NewJeansを生んだクリエイターたち(2) NewJeans「ETA」のぶれない振付は誰が作った?

Culture 2023.08.29

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photography: yllyso / shutterstock

デビュー1周年でニューアルバムを発表したK-POPガールズグループNewJeansの快進撃が止まらない。

8月2日付けのビルボードでは7月21日にリリースされたアルバム『Get Up』がアルバムチャートである「ビルボード200」で1位を獲得。また、シングルチャートである「ビルボードHOT100」にはこのアルバムのタイトル曲3曲がランクイン。同時に3曲が100位内に入ったK-POPアーティストはこれまでBTSだけだった。また、欧米のアーティストも含むガールズグループとしては4組目の記録だという。

また、NewJeansは韓国以外ではまだ正式デビューはしていないが、7月にはアメリカの音楽フェス「ロラパルーザ・シカゴ」に出演、さらに8月19日には日本のサマーソニックに登場。この2つのフェス参加では生バンドをバックにしたパフォーマンスを含めてそれぞれ約40分ものステージを見事に務めた。

こうしたバンド編成でのライブパフォーマンスではどうしてもレコーディングでの音よりもサウンド的な厚みが弱くなってしまう。そのためいつも以上にステージングが重要になる。そこでここではNewJeansの魅力のなかで大きな要素を占めるダンスの振付について探っていきたい。

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最新ヒット曲に見るNewJeansの振付。

NewJeansが7月21日にリリースした2ndミニアルバム『Get Up』は全6曲で構成され、リード曲3曲のうちスローテンポの「Cool With You」を除いた「Super Shy」「ETA」は夏にピッタリのアップテンポなダンスチューンだ。「ETA」はiPhoneのCMにも使われているので、NewJeansの名前を知らない人でも耳にしたことはあるだろう。

また7月7日に先行発表された「Super Shy」は彼女たちのこれまでのどの曲よりも軽快なサウンドが印象的だ。ミュージックビデオはポルトガル・リスボンのさまざまな場所で、NewJeansと街の人々が一緒に踊るフラッシュモブのような内容になっている。1年前にデビューした際にはTikTokでのプロモーションを行っていたNewJeansだが、今回はYouTubeとコラボ。 YouTube Shortsで「#ImSuperShy」ダンスチャレンジを行っている。このせいもあってか、新曲の振付は誰もが「踊ってみた」と投稿できるような比較的シンプルなものになっている(もっとも動きがかなり速いので、完コピするのはかなり大変そうだが)。

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ふたりの振付師の違い。

「Super Shy」や「ETA」など、NewJeansのダンスはその多くで、1970年代にアメリカで流行した「ワッキング」が取り入れられている。基本動作は腕をしなやかに鞭のように動かしたりグルグルと回転させて身体に巻き付けたり、伸ばしたりするエクステンション、またモデルのような印象的なポージングと若干のステップで構成され、さらに胸を上下左右に動かすムービングも特徴になっている。大きな移動がないため顔の表情を見せやすく、また踊り手の感情表現を重視したい時にも向いているダンスだという。

こうしたNewJeansの振付を担当しているのが、所属事務所ADORのパフォーマンス・ディレクターの女性のキム・ウンジュと男性のBLACK.Q (ブラック・キュー)だ。キム・ウンジュがチーフでBLACK.Qがサブという役割分担をしていると言われる。

実際に「OMG」「ETA」の振付風景を撮影した動画を見ると、BLACK.Qは細かい振付のまとめ作業といえる部分をやっているのに対して、キム・ウンジュはメンバーに対して冗談を言ったり、「全力を出してやってみよう」と声をかけたりと、雰囲気づくりに気を配っているところが目立つ。彼女は「Super Shy」「ETA」では振付の細かいパートでメンバーに動きを考えさせ取り入れたりしているが、これも5人のモチベーションを高めることに寄与しているようだ。

こうしたふたりの違いは、NewJeansのパフォーマンスディレクター以外でのそれぞれの活動が影響しているのかもしれない。BLACK.Qは、振付家として活動する一方で、男性振付家によるダンスグループEO-DDAEのメンバーとしても活動。2022年韓国の音楽専門ケーブル局Mnetのサバイバルオーディション番組「STREET MAN FIGHTER」に出場するなど(セミファイナルで6位敗退)、現役のダンサーとしても活動している。

一方のキム・ウンジュはソウル市内でK-POPダンスアーティストを育てるためのスタジオ「E-DANCE学院」を主宰。趣味でダンスを習おうとする初心者から、専門的にダンスを習いたい人、さらにはオーディションや芸大受験、ダンス留学を目標とする人たちまで、生徒のレベルに合わせたプログラムを用意して教えているという。NewJeansのメンバーたちを褒めて伸ばそうとする姿は、こうした自身のスタジオでの後進育成がベースになっているようだ。

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キーワードは「レトロ」?

NewJeansがデビューした当初、よく語られたのは、その音楽やファッションなどがもつレトロ性である。これは彼女たちの生みの親と言われるADORの代表ミン・ヒジンによるNewJeansの世界観なのだろう。

それはダンスにおいても当てはまるもので、前述の「ワッキング」も1970年代に生まれたレトロなダンスである。またキム・ウンジュは幼い頃に韓国初のヒップホップ系アイドルグループとして1990年代に大人気だったソテジワアイドゥル(ソ・テジと仲間たち)が好きで、彼らを見ながらダンスの魅力にはまったという。このことが、彼女の振付の源泉になっており、ヒップホップをベースにしたファッションや踊りはそのままNewJeansの世界観へと受け継がれている。

メンバー5人全員がまだ10代というNewJeans。これから彼女たちが成長するに合わせて、その世界観にも変化が訪れることだろう。その時に、どんな音楽、そしてどんな振付で新しいNewJeansの世界がファンの前に登場するのか? パフォーマンス・ディレクターのキム・ウンジュ、BLACK.Qの活躍が楽しみだ。

text: Takeshi Taketara

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