マルフォイから渋いイケオジへ! トム・フェルトン、自伝を執筆。
Culture 2023.04.20
エマ・ワトソンとの関係、失敗したと思った『ハリー・ポッター』シリーズのオーディション、有名になってからのこと......ドラコ・マルフォイ役を演じた俳優が自伝『Beyond the wand』のフランス語翻訳版発売を記念して、フランス版マダムフィガロの取材に応じた。
ドラコ・マルフォイ役を演じたトム・フェルトンの自伝『Beyond the wand』のフランス語翻訳版が発売された。
「1時間前に知った。すごいね」とトム・フェルトンがはしゃいでいるのはワーナー・ブラザースとHBOが「ハリー・ポッター」テレビドラマシリーズ制作を決定したというニュースのこと。12歳のトム・フェルトンが初めてホグワーツの門をくぐり、成功への道を歩み始めたのはもうはるか昔のことのように思える。自伝『Beyond the wand』のフランス語翻訳版が2023年4月12日に発売された。ドラコ・マルフォイを演じた俳優は子役時代のこと、ハリー・ポッターのオーディションに落ちた(と思った)こと、ずる賢い「スリザリン」寮生を初めて演じた時のことを回想している。また、「ソウルメイト」であるエマ・ワトソンとの関係や、リハビリ施設の入退院を繰り返した人生で最悪な時期についても語っている。
20年もの間書きためていたエピゾードには「本当のトム」が詰まっている。有名になって道を踏み外すこともあったが、もう自分を見失うことはない。プラチナブロンドのブリーチ髪と訣別した俳優は、ロン・ウィーズリーを演じていたルパート・グリントのご近所さん。2匹の犬ウィローとフォレストとのんびり暮らしている。俳優は辞めたわけではなく、最新主演作はアメリカの女性考古学者の先駆者のひとり、アン・アクステル・モリスの生涯を描いた長編映画『Canyon del Muerto』だ。制作にも参加している。トム・フェルトンにとって、映画の魔法はまだ終わっていない。
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波乱万丈のオーディション
--子役としてデビューしたのは?
初めての映画出演は7歳のときだった。その年齢だと、学校に行かない口実を探しているだけだよね。『ハリー・ポッター』の撮影でも僕たちは楽しんでいる子どもに過ぎなかった。大した才能は必要なかった。演技に気を配るようになったのは、何年も経ってからだ。
人生で最悪のオーディションだったが、最高のオーディションであったかもしれない。
トム・フェルトン
--本当の家族はマルフォイ家とは全く違うと自伝にあるが?
ドラコ・マルフォイの父親は最低な親だし、母親もひどい。それにひとりっ子だ。自分には兄が3人いる。両親も愛情を注いでくれ、成長する過程でいろいろなことに興味をもつたびにサポートしてくれた。アイスホッケーの選手になりたいと思ったり、バイオリニストになりたいと思ったり。俳優はその中のひとつに過ぎなかったが、両親はいつものように応援してくれた。まさかこういう結果になるとはその時思わなかったけれど。
--12歳の時に受けたハリー・ポッターのオーディションは予想外の展開だったとか......
最初のオーディションの時だった。イギリスに住む子どもなら誰でもオーディションに応募できた。99%の応募者は原作を読んでいて、内容を熟知していた。みんな並ばせられてひとりひとり、原作のどの部分をスクリーンで見たいと思っているのか言わせられた。自分の番が回ってきたとき、「まずい、原作を読んだことすらない」と思い、隣の子がグリンゴッツの話をしていたので同じ答えを言い、「グリンゴッツたちが空を飛ぶのを早く見たいです」と付け加えた(グリンゴッツは魔法銀行の名前)。コロンバス監督は僕が口から出まかせを言っていることを見抜き、「この子ならマルフォイ役にいいかも」と思ったそうだ。人生で最悪のオーディションだったが、最高のオーディションであったかもしれない。
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受け継がれるもの
--「ハリー・ポッター」の原作に対する認識はその後変化した?
ハリー・ポッターの1巻目が出た時、あんなのダサいと思っていた。階段の下に住んでいる魔法使いの少年の話なんてあまり興味がなかった。でももちろん、役が決まってからすぐに読んだ。特に『ハリー・ポッターと秘密の部屋』で読書が好きになり、その後全巻読破した。
映画界のレジェンドとは知らなかったが、僕たちを大人扱いしてくれた
トム・フェルトン
--自伝で伝達について多く語っているが、ハリー・ポッター映画の撮影で共演した経験豊富な俳優たちから学んだことは?
ルシウス・マルフォイを演じたジェイソン・アイザックスは、最高に親切な人なのに、一瞬で悪役になりきるのを見てぞっとしたね。でも彼のことを尊敬していた。どの俳優も若手やスタッフに優しく接していたのも素晴らしいと思った。彼らが映画界のレジェンドとは知らなかったが、僕たちを大人扱いしてくれて、スタッフとも仲良く接するのを目にしたのは、とても良いお手本となった。
--いまでも連絡を取り合っているキャストは?
グリフィンドールも含めて全員と。(ウィーズリー家の双子を演じた)フェルプスの双子とはよくゴルフに行く。ロン・ウィーズリー役のルパート・グリントは、僕の家のすぐ近くに住んでいる。エマ・ワトソンには時間が許せばすぐに会いに行くし、ダニエル・ラドクリフとはニューヨークで会った。WhatsAppでグループを作っていて、みんなで連絡を取りあっている。
エマとはいまでも大の仲良しだ
--エマ・ワトソンとはどのように仲良くなって、どのように進展した?
撮影が始まったとき彼女は9歳で、僕は12歳だった。この頃だとかなりの年齢差だ。僕には兄が3人いたので余計に大人ぶっていた。ただ、キャストのみんなといて、エマと僕がとても似ていたのはユーモアのセンスだった。いまでも大の仲良しだ。会いたい時にいつも会えるというわけではないが、会ったり話したりする機会があると、とても楽しい。
エマ・ワトソンのいいところは、気前のよさとユーモアのセンス
トム・フェルトン
--エマのどんなところを尊敬している?
驚くほど頭がいい。心が広くて大変な才能がある。ハーマイオニーをあんな風に演じられる人は他にいなかったと思う。その後、彼女が演じた役柄もすべて素晴らしかった。でもなによりも、彼女のいいところは気前のよさとユーモアのセンスだ。
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地に足がつく
--ハリー・ポッターは世界的なヒットとなり、その人気はますます高まったと自伝にもあるが、ずっと有名人として過ごした気持ちは?
対処できる範囲で対処するしかない。僕がラッキーなのは髪がプラチナブロンドでなくなればそれほど目立たなくなることだ。自分が有名人なんていまじゃ自覚ないし、しょっちゅうそのことを忘れる。子どもたちからチラチラ見られると、なにか悪いことをしたかなって思って、それからああ、僕のことがわかったのかと悟る。友人や家族は僕のキャリアに興味がないので楽だ。犬も2匹飼っているけれど、もちろん犬も僕の仕事に興味なんかない(笑)。
自分が有名人だなんていまじゃ自覚ない
トム・フェルトン
--自伝では精神衛生の話に多くのページが割かれているが、それはなぜ?
自伝の内容は、他の話も含めてだいぶ前に書いたものだ。いつの日か他の人に読まれるなんて思っていなかった。でもこの部分を入れることにこだわった。自分の身に起きたことだからだ。正直であることが大切だと思った。イギリスでのこの自伝への反響を見て、自分が間違っていなかったと思った。若い人たちには、自分の葛藤を周囲と話すように勧めている。自分自身、そうすることでとても助けられたから。
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カメラの後ろで
--最近、初めて映画制作を体験したそうだが?
書籍でもアニメでも短編映画でも、お話というものが大好きだ。それにカメラにはずっと興味があった。オタクと言っていいぐらい。俳優として出演しながらカメラの後ろにも回るという初体験をした。そして思った以上にカメラの後ろではいろいろなことが起きていて、ある種のショックを受けた。でもとても楽しい体験だったし、映画の公開が待ち遠しい。
カメラの後ろではある種のショックを受けた
トム・フェルトン
--ハリー・ポッターの撮影が終了した時の気持ちは?
最後の2作品を1本の長編として一気に撮影したので大変で、みんなへとへとだった。でも、この壮大な物語の最後を撮ることにワクワクした。もうこれでみんなが集まることはないということは頭に浮かばなかった。最終日にはもうみんな別々のスケジュールが入っていた。半ば自分たちの家のようだった撮影現場をもう目にすることができないことに胸が痛んだ。いまや当時の小道具はロンドンのハリー・ポッター・スタジオにある。すごい人気だね。2週間前に行ってきた。世界中からたくさんの家族連れが訪れるのを目にしたよ。僕にとってハリー・ポッターの体験はまだ終わっていない。
(1) 『Par-delà la magie, confessions, d'un sorcier』、Tom Felton、2023年4月12日発行、出版社editions Leduc、392頁、19.90ユーロ
text: Chloé Friedmann (madame.lefigaro.fr)