La boîte à bijoux pour les mots précieux.ーことばの宝石箱 「いろんな言葉で説明するより......」ソフィア・コッポラの考え方に気付かされたこと。

Culture 2023.10.23

文筆家・村上香住子が胸をときめかせた言葉を綴る連載「La boîte à bijoux pour les mots précieuxーことばの宝石箱」。今回は彼女がパリで何度か見かけ、その後東京で再会することになったソフィア・コッポラの言葉をご紹介。

 
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当然といえば当然だけど、映画監督のソフィア・コッポラはまどろっこしい話し方をする人が、我慢できないのかもしれない。英語だとまっすぐに表現するところを、日本ではくどくどとこね回して、柔らかくするために、無駄な形容詞をやたらと使うことが多い。直接的より、間接的な方が品格があると思われているし、実は私自身、あまりずばり、と切り刻むような人はちょっと苦手かもしれない。

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自分の豊かな知識をひけらかそうとする人もうんざりするし、要するに話術というのは、相手への思いやりが何よりも大事ではないだろうか。押し付けがましくなく、丁寧に話相手の前に並び立ててあげる配慮のある人が話の達人なのかもしれない。つまりは調和、モーツアルトの曲のように全体的にバランスが取れているなら、いつまでもその人の話をきいていたい。

そうだとしても、聞いていてその内容が目の前に視覚的に見えてこないとしたら、それはおそらく退屈してしまうだろう。映画監督のソフィアはキャメラのレンズを通して、相手の話を聞いているのかもしれない。目前に映像として見えたきた時点で、そこにエモーションが生まれてくるという彼女の意見は、確かに一理ある。

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フランスの学校では筆記だけでなく、口頭での試験もあるので話し上手の人が多い。友人の家に夕食に招待されたりすると、テーブルを囲んでみんな持ち前のネタを披露、まるで役者のように話し出すので、実に騒々しく、その中に割って入るのに一苦労だ。

私はその場にいなかったが、ある時夕食の席で友人の父親がナポレオンの話をしていたら、ちょうど盛り上がったところで柱時計が鳴り出し、激怒した父親は柱時計につかみかかり、窓から捨てて、その後済ました顔で話を続けたそうだ。恐るべき話術の猛者が、パリには大勢いるようだ。

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1971年、ニューヨーク生まれ。父フランシス・フォード・コッポラをはじめ映画に携わる家族に囲まれて育つ。『ゴッドファーザーPartⅢ』(1990年)で俳優デビューののち、98年に短編映画『リック・ザ・スター』で監督デビュー。『ヴァージン・スーサイズ』(99年)で長編監督デビュー、『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)でアカデミー脚本賞やセザール賞外国映画賞など多数受賞。2010年『SOMEWHERE』でヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞した。

 

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