飛び出している。「本当に高慢ちき」「にこにこしてるけど、実は嫌な女」「ロックダウンの間、彼女は3回も部屋を変えたがった。寒すぎるとか、Wifiの接続が悪いとか、浴室が遠すぎるとか……」

中には沈黙によってこの争いを避ける人たちもいる。「私のやり方はとてもシンプル」とジェラルディーヌは語る。「家族が集まった時は、人の話は聞かない、自分も何も言わない。微笑んでいるだけ。それでも一言二言は不愉快なことを言われます。“疲れているみたいだけど……。太ったんじゃない?”とか、“仕事は見つかった?”とか。逆に、“あなたのためにルバーブのタルトを作ったわ。好物だったわよね?”と、過剰に親切にされたり」

「ただし義理の姉妹でも、良好な関係を築き、友人同士となることも可能です」とドゥ・サングリは強調する。「そのときにはどちらも、義務的な忠義心から解放され、自分自身と自分の人生に対する実権を取り戻したという気持ちになるでしょう」

(1)Nicole Prieur著『Les Trahisons nécessaires』Editions Robert Laffont刊
(2)Marcel Rufo著『Frères et Soeur, une maladie d’amour』Editions Fayard刊
(3)Serge Hefez著『Quand la famille s’emmêle』Hachette刊
(4)François de Singly『Double Je, identité personnelle et identité statuaire』Armand Colin刊

text : Isabelle Girard (madame.lefigaro.fr)

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