独自の視点で世界を切り取る、今月行きたい展覧会4選!

Culture 2022.10.23

アーティストが創作に向き合う時、彼ら、彼女らの視線は何をとらえているのだろうか? 映像、写真、立体、インスタレーションを通じて、アーティストの世界観を体感する展覧会をご紹介。

映像を通して切り込む、女性たちの表現と意見。

『ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台』

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オランダの現代美術を代表するアーティスト、オルデンボルフの映像作品は、他者との共同作業を通じて新たな人々の関係を形成してきた。国内初の個展では17世紀のオランダ領ブラジル総督ヨハン・マウリッツの知られざる統治を巡り、彼の旧居であるマウリッツハイス美術館で議論を展開する初期の代表作『マウリッツ・スクリプト』や、オランダの若い女性たちが自身の異種混交的ルーツや性について音楽や言葉を紡ぐ『Hier. / ヒア』など、6点を展示。また、今回国内で制作する新作では、1920年代から40年代に活躍した女性の文筆家たちが女性の社会的地位や性愛、戦争などに切り込むテキストが映し出した今日の社会の側面を探る。フレームを定めない、舞台セットのような展示構成にも注目したい。

『ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台』
会期:11/12~2023/2/19
会場:東京都現代美術館(東京・清澄白河) 
営)10:00~18:00
休)月、12/28~2023/1/1、10 ※ 1/2、9は開館 
料)一般¥1,300 

●問い合わせ先:
tel:050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.mot-art-museum.jp

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あらゆる生命に等しく注がれる眼差し。

『川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり』

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写真家・川内倫子は、身の周りの生きものや家族から悠久の時を経て生成された大地まで、あらゆる生命の神秘や輝き、儚さ、力強さを、等しく価値のあるものとして撮り続けてきた。久々の大規模な個展ではこの10年の活動に焦点を当て、川内の作品世界の本質に迫る。2019年より取り組む新作シリーズ「M/E」では、アイスランドの氷河や休火山、冬の北海道の雪景色などの壮大な自然と、コロナ禍に自宅周辺で家族や動植物と過ごした日常の風景を写し取った。「M/E」とは母(Mother)と地球(Earth)の頭文字だが、続けて読めば「母なる大地(Mother Earth)」であり「私(Me)」でもある。次元もスケールも遥かにかけ離れているようで、同じこの星の上で起こっている生命の営みに注ぐ澄んだ眼差しは健在だ。

『川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり』
会期:開催中~12/18
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(東京・初台) 
営)11:00〜19:00
休)月 
料)一般¥1,200

●問い合わせ先:
tel:050-5541-8600(ハローダイヤル) 
https://rinkokawauchi-me.exhibit.jp

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箱の中に凝縮された芸術のエッセンス。

『Art in Box –マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後』

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現代美術の祖マルセル・デュシャンの『トランクの箱』は、自身の作品69点のレプリカが革のトランクに収められた携帯できるミニチュアの美術館だ。新作を作る代わりに自分の好きな絵やオブジェを複製し、限られたスペースに凝縮させる表現を思いついたのだ。作家の脳内世界のエッセンスを網羅するこのアイデアは、20世紀の芸術に多大な影響を与えた。本展ではデュシャンの一連の箱の作品を起点に、その制作にも携わったジョゼフ・コーネル、親交のあった瀧口修造、岡崎和郎、山口勝弘、松澤宥、さらにフルクサスとそのメンバー塩見允枝子など、「箱の中の芸術」を展観。内観の愉悦と狂おしさに満ちた作品体験を探求してほしい。

『Art in Box –マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後』
会期:10/25~2023/2/5
会場:アーティゾン美術館(東京・日本橋) 
営)10:00~18:00(金は~20:00) 
休)月、11/4、12/28~2023/1/3、10 ※1/9は開館 
料)一般¥500(10/25~11/3)、¥1,800(11/5~2023/2/5)
※『パリ・オペラ座-響き合う芸術の殿堂』のチケット料金も含むWEB予約チケット

●問い合わせ先:
tel:050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.artizon.museum

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弱者とともに立つアートアクティビズムの軌跡。

『長坂真護展 Still A “BLACK” STAR Supported by なんぼや』

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先進国が廃棄した電子機器の墓場が発展途上国に多数存在することを知り、西アフリカ・ガーナの首都アクラを訪れた長坂真護。スラム街で見た膨大なゴミの荒野に衝撃を受け、ゲーム機のコントローラーやTVのリモコン、マウスやキーボードなど廃棄物をキャンバスに貼り、油彩を施した作品を通して先進国にその惨状を伝える活動を続ける。作品売り上げによる資金で1000個以上のガスマスクを現地に届け、スラム街初の私立学校や文化施設を設立。さらにリサイクル工場建設を目指し、スラム街の住民たちと農業を展開しようと奔走する。本展ではプロジェクトの軌跡に加え、平和への祈念を込めた「月」シリーズなど、近年の活動を紹介。

『長坂真護展 Still A “BLACK” STAR Supported by なんぼや』
会期:開催中~11/6
会場:上野の森美術館(東京・上野)
営)10:00〜17:00 
無休
料)一般¥1,400

●問い合わせ先:
tel:050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.mago-exhibit.jp

*「フィガロジャポン」2022年12月号より抜粋

text: Chie Sumiyosh

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