懐かしくも新しい、中国現代アーティストの二人展。
Culture 2024.05.23
東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールでは5月22日(水)から7月15日(月・祝)まで「Borrowed Landscapes フェイイ ウェン|パン カー二人展」を開催する。ふたりのアーティストに共通するのは、驚異的な経済成長を遂げていた1990年代の中国で生まれ育ち、その後海外で学びアーティスト活動を行っていること。どちらも写真に根ざした作品を制作し、レンズを通した表現をベースにしながらさまざまなメディアや技法を追求している。
ロンドン在住のフェイイ ウェンは、2020年にスレード美術学校で博士号を取得。自然や風景を主題に、自身の撮影したイメージとファウンドフォト(無名の写真を発掘したもの)のイメージを混ぜ合わせながら写真に写されたイメージと、鑑賞者が見ようとするイメージとの関係を追求している。彼女の写真には中国の山水画や日本を想起させるような題材や構図が見られるが、実際にはイギリスとウェールズで撮影されたものが多い。露出レベルや現像技術、用紙や印刷の手法などの試行錯誤を重ねてきたウェンが、本展では最新シリーズ『Seeing a pine tree from your bedroom window』からゼラチンシルバープリントと、ライスペーパーにジークレー印刷をした15点を発表する。
パン カーは2015年にロードアイランド・スクール・オブ・デザインを卒業後、カリフォルニアで数年を過ごし、現在は中国と北米を行き来しながら創作を続けている。彼女はアジアの近代化の過程において、人口の多い都市で生み出された文化や歴史に関心を寄せてきた。急速な発展を遂げる地域で生まれる熱狂や嘆き、レジリエンス、土地と結びついた生活を、作品を通じて検証する。22年には中国の出稼ぎ労働者の居住空間や彼らが住むアーバン・ビレッジ(城中村)を題材にした壁面のアッサンブラージュ『Bay Windows(出窓)』をタイクン・コンテンポラリーで発表し話題になった。今回はこのシリーズの続編となる6点の新作が公開される。
Kwun Contemporary (2022) Courtesy of Tai Kwun, Photo: Kwan Sheung Chi
自然界のフォルムを熟考するウェン、社会的な差異や類型を両義的に受け入れるカー。ふたりの作品は、私たちを取り巻く現代の状況を思慮深く見つめる方法を提示している。中国現代アート界における新世代の作家に注目したい。
Borrowed Landscapes フェイイ ウェン|パン カー 二人展
会期:2024年5月22日(水)〜7月15日(月・祝)
開館時間:11時〜19時(最終入場18時30分)
入場無料、会期中無休、予約不要
会場:シャネル・ネクサス・ホール
東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4階
●問い合わせ先:
シャネル・ネクサス・ホール事務局
tel. 03-6386-3071
https://nexushall.chanel.com/program/2024/fwpk/
text: JUNKO KUBODERA