ノラ・ジョーンズほか、癒やしの最新アルバム3選。
Culture 2024.04.14
現代ピアノジャズの鬼才が紡ぐ人生の讃歌。
『プロット・アーマー』/テイラー・アイグスティ
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一昨年にグラミー賞を受賞し、一躍ジャズシーンの最先峰へと躍り出たピアニスト。アコースティックとエレクトリックを楽曲によって使い分けるのはもちろん、オーセンティックでモーダルなナンバーがあったかと思えば、オーケストレーションを駆使した迫力のアレンジを聴かせる。グレッチェン・パーラトやベッカ・スティーヴンスを迎えたボーカル曲もあり、いまのジャズがどこへ向かっているのかが俯瞰できる。録音直前に母親が亡くなったこともあり、悲哀が反映された美しい作品だ。
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森の中のスタジオで生まれた親密な歌声。
『ブライト・フューチャー』/エイドリアン・レンカー
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季節の変わり目やふとした心の移ろいなど、微妙な感性を大切にしているのだろう。そんな印象を受けるのが本作の特徴だ。ブルックリンのインディロックを代表するバンド、ビッグ・シーフの看板であり、ソロでも活動するシンガー・ソングライターは、ギター、ピアノ、バイオリンといったシンプルなアコースティック楽器を携えて淡々と歌う。フォークやカントリーといったノスタルジックな質感を感じさせる少しロウファイなサウンドと、情感豊かなボーカルのバランスも見事だ。
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世界中に響きわたる稀代のヒーリングボイス。
『ヴィジョンズ』/ノラ・ジョーンズ
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名盤『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』で颯爽とデビューしてから早くも20年以上経つが、あらためてその声の普遍性に感嘆させられる。4年ぶりの新作でも、プロデューサーのリオン・マイケルズと手作り感覚でセッションを繰り広げた結果生まれた曲が中心だが、ラフなようでいて丁寧に歌を届けてくれる。躍動感のあるソウルフルなナンバーから、多重コーラスによる浮遊感たっぷりのドリーミーな世界まで、聴けば聴くほど味わい深く、個性的で存在感のあるボーカルが心を震わせる。
*「フィガロジャポン」2024年5月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto