ポップな見た目の裏側に、社会的なメッセージ ニック・ドイルの日本初個展『American Blues』に迫る!

Culture 2024.03.13

ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、ニック・ドイルによる日本初個展『American Blues』がペロタン東京で開催中!

アメリカ文化とその文物の語彙を浸透させることで欲望や過剰さ、有害な男性性を検証しているドイル。今回の展示では、巨大なデニム作品と不気味な立体作品を発表する。

会場には"ロードトリップ"をテーマに、車やホテルの鍵や荷物を入れるトランクや駐車場に置いてある自動販売機などの作品が並ぶ。

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Caption: View of the exhibition "American Blues" at Perrotin Tokyo. Photo by Keizo Kioku. Courtesy of the artist and Perrotin.

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Caption: View of the exhibition "American Blues" at Perrotin Tokyo. Photo by Keizo Kioku. Courtesy of the artist and Perrotin.

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ポップな見た目の裏に、社会的なメッセージがたっぷりと詰まった作品たち。

ドイルの作品の背景にはどんな思いが込められているのかを紐解いてみる。幼い頃からボーイスカウトに入るなど、アメリカ社会が持つ"理想の男性像"が自分のアイディンティティとはそぐわないと息苦しさを感じてきたというドイル。フェミニズムなど、女性の解放が叫ばれている陰で、男性も男性であるがゆえのプレッシャーを感じながら生きている。

強くないといけない、一家の大黒柱としてキャリアを積まないといけない、そういった"男性とはこうあるべきだ"といった有害なイメージがあるが、それにそぐわない人や違う生き方をしたいという男性もいる。"男性にも弱さがある"という事実や不満を作品に込め、今までの凝り固まった自国のイメージに対し、疑問を投げかけているのだ。

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Nick Doyle
『Born To Lose』2024
Dyed denim on custom panel
102 x 81.6 cm | 40 3/16 x 32 1/8 inch Photo by Guillaume Ziccarelli Courtesy of the artist and Perrotin

スロットマシンやサイコロがついたキーチェーンは、ギャンブルを想起させる。お金をかけるリスクや度胸のいる行為=強い男性というイメージに対しての皮肉を表しているかのよう。

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Nick Doyle
『Sharp Dressed Man』2024
Denim, oxidized walnut, leather, cashmere, silk, watch, cufflink, stones, concrete
165.1 x 35.6 x 38.1 cm | 65 x 14 x 15 inch Photo by Guillaume Ziccarelli
Courtesy of the artist and Perrotin

ロードトリップ中にアメリカ南西部で見つけたサボテンは男性のポートレートとしてそびえ立つ。よく見ると男性のフォーマルスタイルにおける三種の神器であるネクタイ、腕時計、カフスボタンを着けているが、言うまでもなく似合っていない。ドイル自身、ネクタイをすると押さえ付けられている気持ちになることも作品に込められている。

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Nick Doyle
『Clean Living』2024
Dyed denim on custom panel 121.9 x 162.6 cm | 48 x 64 inch Photo by Guillaume Ziccarelli Courtesy of the artist and Perrotin

こちらはロードトリップに出かけた男性のスーツケース。中を開けてみると、大量のアルコールが。一見立派な人にも弱さがあることを示している。

\INTERVIEW/

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Nick Doyle
『Top of the Mountain』2024
Dyed denim on custom panel 174.7 x 91.4 cm | 68 3/4 x 36 inch Photo by Guillaume Ziccarelli Courtesy of the artist and Perrotin

コカ・コーラの自動販売機は、"ザ・アメリカ"の象徴である。標高の高い山々の絵柄は、山の頂点を目指せという向上心が垣間見える。

ドイルの作品に登場する自動販売機やタバコの箱など一見無害なビジュアルは、アメリカの植民地主義と消費主義を物語るとともに、メディアが世界的な貿易システムに与える影響を示している。

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デニムでコラージュする理由とは?

デニムを作品に使うのにも理由がある。デニムは、起源がフランスであるにも関わらず、最もアメリカ的な生地である。本物のカウボーイからパンクの真似事をした人たちはもちろん、マーロン・ブランドやマリリン・モンロー、ブルック・シールズやビヨンセに至るまで歴代の全ポップ・アイコンたちが着用してきた素材だと言える。その主成分はインディゴとコットンで、いずれもアメリカ奴隷制下の経済において主要な換金作物であったことはただの偶然ではない。ドイルはこれらを消していくために何世紀にも及ぶであろう塗りつぶし作業を、ひとつずつ進めようとしているのである。

デニムを染めるところから始まり、パーツごとに切り貼りをして出来上がる見事なコラージュ作品を、ぜひ間近で体感して。

『American Blues』
会期:開催中~2024 4/27(土)
会場:ギャラリーペロタン東京
東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F
開)11:00~19:00
休)月、日、祝日
無料
www.perrotin.com/
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