ロンドンのヴィクトリア&アルバート(V&A)による子どものための博物館V&A ミュージアム・オブ・チャイルドフッドが、ヤングV&Aとして新しく生まれ変わり、7月1日に再オープンした。
建物中央に広がる巨大な吹き抜けの空間を取り囲む2階建ての回廊内には、プレイ、イマジン、デザインの3つのギャラリーを設置。それぞれのテーマに合わせた展示物は、合計およそ2000点! 0歳からティーンまで、ニーズに合わせて楽しく過ごせる場所となっている。
子どもたちがのびのび過ごせる広々とした館内。大きなベビーカー用スペースも嬉しい。
© David Parry courtesy of Victoria and Albert Museum
プレイギャラリーはその名の通り、ハイハイをしている赤ちゃんのための場所からコンピュータゲームがプレイできるコーナーまで、過去から現在までの玩具の展示に囲まれながら様々な遊びができるスペースだ。
プレイギャラリー内のミニ・ミュージアムと名付けられたエリア。中央は小さな子達のための空間となっていて、色とりどりで様々なテクスチャーの遊具を揃える。
© Luke Hayes courtesy of Victoria and Albert Museum,
プレイギャラリー内のゲームの展示スペース。
© Luke Hayes courtesy of Victoria and Albert Museum
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イメージギャラリーは、ハリー・ポッターの魔法のほうき「ニンバス2000」やドールハウスなど、イマジネーションを掻き立てる品々が並べられ、それらが与えてくれるパワーの重要性を示す。想像力を膨らませて自分だけの世界を表現することはクリエイティブな行動なのだと教えてくれている。また自身のアイデンティティを大切にしながら、他人のアイデンティティも尊重する意味も説く。
ドールハウスで町の風景を描いた「スモールワールズ」と名付けられたインタレーション。誰もが楽しめるように全館バリアフリーとなっている。
© David Parry courtesy of Victoria and Albert Museum
自分らしい装い、夢中な事柄やスポーツを通して自己表現することはクリエイティブだと教えてくれる写真群「ディス・イズ・ミー」は、フォトグラファー、レハン・ジャミルと地元の子どもたちのコラボによるものだ。
© Rehan Jamil Courtesy of V&A
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「デザインは世界を変えることができる。それはあなたにもできること」とのメッセージを掲げているのはデザインギャラリーだ。ニーズに応えてデザインされて、人々の暮らしに便利な変化をもたらした身近な品を展示する。また、デザインとスローガンを組み合わせて社会に向けて自分たちの声をあげることもできるプロテクト・アートにも触れながら、Z世代のアイコンでもある活動家グレタ・トゥーンベリなども紹介している。
子ども達に馴染みのある自転車などを通してデザインの変遷を振り返るデザインギャラリーの展示。
© David Parry courtesy of Victoria and Albert Museum
女性参政権運動からトゥーンベリによる気候変動啓発のデモまで、さまざまなプロテクト・アートを並べたコーナー。
地下にはワークショップのスペースと読書室も設置。それぞれの年齢に応じて、さまざまなアートやデザインの実用的なスキルが学べる教室を秋から開催する予定だ。
ヤングY&Aは「世界で最も楽しいミュージアム」を目標とし、そのミッションは「クリエイティビティによって次世代にインスピレーションをあたえること」だという。3つのギャラリーはそれを達成する手段として、キューレターなどの博物館のスタッフが教師や子どもたち、その家族とのコラボレーションと、未成年の発達に関する最新のリサーチを元に作られている。
「私たちV&Aは、クリエイティビティには社会に変革をもたらす力が備わっていると信じています。だからこそ次世代のクリエイティブな人々の育成をサポートしていくのです。ヤングV&Aは若い人たちとともに、学び方、遊び方、世界を通して得た経験に基づいて創り上げた、楽しんで想像しながら、V&Aの素晴らしいコレクションを通してインスパイアされるための場所です。教師や学校、ローカルなエリアから国内すべてと共に働きパートナーシップを結び、イギリスのアート&デザイン教育の基盤となっていきたいと考えています」とディレクターのトリストラム・ハント氏は語る。
ヤングV&Aを訪れたキャサリン妃と談笑するトリストラム・ハント氏(右端)。
© Victoria and Albert Museum
またロンドン市長のサディク・カーン氏はこのように語っている。「楽しみと体験を通して学べる、新しく生まれ変わったこのミュージアムは、素晴らしいロンドンの若者たちによって作られました。若い世代のイマジネーションをさらに刺激し、そうして育まれた力がロンドンがすべての人にとってより良い場所になっていくことに役立つと信じています」。
Cambridge Heath Road, Bethnal Green, London E2 9PA
開館時間:10:00~17:45 入場は17:00まで
休館日:無休
料金:無料
https://www.vam.ac.uk/young
text:Miyuki Sakamoto
在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。