キュビスム展をはじめ、この秋訪れたい美術展4選。
Culture 2023.10.26
伝統から脱却し、世界を変えた美の革命。
『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展-美の革命ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』
20世紀初頭、ピカソとブラックによって生み出され、西洋美術史に大変革をもたらしたキュビスム。伝統的な遠近法や陰影法による三次元的空間表現から脱却し、幾何学的に平面化された形で画面を構成する試みは、絵画を現実の再現とみなすルネサンス以来の常識から画家たちを解放し、視覚表現に新たな可能性を開いた。本展ではパリに集う若い芸術家たちに衝撃を与え、抽象芸術やダダ、シュルレアリスムへの道を開いたほか、さまざまな分野で以降の芸術の多様な展開に影響を与えた軌跡を示す。キュビスムの歴史を語るうえで欠かせない貴重な作品が多数来日し、なかでも初来日となる幅4mに及ぶロベール・ドローネーの『パリ市』は同館を象徴する大作のひとつだ。
会期:開催中〜2024/1/28
会場:国立西洋美術館(東京・上野)
営)9:30〜17:00最終入場 ※金曜、土曜は19:30最終入場
休)月
料)一般¥2,200
●問い合わせ先:
050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://cubisme.exhn.jp
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絶頂期に急逝したデザイナーの思考と詩情。
『倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙』
かつて新橋にあった寿司店、きよ友のインテリアが香港の美術館、M+にまるごと移設されたことでも再注目される伝説のデザイナー倉俣史朗。当時センセーショナルな話題となった独創的な店舗デザインや家具は、国内以上に国際的評価が高いことでも知られる。キャリアの絶頂で急逝した彼の没後30年を超えて行われる本展は、名作の椅子『ミス・ブランチ』(1988年)に代表される、アクリル、ガラス、アルミ建材など工業素材に独自の詩情を乗せた仕事や、海外のメーカーが復刻・販売した家具など魅力を再確認する機会となる。「倉俣史朗の私空間」には愛蔵の書籍とレコードを、エピローグではイメージスケッチと夢日記や言葉を紹介し、倉俣の作品と人物像を読み直す。
会期:11/18〜2024/1/28
会場:世田谷美術館(東京・世田谷)
営)10:00〜17:30 最終入場
休)月
料)一般¥1,200
●問い合わせ先:
050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.setagayaartmuseum.or.jp
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地方都市の表情を引き出すアートの地平。
『開館10周年記念展 ニューホライズン 歴史から未来へ』
群馬県前橋市の商業施設を改修した美術館「アーツ前橋」の開館10周年を記念し、特別館長に就任した南條史生が自ら手がけ、街全体を巻き込む大規模な企画展が開催される。AIの創造的可能性を拡張する美学の先駆者であるトルコ出身のレフィーク・アナドールなど海外勢のほか、日本のアートシーンに近年現れたペインターたちにも注目。川内理香子、横山奈美、岡田菜美による、自身の身体感覚に応答する鮮烈な絵画は時代の閉塞感を柔らかく押し広げ、瑞々しい体験をもたらすはずだ。白井屋ホテル、まえばしガレリアほか、新進建築家が手がけた周辺の施設でも良質のアートに触れられ、均質化の進む地方都市にひそむ思いがけない表情を発見する機会となるだろう。
会期:開催中〜2024/2/12
会場:アーツ前橋(群馬・前橋)
営)10:00〜17:30最終入場
休)水
料)一般¥1,500 ※開館記念日10/26は入場無料
●問い合わせ先:
tel:027-230-1144
www.artsmaebashi.jp
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世紀を超えた石像の肌が纏う、悠久の光。
『田原桂一「トルソー」』展
写真家・⽥原桂⼀(1951-2017)は1971年に渡仏し、ヨーロッパ特有の鋭い光に触発され、同地を拠点に30年にわたり、光そのものを物質化した写真を探求する。1977年には「窓」の連作でアルル国際写真フェスティバル大賞を受賞し、世界的に評価された。約1年半の会期で田原の代表作を展示する本展。第三期は1987〜1995年にかけてルーブル宮殿で撮影した石像のシリーズ「トルソー」を紹介する。世紀を超えて、光と空気と人々の視線を受けてきた守護神たちの石肌はひんやりと艶やかに磨き上げられ、このうえなく柔らかな光を漂わせる。悠久の彼方に思いを馳せるかのような彫像たちのディテールから、普遍の典雅を捉えた写真家の見事な「眼」の力に寄り添いたい。
会期:開催中〜12/22
会場:VLC Gallery by AKIO NAGASAWA(東京・虎ノ門)
営)11:00〜18:00
休)土、日、祝
入場無料
●問い合わせ先:
tel:03-6264-3670
https://vlcgallery.com/jp
*「フィガロジャポン」2023年12月号より抜粋
text: Chie Sumiyosh