アートに触れる週末を! いま観に行きたい展覧会4選。
Culture 2024.05.24
大量消費と情報化社会の現実を突きつける。
『三島喜美代―未来への記憶』
三島喜美代『Work 17-C』2017年、ポーラ美術館
1950年代に創作活動をスタートさせ、70年代に新聞や雑誌など印刷物を陶に転写して焼成する「割れる印刷物」を手がけて注目を集めた現代美術家、三島喜美代。その後さらに空き缶や段ボールなど、身近なゴミを陶で再現した作品や産業廃棄物を高温処理した溶融スラグを素材とする作品を弛まず発表してきた。70年にわたる三島の創作の軌跡を概観する本展は、社会の現実を見つめ、情報とゴミの問題を一貫して追求してきた三島の作品世界の全貌を明らかにし、その魅力と実像に迫る機会となる。なかでも大量の耐火レンガブロックに20世紀の100年間から抜き出した新聞記事を転写し、敷き詰めた最大規模のインスタレーション『20世紀の記憶』は必見の代表作だ。
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人間関係の境界や力関係を問うシュールな実験。
『MIRANDA JULY:F.A.M.I.L.Y. 』
アメリカの芸術家、映画監督、作家のミランダ・ジュライによる東京初の個展。インスタグラムを通じた7人の見知らぬ相手との1年にわたるコラボレーションを元にした新作は、ジュライからの一連のプロンプトに対する参加者のリアクション動画を、編集アプリの切り取りツールを使ってジュライが取り込み完成させたもの。まったく新しい身体言語を通じて、親密さと境界線を模索するシュールなパフォーマンスとなる。人間関係や親密さのあり方を考察してきた彼女ならではの遊び心ある形で、力とコントロールの共有を実験する本作は、SNSが叶えてくれる「愛でられることで元気になる」ことを人の手で達成しようと試み、ヒエラルキーや規範的な力関係に問いを投げかける。
会期:開催中~8/26
会場:プラダ 青山店 6F
tel:050-5541-8600
開)11時~20時 無休
入場無料
www.prada.com
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アートファンの想像を刺激するトリオ結成。
『TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション』
ラウル・デュフィ『家と庭』1915年、パリ市立近代美術館 photo: ParisMusées/Musée d'Art Moderne de Paris(トリオ、テーマ<空想の庭>より)
豊かなモダンアートのコレクションを築いてきた3都市の美術館(パリ市立近代美術館、東京国立近代美術館、大阪中之島美術館)のコレクションが集結する。主題やモチーフ、色や形、素材、制作背景など共通点のある作品を自由な発想で選び、トリオを組んで構成。たとえば、バスキアと佐伯祐三のストリートアート対決、藤田嗣治とマリー・ローランサンの女神競演、ピカソと萬鉄五郎のキュビスム作品、交友関係にあった岡本太郎とアルプの響き合う作品など、時代や流派、洋の東西を越えた意外な組み合わせの3点を見比べ、観賞後に話したくなるようなユニークな展示。20世紀初頭から現代までのモダンアートの新たな見方を提案し、その魅力を浮かび上がらせる試みとなる。
会期:5/21~8/25
会場:東京国立近代美術館
tel:050-5541-8600
開)10時~16時30分 最終入場(火~木、日)、10時~19時30分 最終入場(金、土)
休)月、7/16、8/13 ※7/15、8/12は閉館
料)一般¥2,200
https://art.nikkei.com/trio
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モダンの巨匠が生涯憧れた日本の美学と共鳴。
『カルダー:そよぐ、感じる、日本』
Un effet du japonais,1941 Sheet metal, wire, rod, and paint 203.2×203.2×121.9cm. Photo courtesy of Calder Foundation, New York/Art Resource, New York ©2024 Calder Foundation, New York/Artists Rights Society(ARS), New York
アメリカのモダンアートを代表するカルダーの東京では約35年ぶりとなる個展。日本の文化と美学への憧れを終生抱いていたカルダーの芸術における、日本の伝統と美意識との共鳴をテーマに展開される。カルダー財団が所蔵する作品約80点から、彼が取り組んだ不均衡性や非対称性、近似性の中にある"自由"に基づいてキュレーションされたものとなる。彼が同時代の建築家たちとコラボレーションした際の精神に倣い、3:4:5の直角三角形の幾何学をモチーフにした設計で、日本建築の要素や素材をエレガントかつモダンに展示に取り入れる空間構成も見どころ。代表作のモビール、スタビル、スタンディングモビールが思索と自己創造のための空間を作り出す。
会期:5/30~9/6
会場:市立伊丹ミュージアム 展示室2・3・5(兵庫・伊丹)
tel:03-6402-5460
開)10時~17時30分 最終入場(月~木、日)、10時~18時30分 最終入場(金、土、祝前日)
休)6/4、7/2、8/6
料)一般¥1,500
www.azabudai-hills.com
*「フィガロジャポン」2024年7月号より抜粋
text: Chie Sumiyoshi