2022年は、バービー風ピンクルックがカムバック?
Culture 2022.09.30
2022年、バービー人形スタイルがファッション界に大きなカムバックを果たした。これまでのルックス重視の呪縛からいくらか解放された新しいバービーファッション。“ブロンドの復讐劇”でもあるこの新しいバービールックを、フランスのマダム・フィガロがレポート。
Valentinoの2022-2023AWのオートクチュールのランウェイに出席したピンクのトータルルックのアン・ハサウェイとファサ(ローマ、2022年7月8日)。photography : Getty Images
クローゼットとおもちゃ箱を隔てるのはたったの1枚の壁、その壁を悠々と飛び越えてしまうのが世界的に有名なバービー人形。そう、数カ月前からバービーは大人の世界でも注目の的になっている。オーストラリア出身の女優マーゴット・ロビーがグレタ・ガーウィグ監督の最新作でバービーを演じることになったのがことの発端だ。撮影現場の写真を見る限り、ファッションバズが起きそうな予感満載!
ネット上でもレッドカーペットでも騒がれている最新トレンドは“バービーコア”。その由来はもちろん、多くの少女を魅惑した懐かしいバービー人形だ。鮮やかでピンクいっぱいのバービーらしい洋服を取り入ればスタイルは完成!
ピンク一色のValentinoの2022-2023AWコレクション。バービーコアのかなめだ。photgraphy : Imaxtree
女性の容姿をステレオタイプ化したと批判されてきたバービー。しかし今回この点は問題視されていない。ポイントとなるのは彼女の華やかさだ。Lizzo、ジリアン・アンダーソン、アン・ハサウェイなど、さまざまなボディシェイプのスターたちがキャンディピンクにのめり込んだのを見れば、バービー精神がずいぶんと変わったことは一目瞭然だ。
表面的な真似っこをするのが目的ではない。全体的に、できれば過剰なまでにピンクを取り入れて、ルックスに「活」を入れること。このトレンドは何を意味しているのだろう。平等であることとか、味方をしてくれることとか、新しいバービールックはなんと私たちの幸福を願ってくれているのだ。
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強いフェミニティの象徴であるビビッドピンク。
ステレオタイプを凝縮したようなバービー人形は、ここ数年、自分のイメージをアップデートし続けた。体型はより現実に近くなり、実業家やエンジニアなどの仕事に従事するようになった。マテル社は、主力製品であるバービーが女性のエンパワーメントの道具となるよう力を注いできたのだ。この間、色気の位置付けが変わってきたことも要因の一つだろう。
いまの時代、セクシーさは自覚するものであり、自己肯定のツールになった。「ハイパーフェミニティ(女性らしさを強く主張すること)やボディコンなどの意味合いは変化しました。1990年代は若くて、背が高く、細いことは美に関する文化的スタンダードに合格するための条件でした。しかしいま、その文化は変化し、人々の美に対する概念はよりオープンになりました」とMuglerのアーティスティック・ディレクターであるケイシ―・カドワラダーはマダム・フィガロに語った。
バービーコア・スタイルもその流れを汲んでいる。バービー人形のミニスカートはいまや一種のフェミニズムを連想させるし、代表的カラーであるビビッドピンクは強いフェミニティを象徴する「毅然とした態度」と結び付くようになった。エレガントなカットのミニスカートであれ、あえてセクシーなものであれ、新しいバービーはファッションの巨匠たちのマインドにしっかり芽生え、インスピレーションの源となった。
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ランウェイ・ドール
今年の1月、オリヴィエ・ルスタンはある宣言をした。2022年はバービーの年になるか否かだと。バルマンのアーティスティック・ディレクターである彼は、ユニセックスなコレクションでバービー人形とのコラボレーションを果たした。このような試みは彼が初めてではないが(2014年1月にジェレミー・スコットがモスキーノのランウェイでバービーを取り入れた)、今回、オリヴィエ・ルスタンはモードとユーモアを行き来しながら、子ども向けのキャラクターにファッション性を与え、成功した。
直後には、ピエールパオロ・ピッチョーリが2022-2023AWのヴァレンティノのコレクション(ピンクと黒の単色)でこの試みを引き継ぎ、バービーはシックなレッドカーペットでも根付いた。このようにして“バービーピンク”は今年のトレンドの定番として決定されたのだ。
text : Mitia Bernetel (madame.lefigaro.fr) translation : Hana Okazaki, Hide Okazaki