アナ・ウィンターの評伝ほか、いま読みたい4冊。

Culture 2024.02.10

リアル『プラダを着た悪魔』の、波乱に満ちたキャリアの全貌。

『ANNA アナ・ウィンター評伝』

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エイミー・オデル著 佐藤絵里訳 河出書房新社刊 ¥3,960

ボブヘアとサングラスがトレードマーク。映画『プラダを着た悪魔』の試写会にアナは娘ビーとプラダを着て出席。「まさにママそのものね」と言わしめたそのキャリアは波乱に満ちている。アナの下でクリエイティブディレクターを25年にわたり務めたグレース・コディントンはじめ「ヴォーグ」スタッフ、トム・フォードやヒラリー・クリントンほか総勢250名の貴重な証言をもとにファッション界に君臨する"女帝"の実像に迫った決定版の評伝。

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最新の北京を味わい尽くす、エネルギッシュな滞在記。

『パッキパキ北京』

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綿矢りさ著 集英社刊 ¥1,595

元銀座ホステスの菖アヤメ蒲は愛犬ペイペイを連れ、エリート駐在員の夫が単身赴任中の北京に乗り込んでいく。コロナ禍の閉塞感に疲弊する夫を尻目に、ローカルなコミュニティに飛び込み、食とファッションを堪能。悪びれず楽しむことで人生勝ち組を貫く。「私が私を見捨てる日は永遠に来ない」、欲望上等な菖蒲のフットワークの軽さが痛快だ。著者の北京滞在体験をもとに書かれた小説。エネルギッシュな北京の街にパワーチャージされる快作。

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元『ミシュランガイド』調査員が、美食の世界の舞台裏を描き出す。

『シェフ』

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ゴーティエ・バティステッラ著 田中裕子訳 東京創元社刊 ¥2,750

3ツ星シェフのポール・ルノワールが猟銃自殺を遂げた。世界最優秀シェフに選出され、取材を受けていた最中に。彼が栄光の頂点に辿り着くまでの軌跡を追いながら、星付きレストランの歴史を紐解き、スターシェフを生み出すカラクリに迫る。ポール・ボキューズやアラン・デュカスも実名で登場。料理の描写が秀逸なのは著者が元『ミシュランガイド』の覆面調査員だから。料理人たちがしのぎを削る美食の世界の舞台裏を描き出す。

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"いま"を映し出す不穏な肖像、榎本マリコの初めての作品集。

『榎本マリコ作品集 空と花とメランコリー』

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榎本マリコ著 芸術新聞社刊 ¥2,970

顔を植物や空を飛ぶ鳥に覆われた肖像画はルネ・マグリットの作品群を彷彿とさせる。どこか不穏でシュルレアリスティックな世界観にはひと目見たら忘れられない求心力がある。『82年生まれ、キム・ジヨン』や『母親になって後悔してる』など話題作の装丁に次々と起用され、一躍注目される画家・榎本マリコの初めての作品集。フェミニズムの作品と相性がいいのは、不条理な現実を生きる私たちの"いま"を映し出しているからだろう。

*「フィガロジャポン」2024年3月号より抜粋

text: Harumi Taki

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