夏の終わりにしっとり聞きたい、アルバム3選。
Culture 2023.09.19
4つの女声のみでつづる自由で力強い音楽。
『セージュ』/セージュ
3年前に発表した「デザート・ソング」がグラミー賞にノミネートされたことで話題を呼んだ女性ボーカルグループがようやく全貌を現した。ソロでも人気のサラ・ガザレクを中心に、アマンダ・テイラー、ジョナイエ・ケンドリック、エリン・ベントラージの4人が繰り出すハーモニーは、ジャズのスキルをベースにしながらもオリジナルナンバーからマイケル・ジャクソンのカバーまでをスタイリッシュに聴かせてくれる。ジェイコブ・コリアーらのゲストも豪華で楽しい一枚だ。
---fadeinpager---
世界のダンスシーンを席巻するUK発のデュオ。
『ボルケーノ』/ジャングル
ジャスティン・ティンバーレイクが絶賛し、テイラー・スウィフトのリミックスを手がけ、ビリー・アイリッシュのライブでもパフォーマンスを行う。これらの経歴だけでも彼らがいかに注目すべき存在かがよくわかるだろう。ジョシュ・ロイドとトム・マクファーランドが手がけるトラックには、ラッパーのエリック・ザ・アーキテクトら多数のゲストが参加し、華やかさはヒットした前作以上だ。ひんやりとした音空間に刺激的なビートが挿入され、最高にダンサブルな世界を形作っている。
---fadeinpager---
亡き父親への想いを形にした静謐な世界。
『ジョアン』/ベベウ・ジルベルト
最先端のブラジル音楽シーンをけん引し続ける彼女が、ボサノバを語るうえで最も重要な人物ジョアン・ジルベルトの実娘であることは周知のとおり。そんな偉大な父のレパートリーに挑戦したのが本作である。ギレルミ・モンテイロの的確なギターのリズムに乗せて、幽玄的なボーカルが丁寧にメロディを紡いでいく。アコースティックなアレンジは原曲のイメージを踏襲しており、ボサノバ本来の魅力をあぶり出す。聴き慣れたスタンダードも多く、夏の終わりにしっとりと耳を傾けたい。
*「フィガロジャポン」2023年10月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto