いまこそ知りたい、セックスと政治の意外な関係。

Culture 2022.12.26

常識と非常識は紙一重、村田ワールドの魅力全開。

『信仰』

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村田沙耶香著 文藝春秋刊 ¥1,320

友人からカルト商法を始めようと誘われた私は、胡散臭さを笑い飛ばすつもりがのめり込んでいく。ブランドものに美容医療、騙されてもいいから夢を見たい心理を衝いた表題作。「ルンバと同じくらいの便利さ」だと勧められ、自分のクローン家電を買った顛末を描いた「書かなかった小説」など、短編6編とエッセイ2編を収録。常識は覆され、正常と狂気の境界線が揺らぐ瞬間がいっそ痛快でクセになる。村田ワールドを堪能できる作品集。

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女たちは緩やかに連帯する、シスターフッドな連作小説。

『一心同体だった』

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山内マリコ著 光文社刊 ¥1,980

10代から40代の女性たちをロンド形式で描くこの小説は、女同士の関係がこの30年でどう変わってきたかを浮き彫りにする。少女の頃から他者の承認を求めたり、サークルで男性に値踏みされたり、モテ服を追求したり、身に覚えのあるディテールの確かさは女性の生き方を描き続けてきた著者ならでは。刷り込まれた古い価値観から解き放たれる時、女たちは緩やかに連帯する。私たちの現在地を照らす作家デビュー10年目の到達点。

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セックスと政治の関係は、いまこそ知っておくべき。

『あなたのセックスが楽しくないのは資本主義のせいかもしれない』

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クリステン・R・ゴドシー著 高橋璃子訳 河出書房新社刊 ¥2,090

クセの強いタイトルだけど、奇をてらっているわけじゃない。ペンシルベニア大学のゴドシー教授がセックスと政治の関係について検証。男女平等が建前の社会主義の方がセックスの質も上だったのではないかと問いかける。男性中心主義の社会がいかに女性の身体と性を消費してきたか。アメリカの最高裁が中絶の権利を覆す判決をしたり、結婚や家族の在り方に政治が口を出す日本の現状を顧みても、いまこそ読むべき示唆に富んだ一冊。

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人気イラストレーター、初めての本格的な作品集。

『塩川いづみ作品集 ペン、鉛筆、ひと、動物、植物』

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塩川いづみ著 玄光社刊 ¥3,300

シンプルで直截な線が、実に雄弁に語りかけてくる。余分なものはそぎ落とされ、本質的なものが露わになる。無垢な子どものような眼差しと、どこか内省的な佇まい。風通しのいい心地よさが何とも魅力的だ。本の装丁やイデーの食器などさまざまなプロダクツを手がけるイラストレーター塩川いづみの初作品集。多摩美術大学在学中から近年までの仕事やラフスケッチ、個展で発表した作品など約200点と描き下ろしの作品8点を収録。

*「フィガロジャポン」2022年9月号より抜粋

text: Harumi Taki

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