ブラックの次のスタンダードは「ベージュ」に?

Culture 2023.09.12

ベージュはクワイエット・ラグジュアリーを象徴するカラー。あらゆるニュアンスのエレガンスをくまなく、揺るぎのないニュートラルさで表現する。本質的なものに向かう今シーズンのファッションにおける大注目カラーだ。

230911-beige-nextstandard-01.jpg

マックスマーラが提案する2023-2024年冬のベージュ。柔らかさへの賛歌。photography:Salvatore Dragone / Imaxtree

共感性の高い色であるベージュはクワイエット・ラグジュアリー、すなわち、いま注目の「控えめな贅沢さ」や、「永続性」の概念と結びついている。それは流行を超越したマックスマーラのウールコート、時代を超えて受け継がれるバーバリーのトレンチコート、その他多くの名品にも共通する概念だ。ついでながら、この冬はコート人気復活が期待できる。ベージュといえばまず思い浮かべるのが上質のカシミア。それは無染色、自然回帰といったトレンドともマッチする。さあ、タンスの奥からクラシックな服を引っ張りだそう。寒さ到来と共に、街はベージュのファッションで溢れかえるだろう。

---fadeinpager---

見直されるプレタポルテ

アリックス・モラビトはパリのデパート、ギャラリー・ラファイエットで婦人服部門のジェネラル・バイイング&マーチャンダイジング・ディレクターを務めている。彼女はベージュについて「安心感を与えてくれる色だ。ブルジョワ的というよりも、受け継がれていく遺産のようなもの。例えれば、田舎で着る上質のセーターであり、時代を超えて愛されるケリーバッグだろうか。高級ブランドのイメージと密接に結びついているのがプレタポルテの匠の技。それがこの冬は見直されるだろう」と語った。こうしたトレンドを象徴するカラーがベージュなのだ。トレンド情報会社、ペクレール・パリのスタイルディレクター、ジュスティーヌ・アムランも、「みんながなんとなく思っていること、それはベージュが1970年代のイタリアのビッグブランドのボキャブラリーに属しているということだ。これらのブランドでは今も、毛織物技術が世代を超えて受け継がれている」と言うとこうつけ加えた。「ベージュはまた、ルメールの作品のようにワークウェアやミリタリーユニフォームも連想させる。多くの場合、男性用アイテムだったものが、ベージュで柔らかさを帯びて女性向けとなる」

---fadeinpager---

ベージュは新たなニュートラルカラー

ギャラリー・ラファイエットのアリックスによれば今年の冬、おしゃれに差をつけるのは「ベージュをどう組み合わせるか」がポイントになる。「ネイビーの復活も注目されており、こちらは例えばプラダのように茶色との組み合わせが一般的だ。だが、同系色のベージュとの組み合わせもいい。グレーも加えたこれらのカラーはディスクリート(控えめな)ラグジュアリーの色だ。ベージュは新たなニュートラルカラー。この秋のファッションは、"原点回帰"の側面を持ち、“ささやくモード”に向かうだろう」とアリックスは言う。幅広いバリエーションを持つベージュは革や肌を想起させ、ヌードカラーや透け感からは肉欲的なものも感じさせる。ペクレール・パリのジュスティーヌはベージュがマラバーピンクのような一過性の流行色ではないと確信している。そしてその理由をこう語った。「これはひとつの強いシグナル。自然志向から、ウールやシルク、麻、亜麻といった天然素材、いわゆるノーブル(高貴)な素材が好まれるようになる。そしてエコロジーやサステイナビリティ、あるいは社会と動物と環境のバランスに配慮したカラーパレットが増える。今シーズンはウールでムートン、あるいは動物や自然の世界を表現したものが、とりわけエルメスで非常に存在感を放っている」

ベージュカラーは、「less but better(より少なく、しかしより良く)」のトレンドに適っている。これみよがしに奇抜な素材を使うトレンドの終焉でもある。くつろぎの色、ベージュはインテリアデザインで多用される色でもある。ペクレール・パリのジュスティーヌ・アムランは、「色彩の歴史的研究で優れた業績のあるフランスの学者、ミシェル・パストゥローによれば、ベージュはイエローの派生色だそうだ。明るく陽気なイエローと比べ、ややくすんだ色であるが、穏やかな印象の色だ。この冬に同じく流行しているグレーもニュートラルカラーだが、半喪の色であるのと対照的だ。また、ベージュはジェンダーフルイド(流動的な性)の色でもある」と語った。

穏やかな色であるベージュの魅力はまだあると精神分析医のペリーヌ・デプレは言う。「派手な色が氾濫した最近の数シーズンの後で、ベージュはある種の視覚的な静けさをもたらしてくれる。社会的にも、色々な面でも、現在はいわば“下降”段階にあり、控えめでシック、安心できるベージュはどんなシチュエーションにもマッチする安全な色だ。ベージュは主張せず、対立せず、受けとめてくれる。基本色彩である黒や白とは異なり、ベージュはなにも要求せず、穏やかに歩みを進める」と。こうしてベージュは雄弁にささやき、新たに躍進するのだ。

---fadeinpager---

【写真】セレブのベージュ・ルック

230911-beige-nextstandard-02.jpg

スペインのレオノール王女の陸軍士官学校入学式に付き添うにレティシア王妃。(サラゴサ、2023年8月17日) photography: Andrews Arche / Andrews Archie / ABACA

230911-beige-nextstandard-03.jpg

スキャパレリの2023-2024年秋冬オートクチュールコレクションの会場を出てきたフィリピーヌ・ルロワ=ボーリュー。(パリ、2023年7月3日) photography : Edward Berthelot / Getty Images

230911-beige-nextstandard-04.jpg

スイスの第76回ロカルノ映画祭でのイザベル・アジャーニ。(ロカルノ、2023年8月2日)photography : Alessandro Levati / Getty Images

230911-beige-nextstandard-05.jpg

スカボローのコミュニティ・センター「ザ・ストリート」を訪れたキャサリン皇太子妃。(スカボロー、2022年11月3日)photography : Max Mumby/Indigo / Getty Images

230911-beige-nextstandard-06.jpg

ドイツにて、トリソール・オープニングパーティーでのケリー・ラザフォード。(ハンブルク、2023年1月25日)photography : Tristar Media / Getty Images

text : Elisabeth Clauss (madame.lefigaro.fr)

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

シティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
編集部員のWish List!
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories