イヴ・サンローランとピエール・ベルジェが暮らしたアパルトマン、販売中。
Culture 2023.03.15
アイコニックなカップルが暮らした場所。さまざまな作品や感情が生まれた場所。ヴォーバン広場にある広いアパルトマンはふたりの愛の巣だった。現在、この住居が売りに出されている。
ヴォーバン広場のイヴ・サンローランとピエール・ベルジェのアパルトマンが690万ユーロで売りに出された。photography: Raphael Metivet
アイコニックなカップル、イヴ・サンローランとピエール・ベルジェがかつて暮らしていたアパルトマンは、貴族の邸宅だった建物の3階にある。天井高が5メートルもある300㎡の空間は明るい光がさしこみ、モールディングや銅色の寄木細工の床が美しい。天井には青空の絵が広がり、天使のいないルネサンス絵画のようだ。なかでもひときわ見事なのは180㎡のプライベートガーデンで、生い茂る松や栗の木が無遠慮な視線をさえぎってくれる。このくつろぎの空間が売りに出された。不動産会社クレツ社による販売価格は690万ユーロ。イヴ・サンローランとピエール・ベルジェがこの家に引っ越したのは1961年。ブランドとしてのサンローランにとってもこの年は特別な意味合いを持つ。
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重要な年
1961年にイヴ・サンローランとピエール・ベルジェは、サンローランが好きなセーヌ川左岸にあるアパルトマンに引っ越した。同年(正確には12月4日)にオートクチュールメゾン「イヴ・サンローラン」が誕生している。メゾンの設立に必要な資金は、ピエール・ベルジェがアメリカの実業家J.マック・ロビンソンからパリのファッション産業への初投資の合意をとりつけて調達した。あのYSLのロゴをデザインしたのは、グラフィックデザイナーのカッサンドル。3つのイニシャルがからみあい、エレガンスとモダンを象徴するロゴは若きデザイナーをイメージして作られたものだ。ブランドのオートクチュールドレス第1号は「00001」のナンバリング入りで、アプレゲール期の「カフェ・ソサエティー」の中心人物のひとり、パトリシア・ロペス=ウィルシャーに届けられた。
1999年、バックステージで服の最終チェックをおこなうイヴ・サンローランとピエール・ベルジェ。photography: Getty Images
当時のアトリエは、ふたりの新居から3キロ離れた8区のジャン・グジョン通り11番地にあった。ブランドの成功を喜びながらふたりがタバコを片手にアトリエから新居に戻る姿が目に浮かぶようだ。もしかしたら、このアパルトマンのなかにはまだ創造力が宿っているかもしれない。もしかしたら、リビングでスケッチの習作を破る音がまだかすかに聞こえてくるかもしれない。もしかしたら、クリエイターの魂は、暮らした場所にいつまでも漂っているかもしれない。
どの窓からもエッフェル塔が見えるこの住まいをイヴ・サンローランは1970年に離れ、バビロン通り(パリ7区)にある600㎡の庭つきメゾネットに引っ越した。
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【写真】イヴ・サンローランとピエール・ベルジェが住んだヴォーバン広場のアパルトマン
パリ7区にある300㎡近い広さのアパルトマンだ。
photography: Raphael Métivet
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どの部屋からもエッフェル塔とアンヴァリッドのドームが見える。
photography: Raphael Métivet
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広々とした明るい空間。
photography: Raphael Métivet
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パリの中心とは思えないような緑のオアシス、プライベートガーデンを望むダイニングルーム。
photography: Raphael Métivet
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ダイニングルーム。
photography: Raphael Métivet
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180㎡の緑のガーデンに包まれたテラス。
photography: Raphael Métivet
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リビングルームの天井高は5メートル。
photography: Raphael Métivet
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リビングルーム。
photography: Raphael Métivet
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らせん階段でベッドルームへ。
photography: Raphael Métivet
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赤大理石の床が特徴的なキッチン。
photography: Raphael Métivet
text: Sarah Renard (madame.lefigaro.fr)