カンヌ国際映画祭が愛した俳優、ソン・ガンホにインタビュー!

Culture 2023.05.30

映画『パラサイト』以来、国際的な知名度を上げた韓国人は、カンヌ国際映画祭の常連で、その存在感を示してやまない。今年は新作映画『クモの巣』を発表した。

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76回カンヌ国際映画祭(カンヌ、2023年5月25日)でキム・ジウン監督の『クモの巣』のプレゼンテーションのためにパレ・デ・フェスティバルの階段に立つソン・ガンホ。photography: reuters / aflo

パレ・デ・フェスティバルの晴れたテラスで会ったソン・ガンホは、カンヌには楽しい思い出がたくさんあると笑顔で打ち明けてくれた。2006年のポン・ジュノ監督作品『グエムル-漢江の怪物-』、2008年のキム・ジウン監督作品『グッド・バッド・ウィアード』など、俳優として何度も映画祭を訪れている。そして、映画『パラサイト』という刺激的な作品で、父親を演じたことで国際的な名声を得た。ポン・ジュノ監督との再タッグとなったこの作品は2019年にパルムドール賞を獲得し、その後、アカデミー賞の最優秀作品賞も受賞した。2021年、ソン・ガンホはカンヌ映画祭の審査員として参加した。そして翌年、是枝裕和監督による『ベイビー・ブローカー』で主演男優賞を受賞した。

56歳になったソン・ガンホは、カンヌにいることを嬉しく思いながら、少しリラックスもしている様子だ。前日の5月25日、彼が出演するキム・ジウン監督の新作映画『クモの巣』がコンペティション部門から出品された。彼は70年代の映画監督を演じ、自作を傑作にするために終盤を撮り直すというアイディアに取り憑かれている。そのためには、不機嫌な俳優、パニックに陥ったプロデューサー、脅迫的な検閲委員会の役人をスタジオに隔離することもいとわない。映画についての辛辣で楽しい作品であり、ソン・ガンホはいまや映画界に欠かせない存在であり、最も称賛されるひとりとなっている。

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ーーあなたが映画に惹かれるポイントは、何よりもその映画が語る物語だと言っています。『クモの巣』のどこが気に入ったのですか?

ストーリーよりも何よりも、この「映画の中の映画」という形式が私を惹きつけました。アメリカやヨーロッパでは、撮影現場を舞台にした映画はたくさんありますが、韓国ではかなり珍しい題材です。そのユニークさに惹かれたのと同時に、全体の「奇妙」なトーンにも惹かれました。

ーーキムを演じるにあたって、インスピレーションを受けた監督はいましたか?

誰かひとりというよりも、様々な撮影で積み重ねてきた経験が活きたのだと思います。

ーー特定の監督との付き合いが深いですね。一緒に仕事をすることが多いということは、自分の作品にどのような影響を与え、発展させているのでしょうか?

非常に幸運なことに、キム・ジウン、パク・チャヌク、ブン・ジョンホなど、韓国の偉大な監督たちと最も多く仕事をしています。もちろん、俳優が監督を選ぶことはできません。私は何度も幸運に恵まれて、とてもラッキーだと思っています。同時に、常に新しいものを求めています。この探求心が、私の作品の形成に影響し、作品にダイナミズムと原動力を与えているのです。それがなければ、是枝裕和監督との出会いもなかったし、昨年のカンヌでの受賞もなかったでしょう。

ーー演劇でデビューし、そこで演技の道をスタートさせていますね。『クモの巣』は、集団的な冒険を如実に描いた映画作品です。チームワークの必要性を感じていますか?

それが映画と、美術や音楽といった他の芸術ジャンルとの違いです。他の人と一緒に仕事をすることしかできません。他者が存在するからこそ、自分も存在するというジャンルが映画です。私が存在するからこそ、相手も存在するのです。

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果てしない探求心

ーー哲学的な質問になりますが、『クモの巣』でキム・ジウン監督は、人生の不条理を告発するような映画を作りたいと考えていらっしゃいます。映画とは無意味なものではない、という彼の意見に賛成しますか?

はい、その質問は本作の核心です。『クモの巣』では、監督は芸術への情熱によって形作られているように見えます。しかし、本質的には、彼が示しているのは主に欲望です。彼の映画のキャラクターやスタジオに関与する全ての人々の欲望が交錯し、結果として大きな悲劇につながる一種の連鎖が形成されます。『クモの巣』は欲望の物語だと言えるでしょう。

ーー『クモの巣』は韓国映画について何を物語っているのでしょうか?

この映画で描かれていることは、現在では考えられないことです。舞台は70年代初頭、かなり昔のことになります。もちろん、当時の映画人たちに対するオマージュでもあります。しかし同時に、監督や俳優たちの情熱や純粋さへの追求が感じられます。芸術家である以上、どうしても誰かの影響を受けてしまいます。そして、その中で自分自身を見つけようともがくのです。この映画は、そのような側面を見つめたものです。

ーーとりわけ“あなた”らしさを見つけましたか?

とても哲学的な答えかもしれませんが、良いでしょうか(笑)。常にこの問いに対する答えを探し求めていることこそ、人間の魅力だと私は思います。そして、わかったと思えば思うほど、それが存在しないことに気づくのです。大切なのは、それを探し続けながら生きていくことです。

text: Pascaline Potdevin (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi

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