イヴ・サンローラン展など、いま注目の展覧会4選。
Culture 2023.09.29
江戸と西洋の美が融合した端正な童画。
『没後50年 初山滋展 見果てぬ夢』
大正から昭和にかけて、童画の世界に欠かせない画家として活躍した初山滋は、小学校卒業後、模様画工房に奉公に入る。身体に染みついた江戸の装飾美と西欧のモダンな感覚を融合させ、美意識の赴くまま自由な表現を展開した。本展では、絵雑誌「コドモノクニ」に掲載された代表作のほか、アンデルセン童話や宮沢賢治の童話集など戦後出版された名作絵本の原画を展示。また戦時中、プロパガンダ絵画を描かなかった初山が、子どもの本の仕事が減る一方で熱中した創作木版画の希少な作品を紹介する。日本画の修業で培われた流麗な線を土台に、アールヌーボーなど西洋美術の思潮も吸収したその優美で軽やかな線は、没後50年を経た現在も瑞々しく、おとぎの国の無限の夢を描きだす。
会期:開催中〜11/30
会場:安曇野ちひろ美術館(長野・松川村)
営)10:00〜17:00 最終入場
休)水
料)一般¥900
●問い合わせ先:
tel:0261-62-0772
https://chihiro.jp
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京都の風土文化の中で提示するアンビエント。
『AMBIENT KYOTO 2023』
昨年、ブライアン・イーノの展覧会を開催した第1回に続き、今秋、第2回を迎える視聴覚芸術の展覧会。本年は、日本が世界に誇るアーティストたち(坂本龍一、高谷史郎、コーネリアス、バッファロー・ドーター、山本精一)による作品が出展される。京都市内に古くからあるビルと京都新聞社地下の広大な印刷工場跡の2会場を舞台に、精度の高い音響と静謐な装置空間が実現する。また会期中には、ミニマルミュージックの巨匠テリー・ライリーが東本願寺・能舞台でライブを開催。「アンビエントとは音楽のみならず風土・文化の一部である」という視点のもと、環境を巡る新しい価値観を長期的に提示し、京都が「アンビエントの聖地」として国際的な評価・認知を得ることを目指している。
会期:10/6〜12/24
会場:京都中央信用金庫 旧厚生センター、京都新聞ビルB1F、東本願寺・能舞台(京都・京都市)
営)9:00〜18:30最終入場
休)11/12、12/10
料)一般¥3,300(ライブは展覧会とは別にチケットが必要)
●問い合わせ先:
info@ambientkyoto.com
https://ambientkyoto.com
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画家の中の「自由人」を描いた全102点。
『横尾忠則 寒山百得』展
87歳のいまもなお旺盛な創作意欲を絶やすことのない現代美術家・横尾忠則。本展では、古来数多くの画家が題材としてきた中国・唐の時代のふたりの詩僧「寒山拾得」を独自の解釈で再構築し、その日の気持ち次第で、すべて異なるスタイルで描いたシリーズを一挙初公開。社会通念に制約されず、気ままに生きたと言われる伝説の凸凹コンビから、横尾自身の中にある「自由人」のキャラクターに通じる魅力を感じて作品化を思いついたという。当初100点を目標に制作を開始し、途中体調を崩しながらも見事に復活。約1年半の間に102点の新作を完成させた。禅の修行のごとく「無私」の境地で、アスリート並みに生活と芸術が一体となったという横尾忠則の新たな挑戦に期待したい。
会期:開催中〜12/3
会場:東京国立博物館 表慶館(東京・上野)
営)9:30〜16:30 最終入場
休)月、10/10 ※10/9は開館
料)一般¥1,600
●問い合わせ先:
050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kanzanhyakutoku
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身体を土台とする芸術としてのファッション。
『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』
1958年、ディオールのデザイナーとして鮮烈なデビューを飾り、1962年に自身のブランドを発表以来、約半世紀にわたって世界のファッションシーンをリードしたイヴ・サンローラン。サファリ・ルックやパンツスーツ、ピーコート、トレンチコートなどのアイテムにより女性のワードローブに変革をもたらし、衣服が持つジェンダーのイメージを超越したデザインで、時代が求める新たなエレガンスを生み出した。モンドリアン・ルックに代表される美術作品とファッションの融合を通して、伝統的なオートクチュールの世界に新風を吹き込み、絵画や彫刻、建築などの芸術分野と同様に、身体を土台とする生き生きとしたアートとしてファッションを結実させたことは特筆すべき功績といえる。
会期:開催中〜12/11
会場:国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)
営)10:00〜17:30最終入場 ※金曜、土曜19:30最終入場
休)火
料)一般¥2,300
●問い合わせ先:
050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://ysl2023.jp
*「フィガロジャポン」2023年11月号より抜粋
text: Chie Sumiyoshi