80歳になったカトリーヌ・ドヌーヴについて知らない10のこと。

Culture 2023.10.24

80歳を迎えたカトリーヌ・ドヌーヴ。女優の長いキャリアの中で出演作は数えきれないほどだ。あらゆる役を変幻自在に演じてきた。だが実際はどんな人なのか、意外と知られていない。

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カンヌ国際映画祭でのカトリーヌ・ドヌーヴ。(フランス、2014年5月21日)photography: Getty Images

どんな役でもこなし、その芸域の広さで観客を驚かせては悦に入る。『シェルブールの雨傘』、『ロバと王女』、『ロシュフォールの恋人たち』、そして現在フランスで公開中の映画『Bernadette(原題:ベルナデット)』では元フランス大統領夫人ベルナデット・シラクを演じている。ギュスターヴ・ケルヴェンとブノワ・ドレピーヌによるコメディ映画『Dada(原題:ダダ)』のフランス公開も控えている。2023年10月22日に80歳となったドヌーヴを祝ってアルテTVはクレール・ラボレイ監督のドキュメンタリー『Catherine Deneuve, à son image(原題訳:カトリーヌ・ドヌーヴ、その映像)』の期間限定配信を開始した。文句なしの大スターのこれまでの歩みを振り返る格好のチャンスだ。しかし、スクリーンの中では色々な顔を見せてきた一方で、どんな人物なのかはあまり知られていない。フランスの誇る偉大な名女優の知られざる側面を紹介しよう。

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ーー本名のドルレアックの方が好き

1943年10月22日、パリ17区で生まれたカトリーヌ・ドヌーヴの本名はカトリーヌ・ドルレアック。父のモーリス・ドルレアック、母のルネ・ドヌーヴ(旧姓;芸名はルネ・シモノ)は共に俳優だった。姉のフランソワーズ・ドルレアック(1967年6月26日に交通事故で死去)は女優としてデビューするにあたって父の姓を名乗ったが、カトリーヌ・ドヌーヴは母の旧姓を選んだ。2023年9月末、映画『ベルナデット』のプロモーションでフランス2TV局の番組「Beau geste(ボージェスト)」に出演したドヌーヴは芸名に言及し、母親の旧姓を名乗ったのは姉との差別化を図るためだったと明かした。「これは母の発案で、映画『ロシュフォールの恋人たち』の際、“こっちもドルレアック、あっちもドルレアックなのはちょっとね”と言い出したんです。それで母の旧姓を名乗りましたが、本当はドルレアックの名前が良かった」

ーー早口なのは家庭環境のせい

エレガントなイメージのカトリーヌ・ドヌーヴは、早口なのに滑舌がいい女優としても有名だ。アルテTVのドキュメンタリー映画『Catherine Deneuve, à son image』では、1966年の出演作、『城の生活』を撮ったジャン=ポール・ラプノー監督の古いインタビューを発掘、その中で監督はドヌーヴと初めて会った時のことを回想している。「彼女は、“あらかじめお伝えしておきたいのですが、わたしはとても早口です。あなたが困るほど早口すぎるかもしれません”と言った」そうで、その理由は次のようなことらしい。「彼女は4人姉妹のひとりで、家では一番早口の人が一番話を聞いてもらえた。(中略)こうして彼女は彼女のペースで喋り、それは結果的に私の映画のペースとなった。その後の女優たちの指針となったのだ」

ーー首の後ろにタトゥーを入れている

カトリーヌ・ドヌーヴはフランス流エレガンスを象徴する存在ではあるが、南太平洋諸島滞在中、タトゥーの魅力に負けたようだ。タトゥーは2つ。ひとつは首の後ろに亀のタトゥーが入っている。カメはマオリ族の間で強さと守りのシンボルとされている。もうひとつは足の前側にあり、よくパンプスを履いた時に見せている。こちらもマオリ族のモチーフだが、その意味は誰も知らない。

ーー『プレイボーイ』誌の表紙でヌードを披露したのはロマン・ポランスキーの説得によるもの

1965年、ポランスキー監督の映画『反撥』にドヌーヴは主演した。映画のプロモーションのため、ポランスキーはヒュー・ヘフナーが創刊したプレイボーイ誌の表紙でヌードを披露するよう女優を説得した。この時ドヌーヴを撮影した写真家がデビッド・ベイリーで、ふたりはこれがきっかけで結婚する。2018年、フランスのTV番組『Complément d'enquête(コンプレマン・ダンケート)』で写真家はドヌーヴとの出会いについて語っている。「彼女を見たとき、“自分には小さすぎる”と思った。それまでトップモデルとしか付き合っていなかったから。でもポランスキーは“そんなことはない、お似合いのふたりだ”と言い、プレイボーイ誌のために撮ってくれと依頼してきた。こうしてカトリーヌと出会った!(中略)そしてポランスキーは正しかった。彼女はとてもフランス的で、とてもブルジョワ的だった。そして僕は政治的に正しくない人間だから、正反対なふたりはとてもウマが合った」

 

 

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ーーセルフィー(自撮り)が大嫌い

生まれた時からスマホが身近にあるような環境で育ってはいないからか、今やファンが当たり前のようにリクエストするセルフィーは大嫌いなようだ。2014年にムンバイを訪れた際、通信社のAFPに次のように語っている。「誰もがあの“セルフィー”と呼ばれている恐ろしいものをしたがりますね。セルフィーなんてゾッとします。撮った後、どうするんでしょう」

ーー路上でよく歌っている

人気シンガーソングライターのクララ・ルチアーニは、カトリーヌ・ドヌーヴが主演したミュージカル『ロシュフォールの恋人たち』の大ファンで、ずっとドヌーヴに憧れていた。そんなふたりが2022年11月、フランスのカルチャー誌、『レ・ザンロキュプティブル』でのクロスインタビューで顔を合わせた。「普段歌うことはありますか?」というクララの質問に対し、ドヌーヴの答えは意外にも、娘を困らせるほどしょっちゅう歌っているとのこと。「ある日、タクシーに乗っていて、降りようとしたら、運転手にこう言われました。“料金をもらったら悪い気がするほどです。ずっと歌っていらっしゃいましたからね! 今どき歌うのはあなたとイタリア人労働者ぐらいですよ”ですって。とても愉快な体験でした。路上でもよく歌いますよ。ひとりでも、伴奏付きでも(中略)娘は恥ずかしいと言って怒りますけれどね!」

ーー『ロシュフォールの恋人たち』や『ロバと王女』の歌は吹き替え

もちろんドヌーヴに歌の才能があることに疑いの余地はないが、ミシェル・ルグランが音楽を担当した映画では歌の吹き替えがついた。『ロシュフォールの恋人たち』や『ロバと王女』で実際に歌っているのはアンヌ・ジェルマンという、ウォルト・ディズニーのアニメで活躍したフランスの歌手だ。2016年に亡くなっている。

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ーー葉巻好き

2019年に脳卒中で倒れた後は吸っていないが、長年ハバナシガーを愛煙し、1日に数箱吸うこともあった。2020年、フランスの映画監督権俳優のジョナタン・コーエンはフランスのテレビ番組でドヌーヴの愛煙家ぶりに触れ、「カトリーヌ、あなたのおかげでまたタバコを吸うようになったよ。彼女はとてもよく吸うんだ。マカロンを食べているようにね。だから食べるように吸いたくなる。なんて素敵な吸いっぷりなんだ!」と面白おかしく語った。

ーーヒッチコック映画出演の計画があった

残念ながら実現しなかったが。フランス映画界で活躍するカトリーヌ・ドヌーヴにハリウッドも秋波を送っていた。1968年、弱冠25歳でハリウッドへ。テレンス・ヤング監督の映画『うたかたの恋』やジャック・レモンとの共演作『幸せはパリで』に出演したものの、商業的には失敗だったため、ドヌーヴはフランスに戻った。その後、アルフレッド・ヒッチコック監督からスパイ映画への出演を打診された。時は1970年代、『めまい』などの名作で有名な監督は、ドヌーヴに『The Short Night(短い夜)』という映画の出演をオファーしてきた。キャストには、ロバート・レッドフォード、スティーブ・マックイーン、クリント・イーストウッド、ショーン・コネリーといったスターが名を連ねていたそうだ。残念ながら、この企画は延期になった末、とうとう日の目を見ることはなかった。「後悔していることのひとつです。(中略)ヒッチコック作品に出られたら素敵だったでしょうに」と、女優は2010年、フランスの「レクスプレス」誌のインタビューで語っている。

ーー当意即妙な返しができる

これはドヌーヴと8年間つきあったジャーナリスト出身の実業家、ピエール・レスキュールが2012年に出版した回顧録『In The Baba(イン・ザ・ババ)』の中で語っている話だ。ドヌーヴがどんな状況でも勇敢であることの一例として、ふたりでパリのティールームにいたときのことを回想している。少し離れたところに座っているふたりの老婦人がピエール・レスキュールの外見を批判し、「ユダヤ人の鼻」と悪口を言っていた。ドヌーヴはティールームを出る際、老婦人のテーブル近くに寄ると落ち着いた口調でこう言い放った。「あなたがた、彼はユダヤ人の鼻の持ち主かもしれませんが、私は気に入っていますわ。さらに申し添えますと、彼はブルボン王家の血を引いていますの。ざまあみろ!」

text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr)

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