韓国ドラマの食事から知る、韓国の日常。 トゥルチギで起きるコミュニケーション。『椿の花の咲く頃』

Culture 2023.12.30

韓国ドラマによく登場する食事シーンは、主人公たちの心情や、作品のコンセプトそのものを伝える役割を果たす。食材やメニュー、食卓の風景などからもっと深くドラマを理解しよう。


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トゥルチギは豚肉と野菜をコチュジャンなどで炒めたもの。豚肉以外の食材(牛肉、魚介類、豆腐)でも作れるが、「豆腐トゥルチギ」などと書かれてない限り、豚肉が一般的。トゥルチギと同じく豚肉を使うチェユクポックンとの区別は難しく韓国人の間でも論争が起きるほど。両方とも安い食材でもおいしく作れるので、大衆食堂や居酒屋での定番メニューだ。少し甘味のある韓国焼酎には、この辛さがピッタリ。『椿の花の咲く頃』では、主人公ドンベクの店、カメリアの看板料理。地元の女性たちはカメリアに男たちが集うのを嫉妬して、新参者のドンベクに意地悪するが、地元の味に慣れすぎてしまった男たちには、ドンベクの作るエゴマの葉がのった見た目も美しいトゥルチギが新鮮に映るようだ。田舎町での人間関係を、トゥルチギが取り持ってくれたのだ。

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『椿の花の咲く頃』
幼い息子を連れたシングルマザーのドンベクは、海辺の小さな町に"カメリア"というスナックを開く。店は男性客で繁盛するが、地元の女性たちはドンベクに意地悪だ。そんなドンベクに一目惚れした熱血警察官ヨンシク。そこに6年前にこの町で起きた未解決殺人事件の謎解きも加わる、ミステリー&ラブコメディ。
監督/チャ・ヨンフン 脚本/イム・サンチュン 出演/コン・ヒョジン、カン・ハヌル、キム・ジソク、コ・ドゥシム、イ・ジョンウンほか
Netflixにて独占配信中

Text: 伊東順子
1990年に渡韓し、企画、翻訳オフィスを運営する。2017年に同人誌「中くらいの友だちー韓くに手帖」(皓星社刊)創刊。著書に『韓国カルチャー 隣人の素顔と現在』(集英社刊)、7月には第2弾を発売予定。

*「フィガロジャポン」2023年9月号より抜粋

illustration: Kaeko

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