9月8日のエリザベス女王崩御から19日の国葬まで、イギリス国内は服喪期間とされていた。
ニュースで伝えられている通り、25万人以上の人々が棺が公開安置されていた英議会議事堂のウェストミンスターホールに一般弔問に出向いていたが、それ以外でも大小の追悼の意を示すものが国中で見受けられていた。
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スーパー前には追悼のボードが。
ATMの画面も追悼モードに。
中東などで親しまれているお菓子バクラヴァ専門店のウィンドウには分身の術さながらの女王が。民族を超えて愛されていたのがわかる。
ポストボックス・トッパーは郵便ポストの上部を覆う手編みの飾りで、数年前からイギリスのあちこちで登場、すでにおなじみの存在となっていた。一説にはパンデミックによるロックダウンの最中に、人々に少しでも明るい気持ちになってもらうために各地の編み物愛好家たちによって始められたと言われている。
6月のプラチナジュビリーの際には特に、さまざまなお祝いのポストボックス・トッパーが飾られて話題を集めていた。
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今年6月のプラチナジュビリー直前に出先で見かけたポストボックス・トッパー。
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そしてもちろん今回も。訃報が流れた直後から即座にたくさんの数が製作されたのが分かる。可愛らしいだけでなく手の混んだものも多く、女王への敬愛が感じられる。
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国葬列席のために渡英した天皇皇后夫妻も滞在した高級ホテル「クラリッジス」は、エントランスホールに女王のための記帳台が設置。
バッキンガム宮殿別館の異名をもつほどに世界各国の王族や要人に愛されるホテル「クラリッジス」。
エントランスホールの記帳台。天皇皇后夫妻も署名したのだろうか。
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宮殿の最寄り駅ヴィクトリア構内には、お供えの花のための臨時フラワーショップが登場。
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日本のお供えの花とは違いカラフルなものが主流。ユニオンジャックカラーの白・赤・青の3色の花束も見られた。価格は10〜15ポンド(約1600円〜2400円)が多い。
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お土産物の露店も特別にブーケやお悔やみの文字入りTシャツなどを販売。さらにはプラチナジュビリー時のショートフィルムでの共演にちなんで、パディントンのぬいぐるみもたくさん並べていた。
とはいえパディントンとマーマレードのサンドイッチのお供えは禁止されていたのだけれども。
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20日からは喪が開け、政府庁舎などで反旗で掲げられていたユニオンジャックは通常に戻された。追悼のために宮殿前やロンドン市内の公園に捧げられた花々の撤去は26日ごろから始まり、肥料として再利用されるという。
今後はチャールズ3世の戴冠式があり(エリザベス女王の戴冠式から70年目となる来年6月2日に行われるのではないかとの説もある)、市民の暮らしの中では、紙幣やコイン、切手などで見慣れた女王の肖像が新王のものに変わっていく。
女王の長い在位中に歌われていた国家「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」も「ゴッド・セイヴ・ザ・キング」となった。正直言ってなんだかしっくりこないよねという声も多く聞くが、それも徐々に慣れていくのだろう。
texte:Miyuki Sakamoto
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在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。