選ばれし者だけが垣間見られる、メゾンからの招待状。
Culture 2022.12.24
愛することの最果てを描く、シュールでダークな短編集。
『人類対自然』
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夫に先立たれた女性は、再婚相手が見つかるまでシェルターに収容され、亡き夫を忘れるためにさまざまな訓練を強要される(「前に進む」)。特異な生殖能力を持つため、あらゆる女性に求められる“みんなの男”(「おたずね者」)。この作家にかかると、愛し、愛されるということは当たり前ではなく、誰かを求めれば、抜き差しならないディストピアが出現する。シニカルで不条理な世界観がクセになる、あのミランダ・ジュライも絶賛した短編集。
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無意識の偏見ほど手ごわい、私たちは何に縛られているか。
『もうやってらんない』
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アフリカ系アメリカ人のエミラはベビーシッターをしているが、雇い主の白人の子どもを連れて高級スーパーを歩いていたら、誘拐の疑いをかけられてしまう。雇い主のアリックスは黒人差別だ、訴訟しろと息巻くが、エミラは気が進まない。エミラの日常はリベラルなつもりで上から目線の白人たちに振り回されっぱなし。無自覚な偏見をあるあるなエピソードで軽快に描き、デビュー作にして70万部を突破したブッカー賞候補作。
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旧態依然とした常識を壊す、女たちが痛快なストーリー。
『ついでにジェントルメン』
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会員制の高級鮨店に突然現れた子連れの女。不倫相手を口説く気だった男たちの困惑をよそに、驚くべき食通ぶりを発揮してワインと寿司をたいらげていく(「エルゴと不倫鮨」)。悪意を持って女性専用車両に乗り込んだ男の顛末。少女小説の意外な共通点。旧態依然とした男たちの常識に風穴を開ける女たちを描いた7つの短編は、ジェンダーを軽やかに料理して痛快。それにしても著者の描く食べ物のおいしそうなこと! 空腹で読むべからず。
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アートのような招待状から、メゾンの物語が見えてくる。
『ファッションショー招待状図鑑 ファッション史に残る300のショーの物語』
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ファッションショーの招待状には選ばれし者だけが垣間見ることができたメゾンのストーリーが刻印されている。過去50年のランウェイを彩った300の伝説的なインビテーションを厳選。シャネル、ルイ・ヴィトンといった老舗ブランドのカードから、プリンスがヴェルサーチのために制作し無料配布された幻のカセット、ジョン・ガリアーノのドラマティックな招待状など、貴重なエピソードとともに紹介する。
*「フィガロジャポン」2022年7月号より抜粋
text: Harumi Taki