海外で話題沸騰中!「うなぎパイ」のユニークな本社ビル。

Culture 2023.04.09

静岡県浜松市の銘菓として知られ、さっくりとした食感が人気の「うなぎパイ」。その販売を手がける春華堂の本社施設が、海外でちょっとした話題になっている。

 

 

施設は「スイーツバンク」と呼ばれ、住宅街と田畑が入り交じる浜松市中区ののどかなエリアでユニークな輝きを放っている。巨大化したちゃぶ台とテーブルの下にガラス張りの建物を押し込んだような外観で、屋根の上や窓際などには、特大サイズのショッピングバッグや伝票、プレゼントの箱に新聞紙などが並ぶ。まるで誰かの家の一角をそのまま外に放り出したような、雑然さとわくわく感が同居するデザインだ。

施設内には本社機能だけでなく、限定商品が手に入る春華堂のショップや、名物のブリオッシュ食パンを毎日焼き上げるカフェ&ベーカリー「とらとふうせん」が入居する。さらに、コミュニティスペースの「ツノがたつ」や銀行などを備え、来場者を楽しませる複合施設となっている。

 

建物横に設置されている巨大なショッピングバックは施設内のギフトショップを、ブタの貯金箱のオブジェは銀行をイメージしているという。

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ちゃぶ台の屋根には実用性も。

イギリスの建築・デザインサイト「デジーン」は今年3月、「遊び心」のあるデザインとしてこの施設を取り上げている。記事は、設計を手がけた日建設計の説明をもとに、その機能性にも注目。建物をテーブルの下に設けることで突き出した庇が日光を遮るほか、雨の日に濡れる心配もなく、快適性を提供していると紹介している。

建築関連のニュースを報じるアーキ・デイリーは、通常の13倍という途方もないスケールでデザインされた家具こそが、この施設の視覚上の主役だと捉えたようだ。本社部分は目立たないようディテールを抑え、家具の「背景」に徹するよう意図されていると紹介。こうして完成した本社施設は人目を惹く外観となっており、ソーシャルメディア時代の広告塔としての役割も果たしている。

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あらぬ誤解を招いた「夜のお菓子」のキャッチフレーズ。

 

 

春華堂のうなぎパイといえば、「夜のお菓子」というキャッチフレーズが有名だ。精力増強をイメージさせるうなぎと相まってあらぬ誤解を招きがちだが、春華堂は「勝手な憶測が一人歩きしたキャッチフレーズ」だと嘆いている。

同社のウェブサイトによると、うなぎパイが生まれた1960年代、浜松の夜の繁華街は「全国屈指と呼ばれ賑わっていた」という。そのため「精力増強のうなぎと結びつけてあらぬ解釈をしてしまった人も多かった」そうだ。

しかし実際のところ、このキャッチフレーズはより温かみのある情景を意図したものだった。同社二代目社長の山崎幸一氏は、忙しい家族がそろう夕食のだんらんの時間を大切に考え、その時間帯を象徴するために「夜のお菓子」という謳い文句を付けたのだという。

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ちゃぶ台に込められた「家族団らん」の精神。

スイーツバンクのユニークな意匠も、そんな精神を反映している。施設の施設コンセプト企画から設計・施工までに携わった丹青社は、この施設が「『家族団らん』を象徴する、地域のシンボルとなる文化的価値創造拠点」だと説明。巨大なスケールで来場者たちを驚かせるテーブルやちゃぶ台には、家族団らんのシンボルとしての役割が込められているという。「世の中にないようなオフィス」を創造すべく、地域とのつながりを生み出す春華堂のあり方を模索したとのことだ。

 

 

2021年に完成したスイーツバンクは、いまでも次々に海外デザインサイトに取り上げられ、ユーモア精神にあふれた建築の試みとして話題を呼んでいる。

text: Yamato Aoba

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