新たな世界を切り拓く、いまこそ読みたい4冊。

Culture 2023.01.03

世界を更新する詩人の言葉、最果タヒのエッセイ。

『神様の友達の友達の友達はぼく』

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最果タヒ著 筑摩書房刊 ¥1,760

最果タヒは「自意識過剰」なのではなく「無意識過剰」なのだと思う。笑う時になぜ自分は笑っているのだろうと自分自身に問いかけずにはいられず、愛する時に結局は自己満足ではないかと疑う。次々と立てられる問いは読む人の無意識もこじあけ、思い当たるフシをなぞり、当たり前だと思っていた日常をこの世の深遠に触れるパーツに分解してみせる。詩人ならではの手際で世界をもう一度新しく生まれ変わらせるエッセイ。


男性優位社会に反撃する、不屈のフェミニズム戦記。

『わたしの体に呪いをかけるな』

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リンディ・ウェスト著 双葉社刊 ¥2,530

子どもの頃から太っていたリンディは、映画やアニメで太った女性がどんなキャラ付けをされるかを観て、おもしろい女として生きる道を選ぶ。しかし、あるきっかけで「自分の体は誰のものでもないし、この体こそ自分なのだ」と目覚めた彼女は、無害な女を演じる必要などないことに気付き、反撃を開始する。コメディエンヌにして不屈のアクティビスト。リンディの言葉には、男性優位社会の呪いを解く勇気とヒントが詰まっている。


喪失と再生を描き続けてきた作家の到達点となる短編集。

『ミトンとふびん』

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吉本ばなな著 新潮社刊 ¥1,760

深い傷を負うと、人は痛みを認識するまでに時間が要る。6つの短編に登場する人たちはそれぞれの喪失を抱え、次の兆しが見えてくるまでの凪の時間を生きている。大切な人の死はどんな人にも起こる不条理な出来事であり、その先を生きるのに誰にでも当てはまる正解などない。行き会った人たちと何かを分かち合いながら、自分で自分の落としどころを見つけるしかないのだ。その時に灯るその人だけのかすかな光が胸に迫ってくる。


究極の自給自足生活で知る、脱テクノロジー可能な未来。

『ぼくはテクノロジーを使わずに生きることにした』

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マーク・ボイル著 吉田奈緒子訳 紀伊國屋書店刊 ¥2,090

かつてソローが『森の生活』でした自給自足生活を、現代で実践するとどうなるか。『ぼくはお金を使わずに生きることにした』で1年間お金を使わない生活を実践した著者が再び果敢な実験に挑んだ。SNSもなし。仲間と小屋を建て、泉の水を汲み、火をおこし、畑を耕し、釣りをする。テクノロジーを断って見えてきたのは、生きる実感に満たされた生活。私たちは便利さと引き換えに何を失ったのか。刺激的で示唆に富む未来予想図。

*「フィガロジャポン」2022年4月号より抜粋

text: Harumi Taki

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