初夏の光の中、美術館へ!今月おすすめの展覧会4選。
Culture 2023.05.20
孤高の画人と若きコレクターの親交の結実。
『熊谷守一美術館38周年展』
70年を超える画業を通して到達した、シンプルな輪郭線と明快な色彩による独特な表現で身近な生き物を描いた画風が人々を魅了する画人・熊谷守一。各地で所蔵された作品を集めて毎年開催される特別企画展では今回、守一を語る上で欠かせない美術コレクター、木村定三のコレクションを紹介する。1938年、当時ほとんど知られていなかった58歳の守一に出会った25歳の木村は作品に惚れ込み、ふたりの親交は守一が亡くなるまで続いた。木村は作品収集のみならず、作品の普及を目的に展覧会を開催し、後に自ら編纂した画集を刊行するなど、守一の魅力を広めるために尽力した。本展では油彩の代表作のほか幅広い分野の収蔵作品から選りすぐられた展示となる。
会期:開催中〜7/2
会場:豊島区立熊谷守一美術館(東京・要町)
営)10:30〜17:30
休)月
料)一般¥700
⚫︎問い合わせ先:
tel:03-3957-3779
kumagai-morikazu.jp
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伝統を逸脱し、色と形を解き放つ革新の芸術。
『マティス展』
ピカソとともに20世紀モダニズム芸術の先駆者と称されるマティス。伝統的な画法から離れ、純粋かつ大胆な色彩と筆致による「フォービスム(野獣派)」の立役者として近代絵画の転換期に大きな役割を果たした。遠近法などの技術よりも自身の本能的な感覚を信じて、色彩と造形を解き放った。なかでも、室内をモチーフに描かれた作品の魅力は、絶え間ない色と形の造形的実験が無限の組み合わせのアラベスクを展開することにある。世界最大規模のマティスコレクションを所蔵するポンピドゥー・センターの協力を得て開催する本展では、多角的にその仕事を紹介。生涯の創作の集大成と見なされる南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂の資料展示も大きな見どころだ。
会期:開催中〜8/20
会場:東京都美術館(東京・上野)
営)9:30〜17:30(金曜日は20:00まで)
休)月、7/18 ※7/17、8/14は開館
※日時指定予約制
料)一般¥2,200
⚫︎問い合わせ先:
050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://matisse2023.exhibit.jp
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日常のささやかな心の機微が開く豊かな発見。
『TOPコレクション セレンディピティ日常のなかの予期ぬ素敵な発見』
収蔵作品を多様な視点から紹介する本展。ペルシヤのおとぎ話に由来し、「偶然と才気によって予期しない発見をすること」を意味する言葉「セレンディピティ」をテーマに、写真作家に訪れたささやかな心の機微に光を当て、ありふれた日常の中で豊かな発見を開いてくれる一瞬を捉えた作品を紹介する。なかでも注目したいのは、奈良美智、齋藤陽道、中平卓馬、エリオット・アーウィットによるセクション。膨大な作品から選ばれた、撮影場所や時間の異なる2点の写真が予期しなかった関係性によって結ばれ、新たな意味を帯びて編みなおされる「セレンディピティな体験」にフォーカスする。偶然性と創作意図の重なりから鑑賞者は豊かな作品体験を得ることだろう。
会期:開催中〜7/9
会場:東京都写真美術館(東京・恵比寿)
営)10:00〜18:00(木・金は〜20:00)
休)月
料)一般¥700
⚫︎問い合わせ先:
tel:03-3280-0099
topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4530.html
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素粒子と惑星と生命を巡る近未来の詩篇。
土屋 信子『Stay as a Wave 』
繊細なワイヤーや金属、柔らかな羊毛、透明なガラスやとろける樹脂など、身近な素材や廃材を自由に組み合わせて詩的で謎めいた立体作品を制作し、国際的に評価を得てきた土屋信子。本展では、宇宙に存在するすべての物質を生成する「素粒子」についての独自の世界観をもとに、生命を巡る近年の思考をユニークな視覚言語で表現する。第一室で紡がれるのは、ピアノを象ったふわふわのウールのオブジェが奏でる波長に乗って、私たち生命体の源である素粒子が宇宙の安全地帯へと拡散する近未来の物語。第二室では、唯一無二の形状を持った惑星が軌道を巡るように配される。常に予測を超えて跳躍する土屋のイマジナリーな小宇宙の周波数にチューニングを合わせてみたい。
会期:開催中〜7/8
会場:SCAI PIRAMIDE(東京・六本木)
営)12:00〜18:00
休)日〜水、祝、6/1
入場無料
⚫︎問い合わせ先:
tel:03-6447-4817
www.scaithebathhouse.com/ja/exhibitions/2023/04/nobuko_tsuchiya_stay_as_a_wave
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*「フィガロジャポン」2023年7月号より抜粋
text: Chie Sumiyosh