マルジェラのショーで話題となったアクセサリー「マーキン」とは?
Culture 2024.02.01
パリのオートクチュールウィークが終わり、メゾン マルジェラのショーに登場したアクセサリーが注目を浴びている。それは「マーキン」、陰毛ウィッグだ。いったいどんなものだろう。
メゾン マルジェラ2024年春夏オートクチュールコレクション。photography: Imaxtree
その晩、1月25日は満月だった。今年初の満月だ。4日間のパリオートクーチュールコレクションの最後を飾る、メゾン マルジェラのオートクチュールのショーで、ジョン・ガリアーノは歴史に名を刻んだ。ショーのラストで、パリのアレクサンドル3世橋のたもとに座った観客たちは圧倒され、割れんばかりの拍手とともに涙を流す者もいれば、木の床を揺らすほど激しく足を踏み鳴らす者もいた。ファッションショーで滅多に起こらないほどの騒ぎが起きるとは、いったいどんなショーだったのだろう。浮かび上がる男女モデルのシルエット。モデルたちの肌は、まるで本物の磁器のようで、ヴィクトリア朝時代の白肌を彷彿とさせる。ほとんどのモデルがコルセットをまとい、トゥールーズ・ロートレックが描いた美しき高級娼婦さながらの雰囲気を漂わせていた。
メゾン マルジェラの2024年春夏オートクチュールコレクション。photography: Imaxtree
まるで演劇を見ているような感覚は、親密な舞台空間やモデルたちのギクシャクと奇妙な動きに助けられている。女性たちの胸はあふれんばかり、透けるボイルの下からたっぷりと、存在感を示していた。そして陰毛も同様の状態とあって、多くの人がある種の好奇心から注視した。
---fadeinpager---
「マーキン」の復活
明らかにここでは、女性の陰毛が魅力的な切り札として価値を持っている。現在の美の基準とは真逆だ。陰毛を剃ることがシラミや梅毒の存在を連想させ、豊かな陰毛が健康的で望ましいものとみなされていた、ベル・エポック時代の感覚をどちらかといえば想起させる。女優、ダンサー、娼婦など、自分の体を張って生きていた当時の女性たちにとって陰毛はアピールポイントだった。しかしながら陰毛を剃ってしまった女性の中には、陰毛のかつらである「マーキン」を使用する者もいた。この頃の「マーキン」は本人の髪の毛で作ることが多かった。ある種の「下着」とも言えそうだが、最初に歴史に登場したのはなんと古代で、その頃は動物の毛で作られていたそうだ。では、メゾン マルジェラのショーに、チュールやレースでふんわり隠されて登場した、密生した陰毛ウィッグはどのように作られたのだろう。本物そっくりではないか! 本物らしく見せようと、これらの「マーキン」は本物の陰毛を使い、手縫いで作られている。つまり、これもオートクチュール作品なのだ。
text: Sabrina Pons (madame.lefigaro.fr)