この冬、シースルードレスが急に大流行した理由とは?

Culture 2023.01.11

トランスペアレントなドレスが世界のレッドカーペットに君臨している。露出度の高いこのドレスは、多くのセレブリティが着用し、政治的なメッセージにもなっている。

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トランスペアレントなドレスを着たケイト・モス。(ロンドン、2022年11月10日) photography: Getty Images

服は何のために存在しているのか。人類学者は、寒さを防ぐため、裸体を隠すためと答えている。では、トランスペアレントな服にはどんな意味があるのだろうか。実際のところ、寒さも防がないし、裸体も隠せない。この問いは、主にセレブリティの間で社会現象となっているトランスペアレントなドレスの大流行に端を発している。一般人のファッションの革命の始まりと考えることはできるのだろうか。まだ一般女性の間に広まっていると考えるのは早い。これほどの大流行は、解放された性の象徴としてトランスペアレントなファッションが流行した1960年代以来だ。それから60年後、この象徴の軌跡は、女性のパワーと解放をテーマに変化しつつある。風が強くても、雨が降っても、凍てつくような寒さでも、セクシーなドレスはいつも話題性がある。50代を目前としたケイト・モス。11月中旬のロンドン、堂々とトランスペアレントなドレスで下着を見せて現れたが、これがトランスペアレントなファッションの流行の転換点だ。歌手のリアーナも負けていない。真冬のパリでショーツ、ブラ、妊娠したボディラインを披露した。女優のオリビア・ワイルドは、ハリー・スタイルズと破局した後、リベンジドレスを着用。アメリカの女優クロエ・セヴィニーとフランスのインフルエンサー、カミーユ・シャリエールは、シアーなウェディングドレスを着用し、規範や慣習にとらわれない姿で祭壇に現れた。

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多くの女性たちが体を露出している理由は何だろうか? 新型コロナウィルスの大流行後、セレブリティたちは、レッドカーペットが復活して以来、メディアでの厳しい生存競争の中、トランスペアレントな衣装は注目を集めるチャンスだと思った人もいるかもしれない。このファッションはフェミニストの主張を可視化している。透明なヴェールに包まれたセレブリティたちは、私たちにありのまま生きることを勧め、自分の身体を他人の目に映る欲望の対象としてではなく、自分自身を肯定するものとして主張しているのだ。

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ディオールのファッションショーの出口でのリアーナ。(2022年3月1日、パリ)photography: Getty Images

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常識を覆す

リアーナの場合、意図的かもしれない。彼女はファッション業界がいかに外見やシンボルにこだわっているかを理解している。彼女自身が、2018年の発売以来、驚異的な成功を収めているランジェリーブランド「フェンティ」で、より包括的な見方を取り入れるなどファッションに大変精通している。彼女のメッセージはいつもシンプルだ(そして売上にも繋がっている)。:体型、サイズ、民族、性自認、性的指向に関係なく、すべての人が対象である。表現のリポジショニングを得意とするリアーナが、セクシーな妊婦というこれまでの常識を覆したことに驚きはない。母親となるリアーナに期待される母性的な外見や役割とは相反するトランスペアレントなナイトウェアに包まれた大きなお腹、タイトな衣装についてSNS上には反応が殺到した。しかし、最終的にリアーナのセクシーな妊婦姿は賛否両論あったものの、2022年のプラットフォームとなった。

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ファッション界を巻き込んで

自己肯定感を上げるトランスペアレントなドレスの流行は、ファッションデザイナーのサポートなしには成り立たない。アレキサンダー・マックイーン、ジャン・ポール・ゴルチエ、ヴィヴィアン・ウエストウッドなどのデザイナーは、大胆で挑発的、アバンギャルドな作品に透け素材を用いることが多かったが、今やファッションのあらゆるレベルでトランスペアレンスが用いられている。そして、服を着ることをめぐる伝統的な社会的ルールを崩す傾向がある。来年の夏と冬のコレクションにはそれらが多く詰まっている。アクネ、アライアジバンシィアミコペルニバーバリーシャネルクロエドルチェ&ガッバーナグッチエンポリオ アルマーニ......。

ブランド各社は一体となって、ファッションの古い考えから、多かれ少なかれ、確実に少しずつ、セクシーさの限界を押し広げようと前進している。一方、声高に肉体の美学に関する動きが主張される中、ランウェイで際立っているのは若くスレンダーな人たちの存在だ:規範にとらわれない自己主張の強い女性像は、若く華奢で34サイズ、圧倒的にシワや白髪が少ない。女性という対象への深い問いかけと、多様性とボディポジティヴィズムの時代に適合することの難しさとが奇妙に混在している。しかし、透明性(トランスペアレンス)を高めることで、この矛盾を克服することができるかもしれない。昨年12月、雑誌「ヴォーグ」の一面を飾った稀有な44サイズのモデル、パロマ・エルセッサーは、コルセット付きのDilara Findikoglu(ディラーラ・フィンディコグルー)のドレスで、その豊かなバストを露わにし、話題を集めた。決して甘くはないコケティッシュな姿だった。

text: Sabrina Pons (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi

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