「棺桶の中のダイアナ妃」撮影スタッフも衝撃を受けた、「ザ・クラウン」最終章のシーンとは?
Culture 2023.01.15
Netflixシリーズの「ザ・クラウン」第6シーズンでは、ダイアナ妃の死が描かれる予定だが、万人受けする内容ではない。
「ウィリアムと僕にとって人生はふたつに分かれています。母と父が現実に存在していた祝福された年月。そしていま、母が亡くなって10年になります。」ハリー王子がダイアナ妃の死から10年後の命日に行ったスピーチから。(ベニス、1985年5月6日) photography: Abaca
1997年8月31日の夜、パリでダイアナ妃とその恋人ドディ・アル・ファイドの人生がひっくり返った。パパラッチの群れから逃げるように車を走らせ、16区にあるアルマ橋の下にあるトンネルの柱のひとつに衝突してしまったのだ。誰もが知る悲劇的な結末は、英国人の心に永遠に傷跡を残すだろう。そして、来年秋に公開予定の「ザ・クラウン」第6シーズンでは、この暗黒のエピソードを取り上げる予定だが、撮影チームも不快感を抱えているようだ。
特に、エリザベス・デビッキ演じるダイアナ妃が死去後、棺に横たわっているシーンは、見る者に衝撃を与えることだろう。「実際、エリザベスは棺に入り、ダイアナ妃のように亡くなった演技をします。視聴者は、死亡宣告を受けたばかりのダイアナ妃に、フランス人神父が最後の儀式を施すのを見ることになります」と、「ザ・クラウン」のチームメンバーが12月20日(火)に『ザ・サン』に語った。
そして、スクリーンに映し出される一連の流れを詳細に説明した。「ドミニク・ウェスト演じるチャールズ皇太子(現チャールズ3世)が部屋に入ってきて、涙を流します。ひどく動揺したチャールズ皇太子は、ダイアナ妃のイヤリングがないことに気がつきます。悲しみに打ちひしがれながら、そのことばかりが気になってしまいます」。この後、皇太子がフランス当局に「ダイアナの気に入っていたあのイヤリングを探せ」と命令する。ダイアナ妃の姉たちも開かれた棺に横たわるダイアナ妃に敬意を表した。
「ウィリアム皇太子とハリー王子は棺の中の亡くなった母親の姿を見たことがないのだから、これを観る必要はないはずだ。英国国民も然りだ」とチームメンバーは述べる一方、別シーンの問題も指摘した。もうひとつの問題とは、生と死の狭間でダイアナ妃が病院に到着するシーンを再現していることだ。「視聴者は、彼女がテーブルの上に横たわり、医師たちが必死で彼女を取り囲む姿を目にすることになります」と、関係者は『ザ・サン』に語った。「このシーンでは本物の外科医を雇っています。また、命を落とした遺体を取り囲む看護師の姿も見えます。外科医の医療ウェアや手袋、ドアなど、いたるところに血痕があります」。
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「上層部は視聴率を取るために手段を選ばない」
撮影に立ち会った人々にとって、それは行き過ぎた行為だった。彼らは、このような動揺を感じさせるシーンに対する国民の怒りを予期し、チームメンバーは、Netflixがこのシーンを削除すべきだと考えている。チームメンバーのひとりは「上層部は視聴率を取るために手段を選びません。撮影中、皆非常に不愉快な思いをしていました。常識を超えた内容ですから放送禁止にすべきです。特にウィリアム皇太子とハリー王子を守り、これ以上動揺させないよう、声を上げるべきだと考えている人が多いのです」とイギリスのタブロイド紙『ザ・サン』に語った。
「ザ・クラウン」第6シーズンでは、母ダイアナ妃の棺の後ろで、父チャールズ皇太子、祖父フィリップ殿下、叔父チャールズ・スペンサーに伴われたウィリアム王子(現ウィリアム皇太子)とハリー王子の葬送行進曲も描かれる予定だ。
Netflix側は、ダイアナ妃の死にまつわるシーンは「最大限の敬意と配慮」をもって撮影したと断言している。ダイアナ妃の友人であるシモーヌ・シモンズの怒りは収まらず、「不愉快極まりない」と述べた。
彼女は「これ以上ひどい内容があるでしょうか。この調子で、彼女の墓を掘り起こしてきたらどうでしょうか。これらのシーンはエンターテイメントではなく、おぞましい内容です」。ダイアナ妃の元ボディーガードであるケン・ウォーフは、ウィリアム皇太子はこのシーンに「嫌悪感」を感じ、チャールズ3世は「愕然とする」と考えている。当面の間、王室はコメントを控えている。いつも通り、「説明しない」「文句を言わない」が信条のようだ。
text: Ségolène Forgar (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi