歌声に酔いしれたい、秋のベストアルバム3選。
Culture 2023.11.18
神々しささえ感じさせるUK R&Bの最先端。
『ラハイ』/サンファ
いつまでも浸っていたいと思えるスモーキーボイス。英国の先鋭的なボーカリストから6年ぶりの新作が届けられた。マーキュリー賞などさまざまな栄冠に輝いた前作に比べると、より彼自身の声に焦点を当てたようなボーカル作品に仕上がっている。とはいえプログラミングを駆使した独特の浮遊感を醸し出すスタイルは不変で、スケール感も倍増している。ブラック・ミディのモーガン・シンプソンやキューバの双子姉妹デュオのイベイーなどゲストの顔ぶれも個性的で、さすがのラインナップ。
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スタイリッシュなブラジリアンAORの頂点。
『ビハインド・ザ・ティー・クロニクルズ』/エヂ・モッタ
身も心も躍らせるグルービーなナンバーから、メロウでムーディなサウンドまで聴かせるブラジルの鬼才。一音一音を丁寧に紡ぎながら、渋めのボーカルスタイルでクールに決める。80年代から活動するベテランだけに、アーバンな演出も手慣れたもの。ポーレット・マクウィリアムスや元スウィッチのフィリップ・イングラムといった知られざるソウルレジェンドが参加しているのも、音楽マニアならでは。ただ、間口が広いポップさも持ち合わせており、シティポップ感覚で聴ける快作だ。
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シカゴの歌姫によるディープなネオソウル。
『ウォーター・メイド・アス』/ジャミーラ・ウッズ
クールビューティとはまさに彼女のことではないか。各メディアでは年間ベストに選ばれるなど高評価を得た前作『LEGACY! LEGACY!』に続く3作目のアルバムは、4年も待った甲斐があるバラエティに富んだ作風だ。ラップをフィーチャーしたり疾走感のあるエイトビートに身を委ねてみたりとサウンドアプローチの手法は多彩だが、スタイリッシュなボーカルは一貫している。コロナ禍を経て内省的なメッセージに辿り着いたということもあって、聴けば聴くほど味わい深い。
*「フィガロジャポン」2023年12月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto