韓国カルチャーにスポットを当てたエキシビション『Hallyu! The Korean Wave』が現在ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で開催されている。約200点のアイテムを揃えた韓国の大規模な展示を同館が行うのはこれが初めてだ。
「韓国は今、活気に満ちたポピュラーカルチャーである韓流によって、世界中から熱い視線を集める存在となりました。これまで同国が持っていた朝鮮戦争による悲しい記憶を払拭し、ソーシャルメディアとデジタルカルチャーを駆使しながら時代を先駆ける文化大国となったのです」と同展のキューレター、ロザリー・キムは語る。
エキシビションはPSYによる2012年の世界的ヒット曲「江南スタイル」のMVと衣装の展示で幕を開ける。
会場に入るとお馴染みの映像が出迎えてくれる。Ⓒ Victoria and Albert Museum
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その後は日本の占領下時代や朝鮮戦争などの歴史とともに、60〜70年代の経済発展、世界が韓国を「再発見」するきっかけとなった1988年のソウルオリンピックを通して、韓国の大衆文化が花開いていく社会的バックグラウンドについて説明。
日本でも80年代に注目を集めた韓国生まれのアーティスト、ナム・ジュン・パイクの作品「Mirage Stage」も並ぶ。© Nam June Paik Estate
ソウルオリンピックに関する一角。Ⓒ Victoria and Albert Museum
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韓国ドラマ&韓国映画のコーナーでは、Netflixのメガヒットドラマ「イカゲーム」の衣装とともに、第92回アカデミー賞で作品賞などの4冠に輝いたポン・ジュノ監督映画『パラサイト』で地下に暮らす家族のバスルームのセットを再現、展示している。
今年のハロフィンでは「イカゲーム」のこの衣装を真似た人も少なくなかったのでは?Ⓒ Victoria and Albert Museum
再現された混沌としたセットが、映画『パラサイト』の主人公一家の壮絶な生活を物語っている。Ⓒ Victoria and Albert Museum
そのほか歴史ドラマの衣装や小道具、ポスター、台本なども並ぶ。また日本で韓国ドラマブームの火付け役となった「冬のソナタ」で主人公は履いていたジミー チュウのハイヒールが完売したエピソードにも触れる。
時代劇でありながらゾンビスリラーのドラマ「キングダム」の衣装。Ⓒ Victoria and Albert Museum
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圧巻は何と言ってもKポップのセクションだろう。ファンたちが重要視するペンライトが壁の一面を飾り、これまでは考えられなかったSNSやインターネットを駆使したアーティストとファンダムの密接な関係を紹介。
カラフルでキュートなペンライトは韓流ブームを象徴しているかのよう。Ⓒ Victoria and Albert Museum
Gwon Osang作の3メートルを超えるG-Dragonの彫刻や、aespa’sがMV「Next Level」で、ATEEZが「Fireworks」で着用した衣装は必見。そのほかにBTSやBLACKPINKのスタイリングを手がけるヴィジュアル・ダイレクターのBalkoとGee Eunによる、アイドルの着こなしをテーマにしたコーナーも興味深い。
迫力満点のG-Dragonの彫刻。© Courtesy Gwon Osang .jpg
スターたちの衣装を間近に見られる。Ⓒ Victoria and Albert Museum
aespa’sのMV「Next Level」用コスチューム。Ⓒ Victoria and Albert Museum
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Kビューティ&ファッションのエリアでは、13世紀からのコスメティックのパッケージを並べ、独自の美意識へのこだわりの紹介とともに、韓国デザイナーによる服を展示。民族衣装を現代風にアレンジしたドレスから、Minju Kim、Ji Won Choi、Miss Soheeら、韓国の人気ブランドの服や、2018年にBTSのRMが着用したBaek Oak Sooのコートなどを展示する。
韓国の旬のデザイナーたちによる服が並ぶ。Ⓒ Victoria and Albert Museum
民族衣装をモダンにアレンジしたデザインが新鮮。Ⓒ Victoria and Albert Museum
Minju KimによるMoon Jar Dress。© Minju Kim, Photo Sangmi An, Model Leehyun Kim
Ji Won Choiとアディダスによるコラボレーション。Photo:Francesca Allen, courtesy Adidas.jpg
旬な韓流の熱い波をダイレクトに感じられるエキシビションとなっている。2023年6月25日まで。
text:Miyuki Sakamoto
在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。