いま注目の口笛奏者、モリー・ルイスのアルバムほか3選。
Culture 2024.03.16
桃源郷のメロディを奏でるホイッスラー。
『オン・ザ・リップス』/モリー・ルイス
人知れぬホテルのラウンジで奏でられるBGM、それとも幻のヴィンテージ映画を彩るサウンドトラックか。ドクター・ドレらのジャンルを超えた共演や、映画『バービー』の音楽にもフィーチャーされるなど、いま最も注目を集める口笛奏者による初のフルアルバム。レトロ感覚に満ちたバンドサウンドや流麗なスキャットと絡み合うようにして聞こえてくるのは、美しくも変幻自在な口笛の音色。ブラジルのギタリスト、ホジェーやバッドバッドノットグッドのメンバーも参加した贅沢な作品だ。
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日常に溶け込むかのような自然な電子音。
『Number Face 』/Hidetoshi Koizumi
エレクトロニカやアンビエントというと無機質なイメージがあるかもしれないが、まるで感情を持つ機械が奏でているかのように、一音一音が心の奥に入り込んでいく。フランスと日本を行き来しながら活動を続ける電子音楽家の作品は、日々の生活シーンに寄り添うことができるよう意図して作られたという。硬質でモノトーン感覚の繊細なサウンドはもちろん、ストリングスをフィーチャーしたダイナミックなミニマルミュージックまで、さまざまな表情が楽曲の中から立ち上るようだ。
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穏やかで物悲しいオルタナティブロック。
『ティーズ』/ティーズ
スロウコアといわれるスローでダークなロックを奏でるシーンがアンダーグラウンドに存在するが、テキサスで共同生活をしながら活動を続ける彼らはその最尖峰でもある。本作は4年前に録音したもので、ようやくCDとしてリリースされることになった。エフェクトの効いたゆらゆらと揺らめくギターの音色と、切なさを表現するボーカルとのアンサンブルは、多くの人々に共感を与え、「Upside Down」はSpotifyで200万回再生を突破。時代を反映するような歌に心を揺さぶられる。
*「フィガロジャポン」2024年4月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto