トランプ元大統領、不倫疑惑の"ポルノ女優"の素顔とは?
Culture 2023.04.03
アメリカのドナルド・トランプ前大統領は、3月30日(木)、ニューヨークの検察官によって起訴された。問題になっているのは、2016年に、不倫関係にあったとされるポルノ女優、ストーミー・ダニエルズに対してお金を支払った件だ。
ドナルド・トランプとの性的関係が疑われる前年の2005年、AVNアワード(アメリカのアダルト専門誌AVNが毎年開催している賞)に登場したストーミー・ダニエルズ。photography: Getty Images
『ウォール・ストリート・ジャーナル』の暴露以来、彼女はメラニア・トランプにとって、ドナルド・トランプ前大統領に次ぐ最悪の敵となっている。2018年1月12日、アメリカの日刊紙は、ストーミー・ダニエルズというポルノ女優が、2006年にドナルド・トランプとの性的関係を黙秘するため、2016年の選挙の直前に13万ドル(約1725万円)を支払われていたことを報じた。
ドナルド・トランプ前大統領がメラニア夫人と結婚して1年が経ち、彼女が息子のバロンを妊娠していたときのことである。このスキャンダルは、それ以来、アメリカのマスコミの話題の的となっている。長い法廷闘争の末、ニューヨークの大陪審は3月30日(木)、ストーミー・ダニエルズ事件でドナルド・トランプを起訴することを決定した。アメリカの元大統領としては初めてのことである。では、彼を陥れた謎のポルノスターはどんな人物?
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嵐のようなステファニー・クリフォード
まず、ストーミー・ダニエルズという名前は、明らかに芸名である。いまどき天気に関係した名前を現実に持つことができるのは、キム・カーダシアンの子どもノース・ウェストくらいだろう。“ストーミー(嵐のような、を意味する)”は、1979年に米ルイジアナ州バトンルージュで生まれたステファニー・クリフォードの職業上の愛称である。17歳の時に地元でストリップを始めたものの、すぐにポルノ業界でのキャリアを希望してカリフォルニアに移住した。2000年代初頭、米テレビ局HBOは「Real Sex(リアル・セックス)」というテレビシリーズで彼女をテレビ初出演させた。さらに2002年から、ポルノ映画制作会社ウィキッド・ピクチャーズは、「ウィキッド・ガールズ」として彼女を選出した。彼女が最も輝いたのは、2004年の「ベスト・ライジング・スター」を含む14のAVNアワードを受賞し、2014年にポルノ業界の殿堂、AVN殿堂(Adult Video News Hall of Fame)に選出された時期だ。
ちなみに、ストーミー・ダニエルズは、映画監督ジャド・アパトーの2005年のコメディ映画『40歳の童貞男』で自分自身を演じ、マルーン5の2007年のPV「ウェイク・アップ・コール」でポールダンサーを演じている。そんな彼女が、未来のアメリカ大統領で当時は“かつらをつけた億万長者”として知られていたドナルド・トランプ前大統領と今問題になっている関係を持ったとされるのは、正確には2006年のことだった。
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「ある体位のみ」
ドナルド・トランプ前大統領と女優本人は事実を否定しているものの、前者は既得権益があり、後者はお金をもらったと噂されており、問題があるとされている。2011年に米雑誌「In Touch(インタッチ)」に掲載されたストーミー・ダニエルズのインタビューでは、2006年7月にレイクタホのゴルフトーナメントでドナルド・トランプ前大統領と出会ったことを説明し、ふたりの性的関係は「クレイジーなものではない」と表現している。「ある体位のみで、彼の年齢の男性がよく希望するものだった」と、彼女は同誌のコラムで認めている。また、「彼は私に、私は娘イヴァンカのように、美しくて、賢くて、過小評価されてはいけない女性だと言ってくれました」と述べた。
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エロティックにかわす
2018年1月30日、ニューヨークで行われた「ジミー・キンメル・ライブ!」の撮影現場でのストーミー・ダニエルズ。photography: Getty Images
しかし、ここからが本題。2018年1月10日、ドナルド・トランプ前大統領の弁護士、マイケル・コーエン元顧問弁護士が発表した声明は、すべてを疑問視するものだ。「私とドナルド・トランプ氏との関係は、数回の公の場への登場にとどまり、それ以上のことはありません。私が口止め料を受け取ったという噂は完全に虚偽です。私がドナルド・トランプ氏と性的な関係を持っているというなら、新聞ではなく、私の本で読んでください」とストーミー・ダニエルズはコメントしている。
2018年1月30日の「ジミー・キンメル・ライブ!」にゲスト出演を承諾すると、ストーミー・ダニエルズはホストの質問をすべて巧みにかわした。前述のドナルド・トランプ前大統領の弁護士からの手紙に本当にサインしたのかと問われた彼女は、天使のように「知らないわ、そうでしょ?」と答えた。「名前がロナルド・ランプと韻を踏んでいる男と関係を持ったか?」という質問したいしては、「お好みの呼び方で呼ぶわよ、ベイビー。契約は契約なの」と回答した。
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脅迫を受ける
同年2月、マイケル・コーエン元顧問弁護士が、理由を述べず、ステファニー・クリフォード(通称:ストーミー・ダニエルズ)の口座に支払ったことを認めるとすべてが加速する。一方、彼女側としては、元ポルノ女優のストーミー・ダニエルズが1カ月後の2018年3月6日、当時のアメリカ大統領を相手にロサンゼルスで訴状を提出した。その狙いは、彼女が交わした守秘義務条項をドナルド・トランプ前大統領側が無効にしようとしたためだ。訴状によれば、ドナルド・トランプ前大統領本人が署名していないため、秘密保持契約は無効となるという。
数週間後の3月25日、CBSのテレビインタビューで、ストーミー・ダニエルズはこの疑惑を追及し、将来の米国大統領となる男性との関係を黙秘するよう「脅迫」されたと主張した。当初、ドナルド・トランプ前大統領は、この金銭契約の存在を知っていたことを否定していた。しかし2018年5月2日、彼の弁護士のもうひとり、著名なルディ・ジュリアーニが、マイケル・コーエン元顧問弁護士に払い戻ししたと主張し、彼を否定した。そして、新たな打撃は、2018年8月21日に訪れた。マンハッタン連邦判事ウィリアム・ポーリーから質問を受けたドナルド・トランプ前大統領の元弁護士は、ドナルド・トランプと関係を持ったと主張するふたりの女性(ストーミー・ダニエルズとカレン・マクドゥーガル)に対し、2016年の大統領選挙に影響を考慮して候補者の要請により、“沈黙”と引き換えに13万ドル(約1725万円)と15万ドル(約1996万円)を確かに支払っていた、と指摘した。
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大統領が犯罪を犯した可能性をマスコミの前でほのめかすマイケル・コーエン元顧問弁護士の発言は、すぐに大統領にとって非常に深刻な事態であると評された。支払いを行ったことで、マイケル・コーエン元顧問弁護士は2018年12月に3年の懲役刑を言い渡される予定だ。
それ以来、ストーミー・ダニエルズの支払いに関する捜査は止まることを知らない。現在は、ニューヨーク州マンハッタン検事のアルビン・ブラッグ(民主党選出)の庇護のもとで行われている。ドナルド・トランプ前大統領は、2月に発表した声明の中で、「この調査は2024年の大統領選挙で共和党から立候補した彼の地位を落とすための試みだ」と主張したと、『ニューヨーク・タイムズ』紙は報じている。ホワイトハウスを舞台にしたドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」のエピソードにふさわしい展開である。
text: Marion Galy-Ramounot (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi