【立田敦子のカンヌ映画祭2024 #07】授賞式直前!話題作を振り返り。
Culture 2024.05.26
いよいよ明日に迫ったクロージングセレモニー&授賞式を前に、今年の話題や話題作を振り返りたい。
コンペティション部門の作品の評判だが、22本中20本の上映が終わったところでスクリーン・デイリーでの星取表でいうと、4点満点中3点以上を獲得しているのはショーン・ベイカーの『Anora』(3.3)、ミゲル・ゴメスの『Grand Tour』(3.0)、インド映画として初のカンヌ・コンペ入りを果たしたことでも注目されているパヤル・カパーリヤーの『All We Imagine as Light』(3.3)の3本。
ショーン・ベイカーの『Anora』
ミゲル・ゴメスの『Grand Tour』
パヤル・カパーリヤーの『All We Imagine as Light』
他にもカルロ・ジャリーのSFホラーコメディ『The Substance』、ジャ・ジャンクーの『Caught Bby The Tides』やジャック・オディアールの『Emilia Pereze』の好評も聞こえてくる。筆者は22本のコンペすべてを鑑賞したが、上記の作品に加えて、終盤に上映さえたインドのパヤル・カパーリヤーの『All We Imagine as Light』と、イランのモハマド・ラスロフの『The Seed of The Fig』が重要な賞を受賞するのではないかと予想している。
ジャック・オディアールの『Emilia Pereze』
イランのモハマド・ラスロフの『The Seed of The Fig』
パヤル・カパーリヤー監督はインド映画として初のカンヌコンペティション入りを果たした女性監督。モハマド・ラスロフ監督は死刑制度をテーマにした『悪は存在せず』で第70回ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受賞している反体制派の監督で、国家安全保障に反する共謀罪により禁錮8年とむち打ちの刑が確定した後、国外脱出し、カンヌ入りを果たし、映画関係者からも大きな支持を得ている。
昨年、ラグジュアリーブランド、イヴ・サンローランのクリエイティブ・デザイナー、アンソニー・バカレロが創設した映画会社「サンローラン・プロダクション」の3作品がコンペ部門に選出されてることも目を引く。ジャック・オディアール、デヴィッド・クローネンバーグ、パオロ・ソレンティーノというカンヌの常連監督の作品だが、中ではオディアールがメキシコを舞台にとったジャンルミックスのノワールミュージカル『Emilia Perez』が評判がいい。
また、開幕前から話題をさらったフランシス・フォード・コッポラ監督のSF超大作『Megalopolis』の受賞の行方も気になる。賛否両論分かれた作品だが、個人的には推しだ。興行的には簡単な作品ではないが、日本でもぜひ公開してほしい。
フランシス・フォード・コッポラ監督のSF超大作『Megalopolis』
映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。
text: Atsuko Tatsuta editing: Momoko Suzuki