過激なSNS投稿、整形疑惑......挑発を続けるマドンナのメッセージとは?

Culture 2023.05.22

INTERVIEW – マドンナのワールドツアーのチケットが好評発売中だ。マドンナ本の著者、ビリー・ロビンソンが歌手の行動を分析し、そこに隠されたメッセージを読み解く。

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デビュー40年周年を迎え、マドンナの記念ワールドツアーが近々開始する。パリ公演は11月12日、13日、19日、アコール・アリーナで開催される。64歳の歌手はSNS投稿に積極的だが、動画でパーティードラッグを吸ったり、下着姿を披露したり、ゲイのふりをしたりでその度に批判や嘲笑を集めている。カナダ人のビリー・ロビンソンは長年のマドンナファンだ。彼女に捧げた初のフランス語サイト、LaMadonnathequeを始めたほか、2018年にはマドンナ本『Madonna en 30 secondes(原題訳:30秒で語るマドンナ)』をケベックの出版社、ユルチュビーズから出した。戦略的な人物と著者が評するこの歌手が発信するメッセージはどんなものなのか、著者にインタビュー。

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ーーマドンナのこれまでの歩みをどう見ている?

マドンナは文句なしにポップスの女王だし、今後もその地位は不動だと思う。年取ることを拒んでいると批判されるが、いつまでも若々しくいたいのだろう。そこには微妙な違いがある。彼女は自分の子どもたちやスタッフら、常に若い人たちに囲まれてきたし、2023年になってもその状況に変わりない。マドンナの強いパワーは時代に敏感なところから生まれる。彼女が好きなのは不遜で熱意あふれた、流行最先端をいく人たち。そうした人たちから生きる意欲や元気をもらっているのだ。タブー打破にも熱心だ。2016年ビルボード・ウーマン・オブ・ザ・イヤーの受賞スピーチ国際女性デーの記念ショートフィルム『Her Story』で明らかなように、デビュー当初から女性のエンパワーメントに取り組んでいた。1980年代の頃、自信に満ちて素敵な音楽を作っていた最高にセクシーな女の子は、女性だってイメージやキャリアのコントロールができることを示した。

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ーー60代になったマドンナは批判を浴びようが構わずスターの座に固執しているようだが......

彼女は今、年齢差別と闘っている。もう年寄りだ、年相応にするべき、顔をいじりすぎ等、散々叩かれている。40年前だって彼女は悪口を言われていた。すぐに消えるだろう、才能のかけらもない、セクシーすぎる、悪影響を与える等々。彼女は常に不道徳な存在とみなされ、それは今も変わらない。でも女性にも年取る権利はあるし、年取りたくないと思う権利もある。両者は矛盾しているようだが、重要なのは選択の自由があることだ。マドンナが絶えず問題提起できるのは、社会やその変化に関心があるからだ。そしてそのことはみんなが思っている以上に今、大切なことだ。実際、先進国と思われていた国で中絶の権利が後退するような状況なのだから。ワールドツアーでは踏みこんだ発言があることを期待している。

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ーーマドンナのSNS投稿にみんな驚いたり困惑したりしている。時には滑稽なものもある。彼女はいったいなにをしたいのだろう。

SNSでどう思われるか気にせず、自分がどう思うかも気にしていないのではと思う。2022年8月に、セルフプロモーションとしてマドンナがYouTubeチャンネルでファンからの50の質問に答えた際の一文が頭に焼きついている。それは「この人生で学んだ最大の教訓は、どれも現実ではないということだ」という言葉だ。TikTokやInstagramの挑発的な動画を通じて結局、深刻ぶる必要なんてないことを伝えたいのではないだろうか。マドンナはどうすれば話題になるかを心得ていて、ツボをうまく押さえている。ある意味、動画で自分をネタにしているのだ。ユーモアもあるし皮肉がたっぷり効いている時も多い。彼女の素に一番近いのは家族との投稿だと思う。子どもたちとダンスやアートに興じて家族で過ごしている時、母の顔になっている。そこに「フェイク」なものは一切ない。一方、マドンナの顔に戻った時には遊びがある。SNS上に2つのキャラクターが存在していると思う。

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ーー常に素敵な自分を見せるという感じでもない。「醜さ」も見せることで型にはめられないことを欲しているのだろうか。

彼女が欲しているのは、自分の体のことは自分で決める権利。そしてどんな体型であってもいいということだ。最近になって彼女の周囲の人たちに変化が起きた。ふくよかな人など体型が多様化し、ドラァグクイーンもいる。これまでよりもオープンな態度になっている。長年、一定の体型を維持するために多大な努力を払ってきたからこそ、それがとてもハードな闘いであり、何らかの障害を持つ人からは悪く受け取られかねないことに気づいたのだろう。

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マドンナを敵視する人はほぼ間違いなくいる。彼女はとても賢くて多くの人を怖がらせるからだ。

ビリー・ロビンスン

ーー20年近くヒットがないのになぜ人気が衰えないのだろう。

彼女のすごいところはマンネリに陥らず、絶えず新しさを打ちだすことで、話題性を保つ点だ。数字が物語っている。マドンナのツアーが発表されると商業的にもメディア的にも一気に盛りあがる。セレブレーション・ツアーは24時間で60万枚のチケットが売れた。常に時代の先端を行き、挑発しながら新しいトレンドを作りだす。さらに音楽と切り離した次元で、社会的、政治的見解を表明する術を知っている。

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ーー2023年の今、どううまく挑発すればいいのか。

うまく挑発しようと最初から狙っているわけではない。全く狙っていないと言ってもいい。マドンナは出来事に反応して直感的に発言する。政治色があり、自分の力も自覚している。権力に矛先を向け、自分の芸で説得しようとする。2013年の#Secretprojectrevolutionは、「Art for Freedom」というウェブサイトを広めるために作られたショートフィルムで、その中で彼女はこんな発言をしている。「私は無関心、不寛容、絶望、貧困を見た。私は差別と不寛容を見た。偽善が黒雲のような形で私に向かってきた」

 

 

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ーー彼女には敵がいるのだろうか。

彼女には光をひきつけるパワーがあり、彼女と知り合いになりたいと思う人は多い。だが、マドンナを敵視する人はおそらくいる。彼女はとても賢くて、たくさんの人を怖がらせるからだ。男性は全般的に彼女を恐れている。40年前、彼女に嫉妬する女の子も多かった。「あんなイメージを女性が持つべきではない、あんなにセクシーであるべきじゃないし、ビッチみたいに振る舞うべきじゃない」と。今日、彼女を批判するのは、年をとることを恐れている女性たちだ。

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ーー彼女はどこへ向かうのだろう。

彼女が活動をやめることはないだろう。ツアーは今回が最後になるかもしれないが、マドンナはやめないだろう。拠点を決めて活動した方が疲れないからそうするのかもしれない。いずれにせよ続けるだろう。最近、アーティストのBeepleと「Mother of Creation」というNFTを立ち上げ、3つのデジタル・アートワークを発表した。自分のアートにさらなる進化が必要と気づいたからだ。彼女には常に創造したい、常に楽しみを享受したいという欲求がある。根っからのワーカホリックなのだ。

text: Louis Delafon (madame.lefigaro.fr)

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