寒さの中の祈りにも似た......今月の新譜3選。
Culture 2023.01.12
コラボレーションを重ねた最先鋭の音色。
『コンティニュア』/ノサッジ・シング
ケンドリック・ラマーを筆頭に最先鋭のヒップホップに携わってきたサウンドクリエイターによる話題作。トロ・イ・モア、サム・ゲンデル、ジュリアナ・バーウィックと各ジャンルにおける旬のクリエイターの代表といえる豪華なゲスト陣を挙げていくだけでも、いかに力が入っているかがわかるだろう。とはいえ、ここで提示されているのは決して派手なものではなく、ミニマルなエレクトロサウンドやアンビエント感覚のダウンテンポといったクールなビート。スペイシーな広がりを感じさせてくれる緻密に練られた音のディテールは圧倒的だ。
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パンデミックが生んだ奇跡のポップ作品。
『シン・シン・シン』/バーラ・デゼージョ
コロナ禍が世界中の音楽家に与えた打撃は多大だが、一方ではこんなに素晴らしい作品が生まれたということもしっかり記憶しておきたい。隔離生活に辟易した4人の才能が共同生活をし始めたことをきっかけに、多くのミュージシャンが集まって作り上げたブラジル音楽の記念碑的作品。コンテンポラリーなブラジリアンサウンドを構築しながらも、ほどよいヴィンテージテイストに包まれているのが心地よさの秘密。メロディやアレンジが生み出すグルーブはもちろんのこと、メインボーカルのドラ・モレレンバウムの澄んだ歌声に心躍らされるはず。
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シンプルな言葉で綴る、祈るような愛の歌。
『チュージング』/ソフィー・ジェイミソン
またもや新しい輝きを放つ女性シンガーソングライターがロンドンから登場した。愛や希望をテーマに内面と向き合った歌詞を、そっと語りかけるように歌う声の響きが胸に響いてくる。オルタナティブロック風のバンドサウンドから、チェロやピアノといったアコースティックな楽器を使ったポストクラシカル的なアレンジまで、音楽性の幅は広い。シャロン・ヴァン・エッテンやジュリアン・ベイカーといった内省的な世界観を持つ天才たちに匹敵する存在感も味わえる。讃美歌のような荘厳な楽曲などもあり、殺伐とした社会に必要な音楽といえる。
*「フィガロジャポン」2023年2月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto