新しい日常は美術館から始まる......春待ついま、行きたい美術館4選。

Culture 2023.02.23

経済と生態系の因果関係を探求する、活動の軌跡。

フェムケ・ヘレフラーフェン『Corrupted Air|腐敗した空気』

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アムステルダムを拠点とするフェムケ・ヘレフラーフェンは、現代の金融技術やインフラに関する抽象的なデータから、それらが持つ意味や生態学的影響などを検証し、多様な表現方法により独自のイメージを生み出す気鋭の作家だ。本展では、大災害に投機する金融商品カタストロフィボンド(大災害債)の調査研究をもとに、絶滅した生物のデジタルモデル3体が過去の生態系の大惨事を証言し、人間によって引き起こされようとしている「6度目の大絶滅」について議論する演劇的インスタレーション『Corrupted AirーAct VI(腐敗した空気ーー第6幕)』(2019年)を展開。さらに現在進行中のプロジェクトの構想資料なども展示され、幅広い問題を探求する彼女の活動を日本で初めて紹介する機会となる。

フェムケ・ヘレフラーフェン『Corrupted Air|腐敗した空気』
会期:開催中〜3/21 
会場:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(京都・二条城前) 
営)11:00〜19:00 
休)月
入場無料

●問い合わせ先:
tel:075-253-1509 
https://gallery.kcua.ac.jp

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ケア活動を巡る、歪な関係性を編み直す。

『ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術-いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?-』

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他者や家族の世話や介護といったケア労働とその担い手を巡る問題は、高齢化が進み、女性の経済的自立を促すべき日本社会にとって緊急課題だが、いまだに政策や制度に反映されていない。不均衡な負荷のバランスは家父長的な社会構造のままであり、特に家族のケアは当然のごとく女性の役割とされてきた。本展では、アートの表現を通して、社会とケア、その担い手の関係をほぐし編み直す。写真家・石内都は同性の視点で亡母の遺品に向き合い、二藤建人は「重力」や「愛」を足裏で感じる装置で、互いの関係性を可視化する。マリア・ファーラは、「見えない存在」として社会を支えてきた移民労働者の女性を描く。ヤングケアラーの存在も明るみにされてきたいま、若い世代にも見てほしい展覧会だ。

『ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術-いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?-』
会期:開催中〜5/7
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー(茨城・水戸) 
営)10:00〜18:00 
休)月
料)一般¥900

●問い合わせ先
tel:029-227-8111
www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5188.html

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自然界のエネルギーを取り込む都市空間。

『ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築』

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1994年にロンドンで設立されたデザイン集団、ヘザウィック・スタジオ。誰も思いつかなかった斬新なアイデアであふれたデザインは、都市計画のような大規模プロジェクトですらヒューマンスケールが基準となるという信念に基づいている。本展ではシンガポール、上海、香港など、世界各地で展開される革新的なプロジェクトを「彫刻的空間を体感する」「記憶を未来へつなげる」など6つのテーマで紹介。なかでも、ニューヨークのハドソン川に出現した公園と野外劇場を兼ねた『リトル・アイランド』や巨大なタンポポの綿毛のような『上海万博イギリス館』など、都市環境に自然がもたらす役割を検証し、自然界の新陳代謝とそのエネルギーをふんだんに都市空間に取り込んだプロジェクトに注目したい。

『ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築』
会期:3/17〜6/4
会場:東京シティビュー(東京・六本木) 
営)10:00〜22:00 
無休
料)一般¥2,000

●問い合わせ先:
050-5541-8600(ハローダイヤル) 
www.mori.art.museum

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儚い日常の尊さに思いを巡らせる佇まい。

第16回 shiseido art egg YU SORA展『もずく、たまご』

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新進作家を応援する公募プログラム「shiseido art egg」に選出された3人(岡ともみ、YU SORA、佐藤壮馬)の個展を連続して開催。YUは白い布と黒い糸を使った刺繍の平面作品と、家具やカーテンなど実物大の立体作品を組み合わせたインスタレーションを展開する。ギャラリー空間に部屋を創り、些細な日常の姿や経験を色のない黒い線だけで描き出す。鑑賞者は、そこに自身の日常を重ね、その尊さに思いを巡らせることとなる。コロナ禍や戦争、災害による不安が続き、何げなく暮らす日常が儚く崩れてしまう脆いものであることを知った私たちは、部屋に転がるレシートや本、宅配の段ボールの佇まいの中に「新しい日常」の輪郭をなぞり、普通に過ごす日々の大切さに気付かされるだろう。

第16回 shiseido art egg YU SORA展『もずく、たまご』
会期:3/7〜4/9 
会場:資生堂ギャラリー(東京・銀座) 
営)11:00〜19:00(日、祝〜18:00) 
休)月
入場無料

●問い合わせ先:
tel:03-3572-3901 
https://gallery.shiseido.com

*「フィガロジャポン」2023年4月号より抜粋

text: Chie Sumiyosh

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