ジョン・F・ケネディJr.の妻キャロリン・べセット、死後24年経ってもファッションアイコンとして輝く。
Culture 2023.12.30
ニューヨークで最も美しい女性のひとりといわれながら24年前、夫と共に悲劇的な事故で亡くなったキャロリン・ベセット。そのファッションスタイルが2023年の今、ふたたび注目されている。
1990年代のニューヨークの街角でのキャロリン・ベセット=ケネディ。photography: Lawrence Schwartzwald / Sygma via Getty Images
グランジファッションが流行った1990年代のニューヨークで、ファッションアイコンのひとりだったのがキャロリン・ベセット=ケネディだ。1999年の飛行機事故で夫のジョン・F・ケネディ・ジュニアとともに亡くなったが、彼女のシックでミニマムなルックは、彼女を伝説的存在に押しあげた。生前のキャロリン・ベセットは1990年代のベーシックなファッションの信奉者だった。オープントゥサンダル、素足で履くローファー、胸元を大きく開けた白シャツにストレートパンツ。お気に入りのカラーコーデは、黒にニュアンスのあるベージュの組み合わせで、たとえばコーデュロイのパンツにニットのトップ、あるいは仕立ての良いコートなどが思い浮かぶ。「彼女のスタイルには強引なところが一切なく、だからこそカリスマ性があったのです。これみよがしな豪華さはないけれど、ラグジュアリーなスタイル。フォルムもシルエットもミニマルでした」とデザイナーのガブリエラ・ハーストは、作家スニータ・クマール・ネアが2023年11月に上梓した『Carolyn Bessette Kennedy : A Life in Fashion(原題訳:キャロリン・ベセット・ケネディ:ファッションの中の人生)』の前書きに寄せている。
ホイットニー美術館のガラパーティーでのキャロリン・ベセット=ケネディ。(ニューヨーク、1999年3月9日)photography: Evan Agostini / Getty Images
キャロリン・ベセットは、あからさまに高級品であることを顕示するブランドロゴ等を嫌った。たとえ、プラダ、リーバイス、ヨウジヤマモト、エルメス、マノロ・ブラニクなどのブランドを実際には愛用していたとしても、ブランドの広告塔になるのは論外だった。ある日、プラダのショップで「購入したスキースーツから、目立つラベルをはがして欲しい」と頼んだ話が上述のスニータ・クマール・ネアの本で紹介されている。
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カルバン クライン
キャロリン・ベセットはカルバン・クラインで広報として働いた後、VIP担当アドバイザーとなった。カルバン・クラインと言えばシンプルなデザインの代表格。当時、スーツ、白いTシャツ、上質デニムを着たケイト・モスやクリスティ・ターリントンによるモノクロ写真の広告キャンペーンが話題を呼んだ。キャロリン・ベセット=ケネディは完璧なCK(カルバン・クライン)ガール。ブランドのDNAは彼女のミニマリスト的なワードローブに受け継がれた。そのスタイルはいつまでも人々を魅了する。フランスのデザイナー兼インフルエンサー、ジャンヌ・ダマスのブランド、「Rouje(ルージュ)」の2022年春夏キャンペーンには、キャロリン・ベセットとジョン・F・ケネディ・ジュニア夫妻そっくりのモデルが登場し、夫妻のアイコニックなスタイルをほぼそっくり再現していた。
アメリカのブランド、「Sporty & Rich(スポーティ&リッチ)」が今年の9月、発表したコレクションも、1990年代のキャロリン&ジョン夫妻のファッションからインスパイアされている。ハイウエストのストレートジーンズ、ロングコート、基調色はベージュとブラック。さらに2024年春夏コレクションの各地ファッションウィークでは、ミニマリズムが急浮上した。アクネ ストゥディオズのクリーム色のスーツ、アライアのキャメルのロングコート、キャロライナ ヘレラのコーヒーカラーのスリップドレス等、誰かに見せびらかしたりしたくない富裕層の女性にぴったりのファッションだ。たとえば裁判が進行中で注目のグウィネス・パルトロウや、まさにキャロリン・ベセットのように。
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体格と服選び
キャロリン・ベセットは、ほとんどの写真でうつむき加減で肩を丸めていたり、ポケットに手を入れていたり、夫と腕を組んでいたりした。1994年に亡くなったジャッキー・ケネディを惜しむ人々は、キャロリンをこの義母によくなぞらえる。フランスの作家、ベルナール・パスキュイトが2023年の今年、発表したばかりの著作『Jackie & John: Un couple impossible(原題訳:ジャッキー&ジョン、途方もないカップル)』で書いているように、ジャッキーは背が高すぎ、痩せすぎ、目が離れすぎ、足が大きすぎと言われていた。だがそうした身体的特徴がジャッキーをアイコンの地位に導いた。そしてキャロリンに対しても同じような見方がある。「名門に嫁いでも、そのような立場の女性にふさわしいとされるような規範に合わせることなく、意外性に賭け、革新的な服を大胆に自信に満ちて優雅に着こなした」とUK版「ヴォーグ」誌元編集長のエドワード・エニンフルは『Carolyn Bessette Kennedy : A Life in Fashion(原題訳:キャロリン・ベセット・ケネディ:ファッションの中の人生)』の序文で書いた。
ジャッキー同様、キャロリン・ベセットのカリスマ的な魅力は今もSNSを魅了する。TikTokではハッシュタグ#carolynbessettekennedyが約5000万ビューを記録した。インスタグラムでも同様に人気だ。たとえばパリのコンテンツクリエーター、マノン・レムは、キャロリンのファッションにインスピレーションを受けた着こなしを投稿している。体にフィットするドレス、良質のベーシック服とロゴなしのラグジュアリーな小物中心のファッションは、洗練されていながらもやりすぎない。2023年、シンプルなファッションを志向する若い世代の女性たちに、キャロリン・ベセット=ケネディは亡くなってもなお、インフルエンサーでありつづける。
text: Augustin Bougro (madame.lefigaro.fr)