SNSが生み出す精神的苦痛「スナップチャット症候群」とは?

Culture 2023.07.17

SNS上で完璧さを追求することは、精神的な健康を損なう可能性がある。化粧品業界は、SNSを活用したり、ボイコットしたりして議論の口火を切っている。

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「スナップチャット症候群」。多くの化粧品ブランドがSNSによる精神障害に警鐘鳴らす。photography: Getty Images

化粧品ブランドLushのフランス国内のコミュニケーションディレクターであるクロエ・シェゾーは、「私たちが美容製品の安全性に細心の注意を払っているのと同様に、お客様を有害なプラットフォームに導きたくない」と述べている。イギリスの化粧品ブランドLushは、2021年11月、全世界で1000万人以上のフォロワーがフォローしていた主要SNS(Facebook、Instagram、TikTok、Snapchat)を突如終了した。内部告発を受け、顧客の「心の健康を守る」ための急進的な決断と思われる。

「ウォール・ストリート・ジャーナル紙のフランシス・ホーゲンなどによる調査(フェイスブックの内部告発をしたもの)は、これらのSNSの、特に若い女性に対する有害な影響が強く反映しています」。すでに2019年、Lushは、購読者が受け取るものを条件付けるアルゴリズムとの戦いに疲れ、SNSから撤退した。

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自尊心を失う

2020年、調査サイト「ジ・インターセプト」は、Z世代に最も人気のあるアプリのひとつであるTikTokについて、モデレーターが「醜い」「シワが多すぎる」とみなされる顔を「魅力が劣る」と検閲しなければならない、という不利なレポートを明らかにした。

同年、Dove(ユニリーバ社のスキンケアブランド)が実施した調査「Un selfie à contre-courant(流れに逆らうセルフィー)」では、非現実的な美の基準に従うためにレタッチアプリを使用することが、若者の自尊心を弱めていることが示された。新型コロナウィルスによるパンデミック以来、これまで以上にスクリーンにさらされるようになった彼らは、最もフォローされているインフルエンサーが宣伝する、フィルターをかけ、リタッチし、修正した美と常に向き合っていることに気づかされる。

このことがコンプレックスとなり、強迫観念となる。「“いいね!”されないということは、ありのままの自分では『良くない』ということです。10代の女の子は、フィルターというプリズムを通してしか自分を見ていないため、自分に対する認識が全く変わってしまい、いわゆる「スナップチャット症候群」になってしまうのです。決して達成できない理想を求め、自尊心の喪失、うつ病、摂食障害につながることもあります」と、パリの精神科医ファニー・ジャック医師は分析する。

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意識改革

すでに、「ボディ・ポジティブ」運動の影響で、化粧品ブランドは広告でモデルの肌にニキビや妊娠線などの跡を見せることに抵抗がなくなっている。「商品説明にも非常にポジティブな表現をしています。例えば、私たちは欠点について話をしません」とクロエ・シェゾーは言う。

また、SNSを通じて、メンタルヘルスの問題について地域社会に啓発している人もいる。セレーナ・ゴメス(彼女自身、双極性障害と診断されていることを明かしている)が設立したアメリカのブランド、“レア・ビューティー”のインスタグラムアカウントでは、メイクアップチュートリアルに啓発メッセージを添えている。レアビューティーのソーシャルインパクト&インクルージョン担当副社長のエリゼ・コーエンは、「私たちは、メイクアップチュートリアルと同じかそれ以上に、購読者に『救われる』メンタルヘルスの研究をシェアしています」と言う。

製品を販売する以前から、同ブランドは独自の投資ファンド「レアインパクト」を立ち上げ、メンタルヘルスサービスを支援している(前回の募金活動では、2カ月で40万ドル(約4600万円)以上を集めた)。

 

 

メンタルへルスは目に見えない。

また、メイベリン・ニューヨークブランドは、ユナファム(全国精神病・障害者家族・友人連合)と共同で、心理カウンセラーに相談し、身の回りにある精神的苦痛のサインを見出すよう若者に促すデジタルキャンペーン「ブラーヴ・トゥギャザー」を開始した。Lushが願っているように、あとはSNSの主要プレイヤーがその責任を負うだけである。 

texte: Victoria Hidoussi (madame.lefigaro.fr) traduction: Hanae Yamaguchi

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