香取慎吾、「言葉の錬金術師」寺山修司に挑む! 舞台『テラヤマキャバレー』が開幕。

Culture 2024.02.09

歌手、アーティスト、ダンサー、バラエティタレントとして多彩な活躍を見せる香取慎吾。香取が座長公演として取り組む舞台『テラヤマキャバレー』が2月9日、東京の日生劇場で開演した。脚本は若き鬼才、池田亮。自身を「慎吾ママ世代です」と語る池田が、本公演のために書き下ろした新作の主人公は「言葉の錬金術師」と呼ばれた歌人、詩人にして演劇人である寺山修司がモデルになっている。

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印象的な黒いコートを纏い、寺山修司に扮する香取慎吾。

寺山修司(香取慎吾)がふと気付くと、そこは一軒のキャバレー。どうやらこの空間は寺山の夢の中で、寺山はキャバレーのオーナーらしい。夢の中でも脚本を書いていた寺山は、夢の世界の住人たちに「暴言」「アパート」「白粥」「鶏」「ノックノック」などと名前を授け、新作舞台のリハーサルを始める。

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寺山を迎えに来たという、白いトレンチコートを纏った「死」(凪七瑠海)。

その時、キャバレーにいたひとりの客が「寺山を迎えに来た」と語りかける。彼女は自分を「死」(凪七瑠海)だと名乗り、寺山が現実世界でまもなく死ぬことを語る。自分が満足する作品創りを望む寺山と劇団員たちに、死は「日が昇るまでに、私を感動させてみろ」と挑発。同時に死は困った時のヒントとして擦って火をつければ「ここではないどこか」に行けるマッチを3本授け、傍観者として寺山たちが芝居の稽古を続ける様子を観察することに。

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舞台中、寺山の「ことば」を紡ぎ続ける香取。そのひたむきな姿が、「前衛」と呼ばれた演劇を創り続けた寺山修司の姿に重なる。

寄せ集めの劇団員に振り回され、時空をも超越しながら舞台を作り上げようとする寺山。彼が創り上げる舞台の結末は?  「墓は建てて欲しくない。私の墓は、私のことばであれば充分」と嘯く寺山修司はどこへ向かうのか?

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日本演劇への、そして寺山修司へのラブレター

演出を務めたのはイギリスの実力派演出家、デヴィッド・ルヴォー。1993年、2003年にはトニー賞を受賞、ジュリエット・ビノシュが主演舞台の演出家として指名し、日本では宮沢りえや堤真一など名だたる俳優たちの舞台を手がけてきた。ルヴォーは20代の頃にロンドンで寺山修司の作品に触れ、衝撃を受けたと語る。

「まさかその頃は日本の演劇に関わることになるなんて思いもしませんでした。今回、寺山修司という芸術家を通じていろんな日本の芸術の形態を旅することができました。個人的なレベルで言えば、今回の作品は演劇へのラブレター。日本の演劇の世界で学んだ素晴らしいものへのお返しであり、芸術をまったく変えてしまった『寺山修司』という天才に、素晴らしい役者の皆さんと一緒に挑めたことをうれしく思います」

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過去に飛び、近松門左衛門の『曽根崎心中』の舞台稽古に立ち会う寺山。文楽人形の動きを生身の人間が再現する歌舞伎の「人形振り」が見事に表現される。

その言葉通り、舞台上では人形浄瑠璃の人形の動きを、生身の人間がトレースするかのように演じる歌舞伎の「人形振り」の所作が見事に再現され、70年代に寺山が劇団「天井桟敷」で追求したアングラ演劇がルヴォー流にアレンジされて再現される。また今作では寺山が作詞した『時には母のない子のように』『あしたのジョー』『もう頬杖はつかない』などの珠玉の名曲を、舞台のクライマックスで俳優たちが歌い上げるのも見どころだ。中でも『質問』という楽曲は、3年前に音楽プロデューサー浅妻一郎からテレビ番組のプロデューサーを通じて香取の元に届いたという思い入れのある曲で、現代的なアレンジも印象的に劇中の寺山の「ある決意」を促す重要な曲だ。こちらは2月16日から各種音楽配信サービスでの配信も決定した。

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「どんな鳥だって 想像力より高く飛ぶことは できないだろう」

稽古中、寺山修司が亡くなった47歳になった香取慎吾。寺山修司を演じて見えてきたのは、「生きることへの共感」だという。

「自分の中で役が育っていく中で、複雑な部分や難しさを最初は感じていました。その先にあるのは、僕も感じたことのある生きている中での難しさや苦しさ。生きるということが寺山修司なのでは、というところにいまは来ています」

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劇中、朗々と寺山の歌を歌い上げる香取慎吾。胸に突き刺さるような寺山の詞が、香取の歌声によって増幅されるかのように響き渡る。

劇中、寺山は2024年の新宿へ迷い込み、スマートフォンにしか向き合わず、言葉を失ってしまったかのような家出少女たちやホストたちに遭遇する。現代、寺山が愛した言葉のもつ可能性が失われている現実を、舞台を通じて向き合わざるを得なくされる。しかし、香取はこう語った。

「日常生活の中で、上を向いている時ばかりではないと思います。それでも、劇場に来てこの舞台を観たら、上を向いて、ちょっと未来のことを考えられると思う。そんな舞台を楽しんでいただけたらと思います」

『テラヤマキャバレー』
●日程/2024年2月9日(金)〜29日(木)(東京会場:日生劇場)
2024年3月5日(火)〜10日(日)(大阪会場:梅田芸術メインホール)
●脚本/池田亮
●演出/デヴィッド・ルヴォー
●出演/香取慎吾、成河、伊礼彼方、村川絵梨、平間壮一、凪七瑠海(宝塚歌劇団)ほか
●会場/日生劇場(東京)、梅田芸術メインホール(大阪)
東京会場:www.umegei.com/terayama_cabaret2024
大阪会場:www.umegei.com/terayama_cabaret2024

 

text & photography: madame FIGARO japon

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