夏に聴きたい、気分爽快アルバム3選。
Culture 2023.08.14
力強く色鮮やかな感覚のエレクトロポップ。
『ユーフォリック』/ジョージア
ポジティブな気持ちを喚起する歌声。ジョージアが生み出すカラフルなポップチューンは、とにかく幸福感に満ちている。ハイムやチャーリーXCXなどを手がけてきたロスタムをプロデューサーに迎え、すべてを委ねることで新しい世界の扉を開いた。煌めくようなシンセサイザーの音色とダンサブルなビートが交差するサウンドから、プリミティブな無国籍感、アンビエントな空間処理などを巧妙に駆使しつつも、基軸にあるのはキュートで芯のある声であることはまったくぶれていない。
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ニューヨーク発、心の襞に染み入る歌声。
『ザ・グレイター・ウイングス』/ジュリー・バーン
ピッチフォークなど各メディアで絶賛された前作から6年ぶりに動き出した内省的なシンガーソングライター。ギターの爪弾きや空間的なシンセサイザー、そしてハープやストリングスといった室内楽的なサウンドを組み合わせながらも、あくまでも訥々と自身の言葉を日記のように綴っていく。空間的で奥深い世界が展開されるのは、シガー・ロスとのコラボレートで知られるアレックス・ソマーズが関わっているというのも大きい。美しく儚く繊細ながらも、強く祈るような歌声が心に響く。
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極上の歌を生み出すZ世代の大型新人。
『ペタルズ・トゥ・ソーンズ』/d4vd(デイヴィッド)
妹のクローゼットでiPhone片手に作った楽曲を集めたという、18歳のニューフェイスによる初アルバム。これがスタンダードソングを思わせる精緻なメロディと、堂々たるソフトボイスで聴かせる見事な作品集。R&Bを基調にしつつも、尖りすぎずポップであることを忘れないスタンスに感心させられる。アイスランドのシンガーソングライター、レイヴェイとのデュエットなど、まるで往年のジャズシンガーのような貫禄すら漂う。無限の可能性を持った天才少年だけに将来が楽しみだ。
*「フィガロジャポン」2023年9月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto