青春小説の三部作完結編ほか、いま読みたい3冊。
Culture 2023.07.17
臨床心理士にして連続殺人鬼!? 型破りなヒロインに惹き込まれる。
『ブラッドシュガー』
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主人公は夫殺しの疑いをかけられた臨床心理士のルビー。彼女の周辺では過去に3人の不審死があった。愛する夫を殺してなどいない。問題はほかの3人は殺していたこと。語り手はルビー本人。恐るべきサイコパスかもしれない彼女の言い分をどこまで信じるのか。過去が紐解かれるうち、罪悪感ゼロのダークなヒロインに図らずも感情移入していることに気づくはず。著者はエミー賞の候補になった人気脚本家。ニューヨークタイムズの2022年度ベストスリラーにも選ばれた話題作。
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誰の心の中にも世之介はいる、青春小説の金字塔ついに完結。
『永遠と横道世之介』
『横道世之介』では大学に入学したばかりの世之介の1年間が描かれた。続編の『おかえり横道世之介』では世之介は大学を卒業してフリーターになっていた。そして三部作完結編の本作では、吉祥寺のシェアハウスで暮らす30代の世之介と最後の恋が描かれる。『パレード』『悪人』『怒り』など吉田修一のほかの代表作と比べれば、事件らしい事件は何も起こらない。でもそれこそが世之介が愛されてきた理由だろう。何者かになれなくてもいい。日常の中にある本当に大切なものが蘇える。
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詩人・谷川俊太郎が切り開いた、自由で実験的な絵本の世界。
『谷川俊太郎 絵本★百貨典』
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東京立川市のPLAY! MUSEUMで開催し、全国を巡回予定の『絵本★百貨展』公式図録。24歳の時に自費出版した写真詩集『絵本』から最新作『ここはおうち』まで谷川俊太郎の絵本全172作をヴィジュアルとともに紹介。日本語のリズムを楽しむ『ことばあそびうた』、翻訳を手がけた『マザー・グースのうた』などロングセラー作品ほか、従来の絵本の枠を打ち破る実験的な作品に驚く。物語や教訓で縛られない自由な発想はどのように生まれたのか。制作の舞台裏を語ったインタビューも読みごたえアリ。
*「フィガロジャポン」2023年8月号より抜粋
フィガロジャポン8月号P127「BOOK」で、PLAY! MUSEUMで開催されていた展覧会の名称に誤りがございました。正しくは『絵本★百貨展』です。お詫びして訂正いたします。
text: Harumi Taki