嫉妬の感情はどこから来るの?

Culture 2023.04.25

友情においても恋愛においても、慢性的な嫉妬は毒でしかない。フランスの「マダム・フィガロ」の取材に対し、精神科医のジョゼフ・アゴスティニがその原因、動機、そしてどのようにしたら嫉妬から抜け出せるのか、それとも抜け出せないのか……について説明してくれた。

230320-jealousy-mechanism-01.jpgやきもち焼きは哀れなのか。photography: Getty Images

多かれ少なかれ、私たちはやきもちを焼く。しかし過剰な嫉妬、ましてやそれが病的な場合、恋愛関係だけでなく友情や家族関係も損なう。さらにその人の人格までも破滅してしまうことがある。

そんな時、嫉妬心を乗り越えるには、冷静に物事を見つめることが必要で(それには人間としての成熟度が求められるのだが)、それを通して過度な被害妄想から抜け出せる。結果、損はしないはずだ。やきもちは何の役にも立たないし、嫉妬深い人になりたいと誰も望んでいないだろうから。

臨床精神科医、精神分析学者であり、ラブソングの効能についての著書(1)があるジョゼフ・アゴスティニは、やきもちをテーマとした芝居を準備中だそうだ。彼が嫉妬のメカニズムを説明してくれた。

---fadeinpager---

赤ん坊の反射的行動。

「嫉妬とは、人間が持つ原始的な心のメカニズムを刺激するものです。小さな赤ちゃんは母親のおっぱいを独占しようとします。赤ちゃんにとって周囲の環境は過酷なものなので、極端なことを言えば、鏡に映る自分の姿さえ、赤ちゃんにとって耐え難い存在になり得るのです。母親に説明してもらい、敵ではないと納得し、やっと安心します。愛を注いでくれる人との出会いがなければ、赤ん坊は裸のまま狼がうろつく森に独り投げ出されたのと同じです。赤ちゃんが母親にしがみついたり、他人を警戒したりするのは、この超依存性に起因しているのです。それは人生のさまざまな段階で嫉妬として現われるようになります」

では、嫉妬心と寛大さは相入れないものなのだろうか?

「寛大さが生まれてくるのはもう少し後のことです。子どもが他者に与えることを覚えた時、すなわち自分の内側と外側を区別する“鎧”が身についた時です。誰も自分の奥にあるものを奪うことはできない。そうなると、外の世界は、表面で揺らいでいる世界、現れては消える世界でしかなく、少しの間だけ受け入れればよいものになるのです。他者は自分に属すものではないと気付くのです。

私たちは失うことを恐れなくなった時、つまり極度の警戒心を身につけた原初の段階を乗りこえた時、惜しみなく与えることができるようになるのです。そこでやっと与えること、感謝すること、誠実な気持ちを持つことが心の多くの部分を占めるようになります。

しかし、嫉妬を抱く人が、対抗意識を持ったままの段階に留まり、感謝、分かち合い、他者と認め合う関係を築けないでいる限り、その人は現実から遊離し、自分の妄想の世界に陥ってしまう可能性があります。“驚き”や“意外性”を最大の敵だと認識し、排除し、最終的にはパラノイアの中に自分を閉じ込めてしまう可能性があります」

---fadeinpager---

極端なエゴ。

とは言え、嫉妬深い人は少なからず存在する。ならば彼らを理解してみることにしよう。

「大人になっても嫉妬心が強い人の場合、極端な傲慢とセットになっていることが多々あります。相手を所有してもいいかのように振る舞います。“好きだからこそ独占したい”という言葉は、まるで嫉妬が正当かのように聞こえます」

しかし、精神的成熟度という観点から見るとそれは逆だ。「本来ならば愛しているほど、愛があるからこそ、原始的所有欲、隷属化、絶対的権力などのメカニズムを乗り越えようとするはずです」。そこが転換点だ。「嫉妬深い人は惨めな存在なのです。立場をひねくり回しながら、自分の欲望を正当化し、愛する人を監視するのは当然だと思ってしまうからです。おっぱいを取られるのを恐れる赤ん坊に戻ってしまっているのです。イギリスの小児科医ウィニコットは“赤ちゃん陛下”と言っていましたね。ただ、大人がそれを演じると、王冠のない、歳をとった子どもに過ぎなくなってしまいます。ひとりで成長し、ひとりで生き、自分とは違う他者と出会い、道が交差することがあっても、完全に一緒に進み続けることは決してない。この人生のルールに適応できず、成長もできなかった大人なのです」

---fadeinpager---

破滅する世界でしかない。

自分が進む道を選べるのは自分だけ。「寛大で柔軟な心を持ち、執着せずに他者を認める。こうした態度は明るい未来を運んでくれます。なぜならそれらはその時しか存在しない一瞬、はかなさ、束の間のひととき、つまり命の動きそのものを受け入れているからです。3分間のラブソングのように。その瞬間をつかみ、その甘さを味わうのです」

ラブソングは気分を向上させてくれるし、慰めてくれることもある。反対に「嫉妬の世界はすべてをストップさせた状態です。何も変わらないままであってほしい。常に自分だけを見ていてほしい。すべてを支配し管理していたい。そんな硬直した世界に自分を導いてしまいます。それは操り人形の世界、空想の中にしか存在しない世界です。人間が生きる本当の姿とは完全にずれているので、悲しい結末しか生みません。嫉妬深い人は残念な人です」。言い当てている。

(1)Daniela LumbrosoとJoseph Agostini著、『Les chansons d’amour guérissent le cœur du monde (訳:ラブソングは世界のハートを癒してくれる)』、Robert Laffont社刊

Valery de Buchet (madame.lefigaro.fr) translation: Hana Okazaki, Hide Okazaki

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

Business with Attitude
Figaromarche
あの人のウォッチ&ジュエリーの物語
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories