片山真理が語る、自らの身体を通した境界や所有についての思考。
Culture 2022.09.30
このカラダ、誰のもの……? 無意識のなかで、そんなふうな疑問とぶちあたる人は案外多いのかもしれない。アーティスト片山真理は、その想いを表現。身体性と社会性で揺れる人々の気持ちを表すかのように。
自らの身体を通した、境界や所有についての思考。
片山真理
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MARI KATAYAMA
1987年、埼玉県生まれ。義足にイラストや手縫いの装飾を施したオブジェやペインティングを制作し、セルフポートレートやインスタレーションを発表。木村伊兵衛写真賞を受賞。
私の身体も作品も、誰かのものになりえるのか、いや、誰のものにもなりえないのかもしれない
アーティストの片山真理は、自身の身体を模った手縫いのオブジェや立体作品、セルフポートレート作品の活動が目立つが、近年は、自身の身体から外の世界へと対象を広げつつある。今年の『岡山芸術交流2022』では新作『possession』に挑むが、この言葉は「所有」という意味を持つ。
「美術館に作品が収蔵されたことをきっかけに、作品って誰のものなのかと考え始めました。と同時に“身体”って誰のものなのか、という疑問が湧きました。自分の身体は自分のものだといいますが、思ってもみない人の言葉に縛られることもある。実は最近、『写真撮るんで脱いでみますか!』って言われて。冗談だったんだと思いますが、被写体である自分の身体はその場にいた男性の“もの”だという感覚があったのだなと実感しました。一方で、私以上に私のことを大事にしてくれる人もいる。私の身体も作品も、誰かのものになりえるのか、いや、誰のものにもなりえないのかもしれない。34年間生きてきた人生で、積み重なった思いが込められた作品です」
自己と他者の境界はどこにあるのだろうか。他者を侵食することとは……。人権にまつわるさまざまな社会問題が頭に浮かぶ。彼女の作品を通し、身体と所有についてあらためて考えていきたい。
会期:9/30〜11/27
旧内山下小学校、岡山県天神山文化プラザ、岡山市立オリエント美術館、林原美術館など(岡山)
営)各施設による
休)月
料)一般¥1,800
●問い合わせ先:
tel:086-221-0033
www.okayamaartsummit.jp/2022
*「フィガロジャポン」2022年9月号より抜粋
text: Keiko Kamijo