40代を過ぎると、時間が経つのが早く感じるのはなぜ?

Culture 2023.01.19

2023年、時は高速列車のように過ぎ、私たちは駅のホームで目まぐるしい光景の変化を体感する。なぜ? フランスの神経心理学者と哲学者が解説する。

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時が高速列車のように過ぎ去っていく……なぜ? photography: Getty Images

「時間はなんて早く過ぎるのだろう」。運転免許証の写真を見て、こうつぶやいたことがある人は少なくないだろう。自分たちより年上の人たちはこの言葉を常用し、「すっかり成長しちゃった」なんて皮肉っぽく言うこともある。40代を過ぎると、なぜあっという間に時間が過ぎていくように感じるのだろうか。

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認知機能の老化。

神経心理学者のシルヴィ・ショクロンによれば、1970年代以降、この不思議な現象を解明するために、数多くの科学的研究が行われてきたという(1)。最も注目されたのは認知機能の老化だ。「加齢に伴い、思考や行動、問題解決のスピードが遅くなります。これは、神経細胞を保護する物質のミエリンが、年月を経るごとに機能を低下させ、神経伝達の流れが悪くなることが原因。ひとつひとつのタスクに通常よりも時間がかかるため、結果的に1日にこなすタスクの総数が減ってしまいます。つまり、スケジュールを見たときに、いつものノルマに達していないと、時間の流れが速くなったような印象を受けるのです」

医学哲学者のマエル・ルモワンヌは、「1分1秒の有用性を競うような現在の労働環境は、新しい世代にこの矛盾を助長するだけです」と指摘する(2)。

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体内時計が狂うと……。

また、加齢に伴う光量不足で、体内時計が乱れ、睡眠・覚醒のサイクルが変化し、その結果、時間の認識が変化することもある。「地下、特に洞窟の中で行われた科学実験では、時間や日の概念がない暗闇の中に長時間いると、時間的な基準点が失われ、睡眠の非同期性が高まることが確認されています」とシルヴィ・ショクロンは説明する。

「また、身体や脳は睡眠不足に敏感に反応します。加齢とともに日中の睡眠欲が顕著になり、その欲に過度に負けて昼寝をしてしまうと、一日の終わりがより早く感じられるのです。神経変性疾患のように、この認識が極端に歪むと、生体リズムだけでなく、満腹感や一般的な行動にも影響を及ぼします。高齢の被験者は、今年が何年なのかがわからなくなることもあります」と神経心理学者のシルヴィ・ショクロンは語る。

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思い出を振り返る。

「もちろん、時空間認識の加速(あるいは減速)は主観的なものであることに変わりはない」と専門家は主張する。「すべては、活動をする時の心境と、それに付随する感情次第なのです。したがって、不安な人は毎日がハイスピードで過ぎていき、憂鬱や退屈な傾向がある人はより時間が過ぎるのが遅く感じられるのです」。哲学者のマエル・ルモワンヌは、「私たちの注意を引く出来事がまれであればあるほど、時間の感覚が鈍ります」と付け加える。

「なぜそう感じるのかを理解するためには、当然のことながら、死と私たちを隔てる時間にも目を向けなければなりません」とルモワン。「高齢の被験者は、余命いくばくもないことを実感し、切迫感や不安感を抱え、必然的に時間認識が加速します」と要約する。

特に時の流れに焦りを感じる場合、どのようにブレーキをかければいいのだろうか? 専門家が説明するように、私たちの時間に対する認識は、一定期間内に作成した経験則に基づいている。神経心理学者のシルヴィ・ショクロンは、「自分の行動とそれが残した記憶にもっと意味を持たせるため、思い出を振り返りましょう。書くことは、その瞬間を投影し、それを生き、そして思い出すのに良い方法です。この瞬間を意識的に生きれば生きるほど、振り返ったときに長く感じられるようになるのです」と提案する。

(1) シルヴィ・ショクロン著『Une journée dans le cerveau d'Anna』(アイロールズ社刊)。
(2) マエル・ルモワン著『Petite philosophie des rides』(ハーマン社刊)。

text: Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi

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